トピックス(役立つ医学情報-循環器以外編)】 
公開日2003.09.14 更新日 2003.07.30  HOMEへ(メニューを表示)  メニューを隠す  
このページは、当院が興味を惹かれた最新医学情報を紹介します。
このホームページの記事はあくまでも参考に留め、治療方針は診療医師と相談して決めてください。

36)【医療】注射用抗菌薬〔抗生物質)のアレルギー皮内テストが廃止になった。 2004.11.18記 
34)【医療】「患者様」と呼ぶのは変だ。 2004.11.08記
33)【不眠症】働く世代のための快眠10カ条。  2004.10.04記 
31)【変形性膝関節症】膝痛にはグルコサミン・コンドロイチンを試してみるとよい。 2004.09.15記

28)【インフルエンザ】タミフル75カプセルに予防適応が追加される。 2004.08.16
27)【SAS】睡眠時無呼吸症候群と交通事故の関係 2004.07.30
23)【予防】しゃがみ込む姿勢は変形性膝関節症を引き起こす。 2004.05.25記
19)【治療】亜鉛欠乏と口腔内アフタ 2004.04.14記  2004.04.27追記

16)【治療】ピロリ菌除菌後の維持療法は不要。 2004.03.27記
15)【感染症】エボラ出血熱ワクチンのヒト臨床試験が始まる。 2004.03.27記
12)【治療】アルツハイマー病のワクチン療法。 2004.03.07記
11)【診断】電子体温計による体温測定。 2004.01.19記
10)【喫煙】ニコチン貼布剤の長期禁煙成功率はわずか5%しかない。 2004.01.19記

09)【感染症】鳥インフルエンザがなぜ問題となるのか。 2004.01.18記
08)【花粉症】お茶のカテキンがアレルギー治療に有望。  2004.01.18記
07)【医療】真空採血管の使用上の注意(厚生労働省通達)。 2003.12.08記
06)【眼科】白内障の予防と薬物療法の科学的根拠。 2003.11.04記
01)【アトピー性皮膚炎】アトピー性皮膚炎を体質から治す食事療法や漢方薬がある。  2003.09.14記

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     【インフルエンザ】


28)タミフル75カプセルに予防適応が追加される。

まとめ:ハイリスク患者に限定して、タミフル75カプセルに予防的適応が認可された。

【予防対象】
 以下の予防対象者の同居者がインフルエンザに罹患した場合に限り、1) 65歳以上の高齢者、2)ハイリスク疾患患者※(13歳以上)の予防使用が認可された。
【処方期間】
  インフルエンザにかかった同居者と接触後2日以内に、タミフル75を1カプセル、7-10日間予防使用する。
【注意】
 本剤の予防使用は、「いつでもだれでも」ではない。「短期使用」であることを注意する。「タミフル・ドライシロップ3%」の予防使用は認められていない。
※ハイリスク疾患患者とは、●慢性呼吸器疾患患者、●心疾患患者、糖尿病などの代謝性疾患患者、腎機能障害患者

参考資料
中外製薬からの通達文書
2004.08.16記


               【睡眠時無呼吸症候群】                      トピックスの目次へ   次へ  前へ 


27)睡眠時無呼吸症候群と交通事故の増加の関係

まとめ:睡眠時無呼吸症候群(SAS)の重症度と交通事故の頻度が強く相関し、治療により交通事故が激減した。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の重症度と交通事故の頻度が強く相関した。
いびきや昼間の眠気を愁訴として、愛知医科大学病院睡眠医療センターを受診した運転免許拾得者1,529例を対象に、SASの重症度と過去5年間の居眠り運転に関するアンケート調査および睡眠時ポリグラフ検査を行った。
重症度分類
無呼吸指数
居眠り運転事故率
1)正常群    AHI<5
6.9%    
2)軽症・中等症群  5≦AHI<30
8.8%    
3)重症群 30≦AHI<60
12.1%    
4)最重症群 60≦AHI
14.7%    

