トピックス(役立つ医学情報-循環器編No.6)】 
公開日2005.01.04 更新日 2005.02.04  HOMEへ(メニューを表示)  メニューを隠す  
このページは、当院が興味を惹かれた医学情報(必ずしも最新ではありません)を紹介します。
このホームページの記事はあくまでも参考に留め、治療方針は診療医師と相談して決めてください。
42)【心臓】冠動脈疾患発症の予測では親よりも兄弟姉妹の既往歴のほうが重要。 2005.02.04記  
41)【心臓】心血管疾患の高リスク者ほど、運動による死亡リスク減少効果が大きい。 2005.02.04記
39)【心臓】喫煙の冠動脈疾患発症率への影響は男性と女性で異なる。 2005.01.04記 
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     【循環器】    前へ 


(42)冠動脈疾患発症の予測では、親よりも兄弟姉妹の既往歴のほうが重要。

まとめ:「親よりも同胞に早発性冠動脈性心疾患の既往歴がある場合のほうが、冠動脈疾患発症の可能性が高くなる」と米国雑誌に発表された。
 家族歴が冠動脈疾患の危険因子になっていることは以前から認識されていた。今回さらに、同胞に冠動脈疾患の既往がある場合と親に冠動脈疾患の既往がある場合の両者の影響に差があることがわかった。 親よりも同胞の既往歴と強く相関
 ジョンズホプキンス大学Ciccarone心臓病予防センターのRoger Blumenthal所長らは、心疾患の診断を受けた同胞がいる者は、冠動脈硬化症が進行している確率が2.5〜3.0倍で、しかも兄弟姉妹(同胞)の早発性心疾患の既往歴は、親の既往またはほかの冠危険因子よりも冠動脈性心疾患発症をより確実に予測するとCirculation(2004; 110: 2150-2156)に発表した。
冠動脈硬化症の確率が約4 倍
 オハイオ州在住の成人約8,500例(半数が52歳以上、過去に心疾患の徴候を示した者は除外)を対象とし、電子ビームCTにより冠動脈の石灰化の存在とその程度を調べた。その結果、同胞が冠動脈疾患の既往歴を持つ被験者では、家族歴を全く持たない被験者と比較して、進行した冠動脈アテローム動脈硬化症の頻度が4 倍近くになっていた。一方、親のみが既往を持つ被験者では頻度が約2倍になっていた。
【当院の見解】
 
親よりも兄弟姉妹の冠動脈疾患の有無に注意が必要だということである。おそらく、同胞の冠動脈疾患の既往は、中等度の高脂血症よりもずっと重要な危険因子だろうと考えられる。
参考資料(出典)
Medical Tribune. 2004年12月16日 (VOL.37 NO.51) p.30
2005.02.04記 



               【心臓】            トピックスの目次へ   次へ  前へ 


(41)心血管疾患の高リスク者ほど、運動による死亡リスク減少効果が大きい。

まとめ:循環器の高リスク者でも定期的に適当な強度の運動を行うことが勧められる。
中等度〜強度の運動で心臓血管死が35%〜45%減少
 ミシガン大学家庭医学のCaroline Richardson助教授らは、50〜60歳代の糖尿病や高血圧、喫煙といった冠動脈危険因子を持つ高リスク者ほど運動による死亡リスクの減少率が高くなるとMedicine & Science in Sports & Exercise(2004; 36: 1923-1929)に報告した。
運動が死亡リスクを38%低減
 2 つ以上の危険因子を持つ参加者は高リスク群に分類され(22%)、危険因子が 1 つは中リスク群、なしは低リスク群に分類された。中リスク群の死亡リスクは低リスク群の2 倍、高リスク群では低リスク群の4 倍以上に達した。各運動群の死亡リスクを年齢、性、人種、喫煙、肥満、癌の病歴、総合的健康状態、収入、心疾患リスクで調整した後も、定期的に中等度〜強度の運動を行うことで予防効果・死亡リスクの38%低減効果が示された。
同助教授は「高リスク者にとって運動が原因で発生するイベントは、運動をしないままでいる高いリスク群に比べればはるかに小さい」と述べている。
強い運動を行う必要はない
 Richardson助教授らは、1992年に開始したHealth and Retirement study(健康と退職者研究)に参加した中高年者9,611例のデ−タをもとに、50〜60歳代前半に定期的な運動をしていた人では、座りがちの生活をしていた人に比べ、その後 8 年間の死亡リスクが35%低いことを報告した。さらに、複数の基礎疾患がある心疾患リスクの高い人では45%減少し、運動効果がさらに大きかったと報告している。
 死亡リスクを下げるためにはマラソンなどの強い運動を行う必要はなく、ウオーキングやガーデニング、ダンスなどの軽度の運動を週に数回行った場合でも認められるという。
これらの結果から、50〜60歳代の心血管疾患の危険因子を持つ人、心筋梗塞や脳卒中の既往歴を持つ人は定期的に運動を行うことを勧めている。
心血管リスクが高い人で最大の効果
 心血管疾患の高リスク群の人は、運動が心臓に負担となることを恐れて運動しないことが非常に多い。しかし、今回の試験はむしろ、心血管疾患危険因子が複数ある高リスク者において、より高い死亡リスク低下が期待できることを示している。

【当院の見解】
 
心筋梗塞の既往があっても体力に見合った定期的な運動は、積極的に勧めた方がよいということです。

参考資料(出典)
Medical Tribune. 2004年12月16日 (VOL.37 NO.51) p.32 を抜粋して引用
2005.02.04記 



               【心臓】            トピックスの目次へ   次へ  前へ 


(39)喫煙の冠動脈疾患発症率への影響は男性と女性で異なる。

まとめ:ATPIIIによる10年リスク評価ソフトを使って、喫煙の冠動脈疾患発症率への影響を男女別で見てみた。2004年のWHOの発表の内容とよく合う結果となった。


 【関連記事】
29)【心臓】若年者(40歳以下)は喫煙で冠動脈疾患が5倍になる。
24)【心臓】喫煙による冠動脈疾患の発症率への影響は若い人ほど大きい。
ATPIIIの冠動脈10年リスク評価ソフトで作成
4本の各々の線は、上から総コレステロール値280,260,240,220mg/dlです。すべての中性脂肪は100mg/dl、HDLコレステロールは50mg/dlとして計算しています。



【WHO発表による喫煙による心臓発作の危険性】
  1985年から1994年の間に発生した約23,000件の成人の非致死的な心臓発作を研究したWHO発表の数字に基づいた発表では、35歳から39歳の男性において、喫煙者では非喫煙者に比べて、非致死的な心臓発作が約5倍多く発症するようだった。喫煙の影響は同じ年齢層の女性では更に大きくなった。若い女性の喫煙者では非致死的な心臓発作が5倍以上増加するようだった。
 35歳から39歳の年齢では、男性の非致死的心臓発作の約3分の2(65%)、女性では半数以上(55%)の非致死的心臓発作は喫煙が原因であった。60歳から64歳の年齢層では他の危険因子が増すことにより、喫煙による危険は下がった。しかし、研究者は高齢であっても女性の場合は、男性に比べ喫煙による危険性が高いことを見い出した。
 以上のことを頭において、ATPIIIの冠動脈疾患10年リスク評価ソフトで計算して、描いたグラフが上である。WHO発表の内容とよくあう。
 女性は30-40代と比較的若くても、喫煙の影響を大変受けやすい。グラフでは、喫煙女性は高脂血症の影響も受けやすいとでているが、この点が事実かどうかは別の資料がないのではっきりしない。
2005.01.04記