■ぺースメーカー植え込みになった拡張型心筋症■ 公開日 2004.9.15  更新日2004.9.15
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心臓断面の設定
心臓断面図(左室長軸断面)
解説 

比較対照としての正常心臓   
 左室の縦切り断面では、左室は弾丸のような形をしている。左室の内腔の大きさは小さく、また左室壁の動きは良好である。左室壁の断面は横向きの「U字またはV字型」をしている。
心腔の大きさの計測値
左室の短径:拡張末期(最大時)46mm、収縮末期(最小時)32mm
左室の動きの指標:左室駆出率59%、左室径短縮率31%
左房前後径:36mm(最大時)。

患者プロフィール 当時53歳の女性。全身倦怠、食欲不振がときにみられるが、入院することはなかった。心室性期外収縮が頻発している。冠動脈造影では異常がなかった。PCW(10mmHg)、 RA(1)mmHg、 CO4.9 L/分、CI 3.0 L/分/m2C型肝炎ウイ ルス抗体陰性、心臓病の家族歴なし。おもな内服薬は、β遮断薬、利尿剤である。ARB、ACE阻害薬では気分不良がおこる
グラフ:左室径や左室の動きがどのように変化したかをみる
(1)●●年の1月  この頃の心電図
心臓の動き

 心筋全体が障害を受けているために、左室の内腔は軽度拡大し、 左室壁全体の動きが高度に低下している。左房の大きさは正常である。ごく軽度の僧帽弁逆流がある。
 僧帽弁を通過する血液量が減少するために、僧帽弁の開き方が小さくなっている。
心腔の大きさの計測値
左室の短径:拡張末期(最大時)54mm、収縮末期(最小時)45mm
左室の動きの指標:左室駆出率34%、左室径短縮率17%、左室壁厚9〜10mm
左房前後径(最大時):37mm、心拍数71/分整(洞調律)

(2)3年後の7月
 吐き気や食欲不振などの気分不良が頻繁に生じ、定期以外の受診が増加している。治療薬の変更なし。
心臓の動き

 左室の内腔はさらに拡大し、左室壁全体の動きもさらに低下している。
心腔の大きさの計測値
左室の短径:拡張末期(最大時)65mm、収縮末期(最小時)57mm
左室の動きの指標:左室駆出率28%、左室径短縮率12%、左室壁厚9〜10mm
左房前後径(最大時):38mm、心拍数72/分整(洞調律)

(3)4年後の2月   この頃の心電図
 気分不良と脈拍数が少ないため受診。心拍数42/分。心電図では完全房室ブロックとなっていた。β遮断薬を中止し、入院となった。
心臓の動き

 先行する心房収縮との関係で、左室の動きにも変動が見られたが、左室の内腔の拡大、左室壁全体の動きの程度は半年前とほぼ同じ。
心腔の大きさの計測値
左室の短径:拡張末期(最大時)65mm、収縮末期(最小時)57〜59mm
左室の動きの指標:左室駆出率19〜28%、左室径短縮率9〜12%、左室壁厚 9〜10mm
左房前後径(最大時):38mm、心拍数43/分整(完全房室ブロック、心室調律)

(4)同年の4月   この頃の心電図
 ペースメーカ植え込み(VDD)により徐脈は改善したが、気分不良は続く。心不全の重症度を示すBNPは720.5pg/mlととても高い。後に心不全のために入退院を繰り返すようになる。
心臓の動き

 左室の内腔の拡大、左室壁全体の動きの程度は半年前とほぼ同じ。
心腔の大きさの計測値
左室の短径:拡張末期(最大時)64mm、収縮末期(最小時)54mm
左室の動きの指標:左室駆出率32%、左室径短縮率16%
左房前後径(最大時):38mm、心拍数82/分不整あり(ペースメーカー調律)
 

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