重症度分類
エプワース眠気指数
居眠り運転事故率
1)正常群
   0〜6点   
4.2%    
2)軽度過眠群
7〜12点   
9.5%    
3)中等度過眠群
13〜18点   
14.9%    
4)重度過眠群
19〜24点   
32.5%    
無呼吸指数による重症度分類でみても、エプワース眠気指数による重症度分類でみても、正常な人(AHI<5かつエプワース眠気指数0〜6点)は、事故率0であった
愛知医科大学病院睡眠医療センター有田亜紀、塩見利明らの資料(第29回日本睡眠学会)より
愛知医科大学病院睡眠医療センター有田亜紀、塩見利明らの資料(第29回日本睡眠学会)より


持続的陽圧呼吸(CPAP)治療で交通事故発生率が著しく減少した。
重症度分類
無呼吸指数
居眠り運転事故率
1)軽症群  5≦AHI<15
14.0%
2)中等症群 15≦AHI<30
23.6%
3)重症群 30≦AHI
27.6%
事故発生時の眠気  
あり 40%(持続的な眠気17%、突然の眠気23%)
なし 54%
事故発生時間帯 14〜15時が多い。眠気を自覚する時間帯と一致。
発生状況 渋滞中や信号待ちが多い
事故内容 追突が高頻度であった。高速道路走行中や人身事故もあった。
CPAP治療後の事故 2.3%、ニアミス率1.7%と減少した。
事故を起こした8例すべてがCPAPの使用率80%未満かつ使用時間45時間未満のコンプライアンス不良症例であった。8例全員が主観的な眠気を自覚していなかった。
虎ノ門臨床生理検査部、吉野聡子らの資料(第29回日本睡眠学会)より

参考資料
medical tribune 2004.7.22
2004.07.30記


               【予防】                      トピックスの目次へ   次へ  前へ 


23)しゃがみ込む姿勢は変形性膝関節症を引き起こす。

まとめ:中国人の調査から、しゃがみ込む姿勢の時間が長いと「変形性膝関節症(膝OA)」や「変形性股関節症(股OA)」が増加することがわかった。
 中高年に見られる変形性膝関節症の原因は、肥満が大きな原因と考えられがちだが、実際はやせ形のアジア人高齢者にも多い。ボストン大学のYuqing Zhang博士らは、北京関節炎研究の資料により、職業ではなく、普段の暮らしの中でしゃがむ習慣が中国人高齢者(60歳以上)の変形性膝関節症を悪化させる要因になっていると発表した(Arthritis & Rheumatism (2004;50;1187-1192)。
60歳以上、変形性膝又は股関節症患者のしゃがむ習慣
 
しゃがむ姿勢が最も頻繁であった人達

大腿脛骨の変形性関節症を言う特殊な変形性関節症を起こしていた。

25歳時にしゃがむ姿勢をとった時間が1日1時間以上
40%
68%
変形性関節症は1日0.5時間未満 のグループに比べて、有意に高率であった( 統計的に高率となった)。
25歳時にしゃがむ姿勢をとった時間が1日1時間未満
60%
32%
 
大腿脛骨の変形性関節症の頻度(中国人/白人比)
中国人と白人(Framingham study)との比較
男性
女性
5.4倍
9.5倍

白人に比べてやせ形が多い中国人に変形性膝関節症が著しく多い原因の一つとして、しゃがみ込む姿勢が考えられる。とくに、女性の場合はより顕著である。 参考資料
 Medical tribune2004.5.20
2004.5.25記  


