■三本の冠動脈すべてに狭窄又は閉塞があるために生じた心筋障害(三枝病変:Ischemic Cardiomyopathy)■
公開日03.08.27   更新日03.11.04 左メニューを隠す TOPへ  もっと他の断面へ 
左室の縦切り断面(左室長軸断面)
解説
 

 冠動脈は3本に分かれていますが、そのすべてに高度の動脈硬化が生じ、閉塞または狭窄がおこると、広い範囲で心筋障害がおこります。
 心筋は変性したり、繊維に置き換わったりするために、心臓の収縮力が低下します。一方、一部の心筋への血流が保たれている部位では、心筋の動きは比較的良好です。  この症例では、心室中隔の上部(丸印の部分)では心筋壁運動が良好です。それ以外の部分では全体的に強く障害を受けて、左室壁運動は低下しています。
  左室の収縮力が低下すると、心臓が大きくなってこれを補おうとします。心臓が大きくなるのは、心臓が弱っている場合か、心臓の負担が増している場合か、またその両方がおこっている場合です。

 左室壁以外にも 僧帽弁(そうぼうべん)を通過する血流が高度に減少したために、僧帽弁の開きが小さくなっています。

  冠動脈疾患による広い範囲の心筋障害は、同様に心臓全体の心筋障害を生じる「拡張型心筋症」という心臓病と酷似する場合があり、両者の鑑別を心臓の動きだけから行うことは困難な場合が少なくありません。
  本症例は、病歴や左室壁運動の不均一性から、虚血心が疑われ、冠動脈造影で「三枝病変」が確認されました。

 

 

左の目盛りの間隔は1cmです。もっと他の断面へ

【注】心臓の各構造物の大きさや動きは、実際の心エコー検査の観測値を参考にイラストを作成しました。

 赤で囲んだ部分は、収縮期に心筋の厚みがほかよりも増しています。比較的健常な心筋が残っていると考えられる部分です。

Copyright (C) 2003 Maeda Junkanki Naika. All Rights Reserved.