インフルエンザ/ワクチンQ&A(詳細解説)
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注意!当院は乳幼児の診察を行っていないため、乳幼児のインフルエンザの話はかなり省略しています。
公開日2002.10.01 更新日 2004.08.30  更新履歴   HOMEへ(メニューを表示)  メニューを隠す
インフルエンザ流行状況 各地の発生状況各県のABタイプ別発生状2005.02.10リンク確認


(4)【インフルエンザの予防】【インフルエンザ総目次へ】

01)インフルエンザにかからないためにはどうすればよいでしょうか?
02)紅茶でうがいするとよいと言われたが本当ですか?
03)インフルエンザの予防接種は効果がありますか?
04)早めに風邪薬を服用することは有効ですか?
05)インフルエンザ治療薬を早めに飲めば、予防できますか? 2004.6.11追加
06)タミフル75カプセルに予防適応が追加される。  2004.8.16追加


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Q1:インフルエンザにかからないためにはどうすればよいでしょうか?

A:インフルエンザワクチンがまず勧められます。手洗い・お茶でのうがいも有効です。

○インフルエンザにかかると重症化しやすい危険群の人は、流行前に予防接種を受けることことをまず勧めます。予防接種は感染予防効果とかかっても軽症ですむ重症化防止効果があります。

○インフルエンザは、インフルエンザにかかった患者の咳などで空気中に拡散されたウイルスを鼻腔や気管など気道に吸入することによって感染します。インフルエンザが流行してきたら、人混みは避けましょう。また、電車のつり革、テーブル、人の手に付着し、これを触わった人の手に移るため、手洗いも有効と考えられます特に高齢者や慢性疾患を持っている人や、疲れたり、睡眠不足の人は人混みや繁華街への外出を控えましょう。

○空気が乾燥すると、インフルエンザに罹患しやすくなります。室内では加湿器やぬれタオルを干すなどして、湿度を60〜80%ほどに保ちましょう。気温の低下や乾燥は、ウイルスや細菌を気道粘膜から外に運び出す、「線毛」の働きを低下させます。

○身体を冷やさない、日頃から十分な睡眠とバランスよい栄養をとることも身体の抵抗力を保つのに大切です。
 

○帰宅時の緑茶・ウーロン茶・紅茶によるうがいも有効です。
  これらに含まれるカテキンが、ウイルスの感染力を奪ってしまいます。緑茶・ウーロン茶・紅茶を頻繁に飲むことも感染予防の役に立つと考えられます。

●マスクはウイルスをまき散らさない効果が期待できますが、ウイルスはとても小さいので、マスクは他人からの感染予防にはほとんど役立たないと考えられます。

●風邪薬はインフルエンザ予防には役立ちません。

 


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Q2:予防のために紅茶でうがいするとよいと言われたが本当ですか?

A:本当です。

  以下は、島村忠勝(昭和大学細菌学教授)先生の記事の一部抜粋をまとめたものです。

 紅茶、緑茶、ウーロン茶どれでも同程度のインフルエンザ予防効果が期待できます。これらの茶葉には含まれるカテキンはインフルエンザウイルスに結合し、ウイルスの感染力をなくします。この効果は日常飲用する緑茶の4分の1の濃さでも認められ、紅茶は出がらしでも十分です。また、一度感染力をなくしたウイルスは感染しないとされているのでうがいしたお茶を飲み込んでもよいと解説しています。

 実験では、紅茶で一日二回うがいをすることによってインフルエンザの予防効果が得られています。しかし、ウイルスが粘膜に付着してから侵入するまで30分もかからないと言われており、頻回にうがいするか、外出直後にうがいしたほうがよいと言っています。また、以上のコメントから当院では、うがいできない場合には『頻回にお茶をゴクゴクと勢いよく飲む』ことを勧めています。

参考資料:日本医事新報2000.5.27 昭和大学細菌学教授 島村忠勝

 


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Q3:インフルエンザの予防接種は効果がありますか?

A:現在のところワクチンがインフルエンザに対抗する最も有効な手段で、世界中で有効性が認められています。
 
 1993年まではインフルエンザの予防接種は、小中学校、幼稚園や保育園で集団接種が行われていました。 しかし、冬場の高熱などインフルエンザ様症状(インフルエンザ以外の風邪も含まれています)を完全に予防することはできなませんでした。 逆に数は少ないものの一部に重篤な副作用がでて、1987年頃からインフルエンザワクチン接種率は年々低下しました。 そして、1994年の予防接種法の改定で、集団接種は中止されました。

 一方、海外の研究ではインフルエンザワクチンは高齢者のインフルエンザ罹患時の重症化を防ぎ、肺炎・入院・死亡を減らすことが明白となり、高齢者の予防接種はすでに当たり前になっていました。

 日本だけが取り残された中で、2001年に日本でもやっと 「高齢者のインフルエンザワクチンの効果に関する研究報告」が発表されました。 65歳以上の高齢者について約45%の発病を阻止し、約80%の死亡を阻止する効果があったとしています。また副反応については高齢者であっても重篤なものはなかったとしています。 2001年度からは65歳以上の高齢者のインフルエンザワクチン接種に補助金がでるようになりました。