               【治療】                      トピックスの目次へ   次へ  前へ 


19)亜鉛欠乏症と口腔内アフタ

まとめ:繰り返す口腔内アフタに亜鉛欠乏症が関係していることがある。
 アフタとは、口腔粘膜に生じる小さな浅い潰瘍である。潰瘍表面は白色または灰白色の線維素性偽膜の覆われ、周囲は紅暈で囲まれている。アフタが同一部位に反復して出現する場合には慢性再発性アフタと呼ばれる。アフタの原因はまだよくわかっていない。治療には、通常ステロイド含有軟膏を使う。
 一方、 亜鉛はヒトの70種類以上の酵素の成分となっており、必須の微量元素である。亜鉛欠乏は、味覚や臭覚の減退・消失、成長遅延、皮膚炎、脱毛、免疫機能低下、創傷治癒の遅延を引き起こす。
  血清亜鉛の正常値は測定法によって異なり、60-130μg/dlと幅広い。このため亜鉛欠乏症の診断には臨床症状を考慮する必要がある。亜鉛は、創傷治癒促進作用、抗潰瘍作用、抗酸化作用、抗炎症作用などさまざまな作用を有している。たとえ血清亜鉛値が正常下限でも亜鉛投与により臨床症状が改善される症例も多く認められる。口腔内びらんを主訴とする亜鉛欠乏症に亜鉛製剤を投与し、症状の改善を認めている。 (大部分を参考資料から引用)

当院の意見
 当院では味覚異常の治療に亜鉛製剤を使っている。亜鉛製剤として簡単に手にいる薬剤としては、保健上の適応症は違うが、消化性潰瘍治療薬のプロマック(一般名プラプレジンク)がある。しかし、プロマックは十分な亜鉛を含有していないため、効果が不十分なことがある。当院でプロマックの常用量の投与では味覚異常が改善せず、血中亜鉛濃度も正常下限の患者さんがいた。この患者さんに硫酸亜鉛※300mg/日を投与したところ、血中亜鉛濃度は正常化し、味覚異常と食欲不振が改善した。硫酸亜鉛は医薬品としてではなく、試薬としてしか手に入らないために、当院ではカプセルに詰め直して使っている。亜鉛の過剰投与量は、治療に使う量よりはるかに高用量と考えられ、過剰投与による害も報告されていないようである。よって過剰投与は事実上問題とならない。亜鉛欠乏症には十分な量の亜鉛投与が望まれる。また、治療効果を確認するために、治療後にも血清亜鉛濃度を測定する必要がある。

※注) 硫酸亜鉛は薬価収載されていませんので、保険処方箋では調剤できません。バイアグラなどと同様に別の自費処方箋が必要です。

参考資料
 「亜鉛欠乏とアフタの関連性」、日本医事新報2004.4.10 P98、 鹿児島大口腔顎顔面センター 杉原一正、上川善昭
2004.4.14記  2004.4.27追記
 


               【治療】                      トピックスの目次へ   次へ  前へ 


16)ピロリ菌除療法後には、胃潰瘍再発予防の維持療法は多くは不要。

まとめ:鎮痛剤を常用していない出血性胃潰瘍患者はピロリ菌除菌後には、潰瘍治療薬を続ける必要はほとんどない。
 国泰総合医院(台北)内科胃腸病学のChina-Chiung Liu博士らは、82例を対象とした5年間の前向きランダム化対照試験の結果、「ピロリ菌除菌に成功し、潰瘍治癒後の出血性胃潰瘍患者には、潰瘍再発防止のための制酸剤などによる長期療法は必要なかった」との報告した。 ただし、胃の手術歴のある患者、特定の抗潰瘍治療治療歴のある患者、入院前に抗菌薬または非ステロイド消炎鎮痛剤を服用した患者は除外されている。したがって、今回の結果は、消炎鎮痛薬を使用していない出血性消化性潰瘍のみに適応され、合併症のない出血性潰瘍患者には、ピロリ菌除菌後に抗潰瘍維持療法を行わないことを強く勧めている。Archives of International Medicine(163:2020-2024)

