公開日 2003.01.20 更新日2003.02.26 
記事は参考に留め、治療方針は診療医師と相談してください。
インフルエンザの治療(簡易版)
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・インフルエンザの詳しい解説はこちら  
  インフルエンザ流行状況 各地の発生状況 、各県のABタイプ別発生状 2005.02.10リンク確認  

インフルエンザになってしまった人ための解説です。 


主な参考資料:第47回日本化学療法学会(演者:管谷 憲夫) 99.6月

●治療メモ●

【1】新しいインフルエンザの治療薬について 

 インフルエンザ対策の基本はワクチン接種ですが、最近インフルエンザ治療が大きく変わりました。1998年末にはA型インフルエンザの治療薬としてシンメトレル(商品名)が承認され、2001年2月にはA型とB型の両ウイルスに効果がある副作用の少ない新薬(ノイラミニダーゼ阻害薬:リレンザ吸入薬、タミフル内服薬)が発売されました。これらの薬は、喉や鼻粘膜で増加したインフルエンザウイルスが全身に拡散していくのを邪魔する薬です。

ただし、ウイルスは約72時間で全身へと拡がるため、感染の初期に服用しないと効果が期待できません。遅くとも発熱から48時間以内、できるだけ24時間以内に治療を開始することを勧めます。これらの薬を使うと、12〜24時間以内に解熱することが多く、重症な症状が1〜2日短縮すると言われています。すぐに薬を中止すると再発することもあります。5日は続けるように薬の添付書類には書いてあるが、3〜4日くらいでも効果にあまり差がないようです。

 ただし、インフルエンザワクチンで認められる重症化を予防する効果は確認されていません。また、インフルエンザワクチンを接種している人は、これらの治療薬で解熱する割合が高くなると言われています。なお、インフルエンザウイルス以外の風邪ウイルスに効く薬は現在もありません。

 

【2】新しいインフルエンザの治療薬について 


タミフル(商品名)■ タミフル(75)cap、タミフルドライシロップ

 成人または35Kg以上の小児の使用量:1回75mgを1日2回内服を4日〜5日続ける。腎機能障害患者は、1cap/日に減量するか、他剤を選びます。1歳以上(8.1Kg以上)の乳幼児の使用量:タミフルドライシロップを4mg/Kg/日を1日2回に分けて投与4日〜5日続けます。

特徴

○A型、B型インフルエンザの治療薬として両方に有効(新型インフルエンザウイルスにも有効)。
○耐性ウイルスの出現が少ない。耐性ウイルスが現れても感染力は低い。
○ワクチンと併用で相乗作用が期待できる(翌日に解熱割合が増加)。
○受験生などに予防薬としても有効(保険上の問題あり)。

× 発熱後48時間以上経過した場合は効果は期待しにくい(病気の初期ほどよく効く)。
× 飲み始めに、吐き気(3.9%)、下痢(5.5%)、腹痛(6.8%)が時にみられます。

  この症状は一時的で、後になくなることが多いので、症状が治まれば薬は続けてください.

リレンザ(商品名)■

リレンザ吸入:1回2ブリスター(合計10mg/回)を1日2吸入を4〜5日、予防的には1日1吸入(予防には保険は効きません) 

○腎臓機能障害患者にも減量せずに使える。
×喘息患者はリレンザの吸入で、喘息発作が引き起こされることがあるので、喘息患者には避けた方がよい。              

シンメトレル(商品名)■ 

 解説を見たいひとは、商品名をクリックしてください。

●初期症状メモ●

 インフルエンザウイルスは鼻やのどの粘膜に付着し、細胞の中で増殖します。約8時間で多数の子ウイルスが誕生し、細胞の外へ出て全身へ拡がってゆきます。感染から症状がでるまでの潜伏期間は平均2〜3日です。おもな症状はのどの痛み、悪寒、急な高熱全身の筋肉や関節痛などです。下痢や腹痛を伴うこともあります。発熱期間は成人で1〜3日です。解熱後も咳・痰や鼻汁が続くことも少なくありません。

●検査メモ●

 現在、咽頭・鼻粘膜擦過試料からインフルエンザウイルスを確認する簡単な検査が普及しています。しかし、発病初期はウイルスの数が少なく、検査が陰性になることも少なくありません。検査を行わずに、または検査が陰性でも流行状況と症状から判断して、インフルエンザの治療を行うことがよくあります

●経過メモ●

 抗インフルエンザウイルス薬の効果が認められれば、12〜24時間以内に解熱します。しかし、このときに内服を中止すると再発しやすいので、薬の内服は続けてください。体調が元に戻るには一週間はかかります。
  高齢者はインフルエンザから細菌性の肺炎を合併することも多く、注意が必要です。
  小児ではインフルエンザでの解熱剤(感冒薬にも含まれる)の使用は、アセトアミノフェン以外は危険とされていますので、これ以外は使わないで下さい。発熱は本来ウイルスに対する身体の防御機構です。すべての医師の意見が完全に一致しているわけではありませんが、大人で体力がある人は基本的に解熱剤は使わない方が早く治ると考えられます。発熱に対しては、十分な水分とミネラル(ポカリなど)を補給してください。熱を下げたいときには、まず物理的に冷却する方がよいでしょう。

●感染予防●

 インフルエンザウイルスは、空気感染(飛沫伝染)です。ウイルスの排泄は発病後4〜5日(長いと7日)程度です。感染者のマスクは空気への拡散防止に役立つと思いますが、周囲の人がマスクしても予防効果は期待できません。感染予防には患者との濃厚な接触を避けることが大事です。

インフルエンザウイルスは湿気に弱く、加湿器を使うか、ぬれタオルを部屋に干すとよいかもしれません。また、緑茶、紅茶、ウーロン茶に含まれるカテキンに結合することで感染力をなくします。これらのお茶によるうがいは、感染の予防に有効とされています。一度感染力をなくしたインフルエンザウイルスは感染しません。うがい液を飲み込んでも効果があるので、頻回にお茶を飲むことも有効と考えられます。なお、「イソジンうがい薬」はインフルエンザウイルスに対する効果は報告されておらず、お茶によるうがいより劣るようです。また、登校は周囲への感染を考えた場合、解熱後2日以後で、かつ発病から5〜6日後を目安にすればよいと思われます。

 ●風邪薬の使用について●

 「風邪には風邪薬を早めにのめばよい」と思っている人が多い。しかし、これは間違っています。「風邪で熱がでるのは、ウイルスをやっつけるためだから薬で熱を下げない方がよい」と医薬ビジランスセンター浜 六郎理事長も指摘している(朝日新聞2002.1.26朝刊)ように、風邪薬に含まれる解熱剤の使用は病気自体は悪化、または長引かせてしまうと考えられています。

 とくに、インフルエンザではほとんどの解熱剤が重篤な副作用を小児で起こす可能性があると指摘されています。小児のインフルエンザに対して、ほとんどの解熱剤が使用禁止か厳重に注意して使用するようになっています。インフルエンザによる脳障害も解熱剤で悪化する可能性があります。どうしても解熱剤を小児に使う場合には、安全とされているアセトアミノフェン(カロナール、アンヒバ坐薬)を使いましょう。大人では「解熱剤は症状を軽減してくれますが、病気自体は長引いてしまう」と考えられます。インフルエンザの可能性がある高熱疾患では、大人でも風邪薬は使わない方がよいでしょう。


 インフルエンザの詳しい解説はこちらを見てください。

2003.1.20記