■心不全になった肥大型心筋症■  公開日03.11.21   更新日03.11.21  左メニューを隠す TOPへ  断面設定図へ 
左室の縦切り断面(左室長軸断面)
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患者さんの病態解説

 八十余歳の心不全になった肥大型心筋症の女性患者です。身長147cm,体重33Kgやせ型。 心房粗動(そどう)を繰り返していましたが、現在は抗不整脈薬でほとんど洞調律を維持しています。心房粗動に対するカテーテル焼却治療は、腎機能障害のために適応となっていません。
  左図のイラスト動画で見られるように左室の壁厚が著しく厚くなっています。さらに、心筋と心筋の間の線維組織の増加なども加わり、左室は硬く、拡がりにくくなります。そのために静脈圧が上昇し、心不全になります。心不全になると、毛細血管からしみ出た液が肺や体中に貯まります。この患者さんでは、心臓の周囲にも貯まっています(心のう液貯留)。心不全の重症度を示すBNPは治療中にもかかわらず951pg/mlと大きく上昇しています。

●心エコー所見
  左室壁全体の著しい肥厚があります。心基部後壁の一部のみが正常壁厚です。左室内腔は狭く、特に心尖部は収縮期にほとんど閉塞状態となっています。乳頭筋も太く大きくなっています。収縮期の左室壁の動きは良好です。
 なお、この方は胸壁の前後経が薄いために、左房は大動脈と脊椎に挟まれて、前後の幅が小さくなり、細長い左房となっています。このことは肥大型心筋症とは関係なく、偶然です。
●計測値
左室の壁厚(拡張期):厚い中隔 = 19mm,薄い心基部後壁 =10mm。
左室の短径:拡張末期(最大時)36mm,収縮末期(最小時)27mm。
左室の動きの指標:左室駆出率(左室の形態が異常なので算出できず),心基部の左室径短縮率25%。
左房前後径(最大時):22mm(ただし変形が強い)。

目盛りは1cm間隔。心拍数は61/分(この時洞調律)。
心のう液はほぼ無色透明ですが、ここでは白い液として表現しました。本来、左室壁の線維の増加を肉眼で確認するのは困難です。ここでは多数の白いすじとして、表現しています。
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○左室長軸&短軸断面 ○心臓の構造名 ○冠動脈の走行 ○正常心臓 ○急性下壁梗塞
○大動脈弁置換術後 ○陳旧性前壁中隔梗塞 ○冠動脈三枝病変 ○重症心筋炎の経過 ○カテーテル焼灼治療
○心尖部心室瘤 ○僧帽弁狭窄症 ○僧帽弁置換術後 肥大型心筋症+心不全 ○僧帽弁逸脱症候群
■(前額断面) ■正常心臓(前額断面) ■高血圧性左室肥大 ■閉塞性肥大型心筋症 ■非閉塞性肥大型心筋症
■拡張型心筋症 ■急性心筋梗塞 ■陳旧性心筋梗塞