当院の意見:潰瘍再発予防のためにH2ブロッカー(商品名:ガスター、ザンタック、タガメット、そのた)やほかの抗潰瘍薬を何の検証もなく、内服を続けさせている医師は多い。ピロリ菌除菌療法により、これらの長期治療がずっと少なくなると言われているにもかかわらず、現実は異なる。非難的ではあるが、医療側の経営的な理由が、ピロリ除菌療法の普及を抑制している。また、除菌療法後も何らかの薬物療法を行い続けていることが多い。こういった批判は、良心的な医療記事で見かける。計算高いこのような身勝手な医師ばかりではないが、少なくないのも事実であろう。患者さんも知っておいた方がよいと思う。自分から積極的にピロリ除菌療法を申し出て、除菌成功後は鎮痛剤を常用していないほとんどのヒトには薬は不要であると考えてよい。
参考資料
Medical Tribune 2003.12.25記事より
2004年04月01日記


               【感染症】                      トピックスの目次へ   次へ  前へ 


15)エボラ出血熱ワクチンのヒト臨床試験が始まる 。

まとめ:エボラ出血熱感染予防ワクチンの安全性に関するヒト臨床試験が米国で開始された。
 このワクチンは感染性の成分を含んでいない。 ワクチン製造過程においてもウイルスを必要としない新しい技術(DNAワクチン)を使っている。同ワクチンはサルにおいて、致死性の感染を完全に予防した。今回のヒト臨床試験では、ボランティアを対象とし、同ワクチンのヒトでの安全性を確認するのが目的である。エボラ出血熱ウイルスは、生物テロへの使用も危惧されており、これを思いとどまらせる効果も期待されている。つまり、エボラ出血熱ワクチン開発は、生物テロ対策の一環でもあることを強調している。エボラ出血熱は、アフリカで流行が見られ、この数年間で増加している。感染性が非常に強く、広範囲の内出血を引き起こし、短期間で死亡に至る。感染者に有効な治療薬は今のところない。その感染者は90%死亡している。

参考資料
Medical Tribune 2003.12.25記事より
2004年04月01日記


               【治療】                      トピックスの目次へ   次へ  前へ 


12)アルツハイマー病のワクチン療法。

まとめ:アルツハイマー病に有効なワクチン療法の開発が進んでいる。有効性は認められたが、副作用のためにまだ安全性には問題がある。安全性の問題が克服されれば、実用までそう先のことではない。
 アルツハイマー病は記憶障害で始まり、徐々に痴呆が進行する大脳の病気(変性疾患)である。この病気の最大の特徴となる大脳の顕微鏡所見(病理的所見)は「老人斑」と考えられている。老人斑は、βアミロイドという物質が脳に沈着したもので、その毒性で神経突起の変性、さらに神経細胞の死がおこると考えられている。このβアミロイドの形成、沈着を阻止する予防薬や治療薬の開発が行われ、ワクチン療法が注目されている。

 ワクチン療法に最初に気づいたのは米国エラン社のDale Schenk博士らである。どのようにしてβアミロイドの沈着を予防するかはまだ仮説に過ぎず、説明するのはやや難しいので省略する。米国では「AN-1792」というワクチンで、ヒトでの治験もおこなわれた。1ヶ月に1回筋肉内注射するタイプである。360人の軽症〜中等症のアルツハイマー病で試された(phaseII試験)。副作用として、298例中18例(6%)に急性髄膜脳炎(自己免疫性)が起こったために治験は中止となった。 しかし、ワクチン療法が有効であるとの結果が得られた。その所見とは、
●ワクチン接種一年後に死亡した患者の脳では大部分の老人斑が消失したような所見があった(Nicollらの報告)。
●治験中止後一年間の患者の経過観察で、βアミロイドに結合する抗体が上昇した群(ワクチンの効果が高い群)では、上昇しなかった群(ワクチンの効果が低い群)に比べて、明らかに病気の進行が抑制されていた(Nitchらの報告)。
現在、副作用のないワクチンを求めて研究が行われており、経口ワクチンの開発も進められている。