近年、インフルエンザに対する治療薬も実用化されましたが、ワクチンで予防することがインフルエンザに対抗する最も有効な手段であることに変わりはありません。

 一方、小児においてはワクチンの有効性に関する研究は遅れています。
  武内可尚ら(川崎市立川崎病院)の20年の経験では、ワクチン接種小児例ではインフルエンザで死亡したり、脳炎・脳症、その他重篤な病態に陥った例は皆無であるといいます。 厚生省の研究班の調査によれば1999年1月1日〜3月31日までの期間に、インフルエンザに合併した脳炎・脳症は217例中179例(82.5%)が5歳以下で、50例が死亡した。 217例の中で、インフルエンザワクチンを接種していた例はなかったという。乳幼児の人口10万人当たり2.5人のインフルエンザ脳炎・脳症の発生となり、0.7人のインフルエンザ死となるという。
  このような結果から、乳幼児にこそ積極的に接種すべきであると言う小児科医がいる一方で、乳幼児に対するインフルエンザ予防接種効果に疑問を持つ小児科医も少なくない。 脳炎・脳症は解熱剤との関連が疑わしく、しかもワクチンの効果は乳幼児では大人に比べて、不完全だと言うのです。 現在のインフルエンザワクチンは、乳幼児では抗体価の上昇が低く、効果が不十分です。 このため小児にはより効果の高いワクチンが望まれています。 現在、米国を中心に鼻腔に噴霧するタイプの新しい弱毒生ワクチンも開発されつつあります。


 



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Q4:早めに風邪薬を服用することは効果がありますか?

A:理論上全く無効です。むしろ副作用が生じやすいので、インフルエンザが流行しているときはやめておきましょう。

 風邪薬は対処療法といって、症状を抑えるだけの薬です。風邪そのものを治す働きはありせん。風邪薬の主な成分は『鎮痛解熱剤+抗ヒスタミン剤(鼻水を減らす薬)、場合によっては咳止め、その他』などです。
 発熱自体はウイルスを排除するための防衛手段ですから、これを抑制すると、ウイルスを退治する力が弱まります。そのため、回復が遅くなってしまいます。それどころか、インフルエンザ時に解熱剤を併用すると、脳炎・脳症、ライ症候群などの致命的な疾患が増えるということも明らかになりました。

 一方、葛根湯・麻黄湯などの漢方薬は、免疫力を高め、発熱を抑えませんのでインフルエンザの初期に使用しても構わないのですが、漢方薬がインフルエンザに効果があることを実証した研究があるかどうか私は知りません※
 後日、漢方薬が有効であるとの 報告が相次いでいます。かなり有効です。


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Q5:インフルエンザ治療薬を早めに飲めば、予防できますか?

A:薬剤が効かないウイルスを生じる耐性問題がありますが、医学的には有効です。しかし、予防的投与は、限られた場合にしか、健康保険が使えません

 医学的にはどのインフルエンザ治療薬も有効とされています。しかし、アマンタジン(シンメトレルなど)は耐性株ができやすく、またオセルタミビル(タミフル)も3割に耐性株が生じるとの報告があります。 2004年6月8日の新聞記事にタミフルの予防的投与が承認されるとの報道がありました。一日一回7日間投与した場合の発症抑制率は90%であったと言います。2004年現在、海外では36カ国・地域で予防薬としてすでに承認されています。ただし、保健適応は今後議論するとあります。予防的投与の適応は「インフルエンザ感染者に接触後、2日以内に一日一回の服薬を始め、7-10日服用」と定める。また、使用上の注意に「ワクチン接種が予防の第一選択」と明記させるということです。

2004.06.11記


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Q6:タミフル75カプセルに予防適応が追加された。

まとめ:ハイリスク患者に限定して、タミフル75カプセルに予防的適応が認可された。

 
【予防対象】
 以下の予防対象者の同居者がインフルエンザに罹患した場合に限り、1) 65歳以上の高齢者、2)その他のハイリスク疾患患者※(13歳以上)の予防使用が認可された。
注意:健康な成人と13歳未満の小児は対象となっていない。
注意:インフルエンザ患者と接触があっても同居や共同生活していない方々は「インフルエンザ患者接触後予防」の対象とはならない。

【処方期間】
  インフルエンザにかかった同居者と接触後2日以内に、タミフル75を1カプセル、7-10日間予防使用する。

【注意】
 本剤の予防使用は、「いつでもだれでも」ではない。「短期使用」であることを注意する。「タミフル・ドライシロップ3%」の予防使用は認められていない。なお、予防を目的とした投与に関わる費用は保険給付の対象とはならないことに注意する。
※ハイリスク疾患患者とは、●慢性呼吸器疾患患者、●心疾患患者、糖尿病などの代謝性疾患患者、腎機能障害患者

参考資料
中外製薬からの通達文書
2004.08.16記  2004.10.19追加修正