トピックス(役立つ医学情報-循環器以外編)】 
公開日2005.03.02 更新日2005.03.02  HOMEへ(メニューを表示)  メニューを隠す  
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48)【薬剤】鎮痛解熱剤による胃障害の頻度 2005.03.02記
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               【医療】           

(48)非ステロイド性消炎鎮痛薬(鎮痛剤)の長期投与による消化性潰瘍の発生頻度

まとめ:消炎鎮痛薬(鎮痛剤)の長期投与による消化性潰瘍は無症状が多く、その発生頻度は坐薬でも減らず、低用量アスピリンでも高い。

●鎮痛剤による消化性潰瘍の発生頻度
 消化性潰瘍(=胃潰瘍と十二指腸潰瘍)の原因はピロリ菌が90%、非ステロイド性鎮痛剤(NSAID:以下鎮痛剤)が5%と言われている。日本リウマチ財団が行った疫学調査では、3カ月以上鎮痛剤を内服している関節炎患者1008例に対して、無作為に上部消化管内視鏡検査を施行したところ、開放性の胃潰瘍15.5%十二指腸潰瘍1.9%を認めた。さらに出血、穿孔などの重篤な合併症を起こす潰瘍の危険度は2.7-5.3倍高くなるとされている。
 鎮痛剤長期投与時にみられる胃潰瘍は好発部位が異なり、また自覚症状に乏しいことが特徴である。貧血のみで発見される例が半数近くある。

● 坐薬への変更と発生頻度

 鎮痛剤による粘膜傷害の機序は、粘膜への直接作用と、腸管から吸収された鎮痛剤が胃粘膜のプロスタグランジン(PG)を減少させて粘膜の防御機構を破綻させる間接作用が考えられている。坐薬による胃粘膜への直接傷害は回避されるが、血中を介しての胃傷害は同等と考えられている。インドメタシンという鎮痛剤の経口と坐薬での胃潰瘍発生頻度に差がなかったとの報告もある。

●アスピリン投与と消化性潰瘍
 欧米の報告での発生頻度は2.47%(偽薬投与では1.68%)、オッズ比は1.68であり、アスピリンの1日用量が163J以下での発生頻度も2.3%(偽薬投与では1.45%)で、用量低下による出血性潰瘍の減少は認めなかった。また素剤、腸溶剤、制酸緩衝剤など剤型の違いでの上部消化管出血の頻度に差がないと報告されている。低用量アスピリンでの潰瘍発現の頻度は低率であるが、消化性潰瘍の既往歴を有する例、アスピリン以外の鎮痛剤併用例では、潰瘍発生のリスクが高まるので注意が必要である。

【当院の見解】

 鎮痛剤を長期投与受けている患者は多い。特に整形外科に通院中の患者では日常的に処方されている。内科医としては、できるだけ使わないように、頓服として使うように指導している。低用量アスピリンでも胃潰瘍の頻度が高まり、また剤型の違いは潰瘍リスクを減らさないという報告は参考となった。

参考資料

 日本医事新報(2005年2月12日) 東京医大霞ヶ浦病院 題内科助教授 溝上裕士 2005.03.02記