参考資料
Medical Practice 2004.3.p490-491: 田平 武 国立療養所虫部病院長寿医療研究センターの記事からまとめた。
2004年02月7日記


               【診断】                      トピックスの目次へ   次へ  前へ 


11)電子体温計による体温測定。

まとめ:電子体温計による腋窩(えきか)の体温測定は予測値であり、条件によってはかなりずれた値となる。
 体温は測定部位によって異なるが、身体中心部の温度は一定である。一方、皮膚や手足などの温度は外気温の影響を受けて変化する。単に体温という場合は、身体の中心部の温度をさす。ところが、一般家庭で最も体温測定が行われる部位は、腋窩であり、これは本来皮膚温である。しかし、腋窩をしっかり閉めると身体中心部の温度に近づいて一定となる(平衡温)。平衡温を得るためにはどんな体温計を使っても10分以上かかる。
 現在、家庭における体温測定は、水銀体温計に代わってほとんどが電子体温計が使われている。電子体温計の多くは、「実際の温度」と「温度の上昇速度曲線からの予測」を複合して求めた予測値である。このために、測定初期の温度上昇に乱れがあると平衡温からかなりずれた予測値がでる。特に、外気温が低いと体温が上昇するまでの時間がかかり、予測値が低めにでる。一方、何度も繰り返して測定すると、センサー部分が暖まり高めにでる。

  測定に際しては、●飲食や入浴、運動、激しく泣いた後は避ける。●測定前には腋の汗をふき取る。●体軸と体温計の角度を30度くらいにする。●挟んだ手の肘を脇腹に密着させ、完全に腋を閉じる。●途中で腋が開いたり、体温計を取り出したら、最初からやり直す。●連続測定や再測定の際には、ぬれタオルでセンサー部分を一度冷やす必要がある。

 腋窩での10分以内の測定方法は、どんな体温計を使ってもあくまで「予測値」であるので、使い方が良くないとかなりずれた値がでる。その限界を認識しておく必要がある。

参考
電子体温計による体温測定 昭和大学 小児科助教授 竹内敏夫 日本医事新報 2004.1.31より
2004年02月7日 記


               【喫煙】                      トピックスの目次へ   次へ  前へ 


10)ニコチン貼布剤の長期禁煙成功率はわずか5%しかない。

まとめ:ニコチンを含んだ貼り薬は禁煙補助剤として使われているが、長期禁煙に成功したのはそのうちわずか5%と効果は低い。ニコチンパッチへの過度の期待は禁物です。
 オックスフォード大学プライマリ・ヘルスケア学のPatricia Yudkin博士らの報告では「ニコチンパッチを使用して禁煙を試みた1,686例中1,532例に対して8年後にフォローアップを行った結果、1年間禁煙を継続できた者は9%で、うち4%はその後喫煙を再開し,8年間禁煙できた者は5%にすぎなかった」とBritish Medical Journal (2003;327:28-29)に発表した。「禁煙を成功に導くには、現在使用されているニコチンパッチより効果的な方法が強く望まれる」とコメントしている。

 今回の試験では回答を寄せたのは840例で,女性が多かった。8年後の調査で回答がなかった被験者は喫煙を再開しているという前提で禁煙成功率を算出した結果、最初の1年間に成功したのは153例(9%)で、8年後も禁煙を継続していたのは83例(5%)にすぎなかった。「今回の知見やこれまでの報告から、禁煙を試みても再び喫煙者に逆戻りしてしまう確率がいかに高いかが明らかになった。」という。
禁煙支援道具に過度の期待をいだかない方がよいようです。
参考
Medical tribune 2004.1.15より
2004年01月19日 記


