■僧帽弁逸脱による僧帽弁逆流■  公開日03.12.15  更新日04.01.02 左メニューを隠す TOPへ  
左室の縦切り断面(左室長軸断面)
解説  

患者さんの状態解説
 高血圧症、高脂血症で治療中の80余歳の細身の小柄な女性です。僧帽弁は前方と後方の弁尖からなる。 両方の弁尖の先端は収縮期にはぴったりと合わさって、血液が逆流しないように働いている。ところが、弁尖を支えるひも(腱索)が部分的に長かったり、切れたり、弁尖の長さが適当でなかったり、また恐らく、弁輪が前後に圧迫されて弁尖の立体的な形が変形したり、などの原因により、前後の弁の尖端がずれると(僧帽弁逸脱)、そこから血液が漏れます(僧帽弁逆流)。
  この病気は年齢にかかわらず起こる異常です。この症例では、現在のところ血液の逆流は少量です。しかし、逆流により左房や弁輪が大きくなると、弁尖端の隙間がさらに大きくなり、逆流量は増加してゆきます。そして、さらに左房は拡大するといった悪循環に至ります。このために加齢につれて、弁逆流は増加するので、定期的な検査が必要です。
  なお、この程度の弁逆流なら通常治療薬は必要はないのですが、高血圧の合併と軽度のすねの浮腫を認めたので、弱い利尿作用のある降圧剤を内服してもらってます。

●心エコー・ドプラー所見

  左室の大きさや左室壁厚は正常です。収縮期の左室壁の動きは良好です。僧帽弁の前尖の先端が、後尖の左房側へずれています。その部分で血液の逆流が生じています。収縮期をもっと細かくみると、収縮期の早期では弁尖端のずれは小さくて、弁逆流は生じていません。収縮期の後半に軽度の弁逆流を生じています。これは僧帽弁逸脱による弁逆流の典型な一つの型です。
  黄色と赤のまだら模様の部分は、逆流による乱れた血液の流れを示しています(カラー・ドプラーシグナル)。これは検査を行う人が認知しやすいように、逆流の乱れた流れを多色のモザイクとして表現しているだけで、血液がこのような色に変化しているわけではありません。
 逆流の方向は落ち込んだ弁と逆の方向を向きます。この場合は前の弁尖が落ち込んでいるので、逆流は下方へ向いています。
●計測値
左室の短径:拡張末期(最大時)38mm,収縮末期(最小時)24mm。
左房前後径(最大時):35mm(ただし前後に圧迫されて、細長く変形が強い)。

目盛りは1cm間隔。検査時の心拍数は70/分(洞調律)です。  下段は逆流シグナルを描いたイラストです。
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