               【感染症】                      トピックスの目次へ   次へ  前へ 


9)鳥インフルエンザがなぜ問題となるか。

まとめ:2004年1月養鶏場の鶏の大量死の原因は、鳥インフルエンザ(H5N1)であった。ヒトには感染しにくいと言うのに厳戒態勢、なぜでしょう。理由は、鳥インフルエンザウイルスは突然変異を起こしやすく、ヒトにも感染しやすい新型のインフルエンザウイルスに変異することを心配しているからです。地震や火山の噴火のように、いつかは新型インフルエンザが出現するであろうと専門家は予測している。
 2004年1月、山口市から遠くない阿東町の採卵養鶏場「ウインウインファーム山口農場」で、病原性の強い鳥インフルエンザウイルス感染によるニワトリの大量死が発生した。このウイルスの型は「H5N1型」で、2003年末から韓国でも大流行している。H5N1型は強い毒性を持ち、濃厚な感染を受けた人が発症し、死者も出てている。 H5N1型は1997年に香港で初めて確認され、養鶏場でのニワトリの大量感染と十八人の感染者(うち六人が死亡)があった。2003年12月、韓国でも二万羽のニワトリが感染した。
  今回の鳥インフルエンザに対して、厚生労働と農水両省は感染源の解明とウイルスの封じ込め対策をおこなった。感染経路は不明である。鳥インフルエンザウイルスは人への感染力は強くない。しかし、鳥インフルエンザウイルスはトリ、家畜、ヒトとの間で感染を繰り返すうちに、ヒトからヒトへ感染しやすい型に変異し、10-40年ごとに大流行を起こしてきた歴史を繰り返している。ちなみに、ヒトからヒトへ感染するインフルエンザに変異したときに、そのウイルスは新型インフルエンザと呼ばれる。
  現在は先の大流行からは35年以上経っており、いつ新型インフルエンザウイルスがでてきても不思議ではない状況にある。ヒトからヒトへ感染する新型のインフルエンザの発生は時間の問題と専門家は考えている。しかも、現代は40年前に比べると人の移動が格段に増加しているので、感染が広まるのが速い。
  たかがインフルエンザと侮ることができない。香港でのH5N1型鳥インフルエンザの死亡率は約30%(感染者18人中死亡者6人)ととても高い。インフルエンザは感染の拡大速度はSARSと比較できないくらい速く、死亡率が高い新型インフルエンザが出現したら、世界中がパニックになることは容易に想像できる。新型インフルエンザに対するワクチンの開発は既存の技術ですぐにできるが、新型の場合には2回接種が必要となり、世界中の人を対象とした数量は1年後でも供給困難である。誰に優先的に割り当てするか、社会問題にもなるだろう。
 【インフルエンザウイルスのH型とN型】

 インフルエンザウイルスは、ウイルス表面のHとNの2種類の突起の型によって、分類されている。タイプが違うとワクチンの効果がない。Hは細胞への感染に、Nはウイルスが細胞から遊離して感染拡大するのに関与する。Hは15タイプ、Nは9タイプあるので、理論上15×9=135種類のインフルエンザウイルスが発生する可能性がある。人に感染して大流行したのは,1918年のスペインかぜ(H1N1)、1957年のアジアかぜ(H2N2)、1968年の香港かぜ(H3N2)、1977年のソ連かぜ(H1N1)。H5型とH7型は鳥に感染し、特に重篤な症状を呈する。
以下は厚生労働省が2004.1.13日に作成した「トリインフルエンザの疑問に答えるQ&A」を引用した 。一部他の情報源からの資料も追加した。


Q1 高病原性鳥インフルエンザとはどのような病気か  
 A:ウイルスの感染を受けた鳥類が死亡し、全身症状などの特に強い病原性を示すものを呼ぶ。ニワトリ、七面鳥、うずらが感染すると、全身症状を起こし、呼吸器症状、下痢などが現れ大量死することも少なくない。 現在までに本病を引き起こしたウイルスは、すべてA型インフルエンザウイルスのH5またはH7の亜型である。野鳥などの糞などから伝染すると考えられる。

Q2 これまでの発生国・地域は  
A:香港1997年(H5N1)、中国、米国、オーストラリア1997年(H7N4 )、イタリア1997年(H5N2)、イタリア1999年(H7N1)、オランダ2003年(H7N7)、ドイツ、韓国2003年(H5N1)、ベトナムなど。日本では大正十四年(一九二五年)以来なかった。  

Q3 人間に感染した例は
 A:平成九年、香港でH5型インフルエンザに十八人が感染、六人が死亡しているが、人から人への感染はなかった。昨年三−四月、オランダではH7型インフルエンザウイルス流行の際に十数人インフルエンザ症状を呈した。一人が肺炎で死亡しており、家族内での感染がみられた。

Q4 どのように人間に感染するか
 A:エンザウイルスに感染するのは、病鳥と近距離で接触した場合か、内臓や排泄(はいせつ)物に接触した場合などが多く、鶏肉や鶏卵からの感染の報告はない。  

Q5 鶏肉や卵を食べて感染するか
 A:食品としての鳥類を食べることによって人が感染をした例はない。また調理の際に加熱を行えば、万一ウイルスが残存していたとしても、これによって不活化されるので、感染源とはならない。  

Q6 人間 にはどんな症状がでるか
 A:オランダの例(H7型)では結膜炎が主な症状だったが、一部の感染者では呼吸器の症状も見られた。香港の症状は発熱、せきなどの人の一般的なインフルエンザと同様のものから、多臓器不全に至る重症なものまでさまざま。死亡の主な原因は肺炎だった。  

Q7 予防方法は
 A:鳥インフルエンザの流行がみられる鶏舎に接触するときは手袋、医療用マスク、ガウン、ゴーグルなどの着用、手洗いの励行といった基本的な予防対策が必要。通常の生活で鳥インフルエンザウイルスに関する特別な予防を行う必要はない。  

Q8 人間が感染した場合、どのような診断方法と治療方法があるか   A:鳥インフルエンザは人で流行しているソ連型(H1N1)や香港型(H3N2)とは異なるが、A型インフルエンザウイルスに属する。人のA型インフルエンザウイルスの診断に使う迅速診断キットで、鳥インフルエンザウイルスを検出することは可能。A型インフルエンザの治療用の抗インフルエンザウイルス薬も、鳥インフルエンザに効果があるといわれている。  

Q9 外国でも発生しているが、海外旅行は大丈夫か  
A:現段階では鳥インフルエンザウイルスの発生を理由に渡航の自粛、中止などの必要はない。ただし、不用意に流行地の鶏舎などに立ち寄らない方がよい。
参考
厚生省通達ほかより
2004年01月18日記


               【花粉症】                      トピックスの目次へ   次へ  前へ


8)お茶のカテキンがアレルギー治療に有望。(Medical tribune 2003.12.18)

まとめ:茶(緑茶、ウーロン茶、紅茶)に含まれる苦み成分(カテキン)には、アレルギーを抑える効果がある。現在、吸収率が高く、アレルギー効果も高いメチル化カテキンを多く含むお茶の品種の研究が進んでいる。
 静岡県立大学薬学部の佐野満昭先生の話では、
1)茶葉にしか含まれないエピガロカテキンガレート(EGCG)は肥満細胞からのヒスタミン遊離を抑制する。
2)茶カテキンは抗酸化活性が強く、アレルギーによる活性酸素が関与する炎症反応を抑制する。
3)茶葉に含まれるストリクチニンは免疫グロブリン(IgE抗体)の産生を抑える。
 など、複数の作用機序が報告されている。とくに、メチル化EGCGは、EGCGよりも腸での吸収率が高く、効果の持続時間が長い特徴がある。メチル化EGCGは、日本の緑茶の大半を占める品種にはほとんど含まれていないが。紅茶用として開発され、現在市場に流通していない「べにふうき」、「べにふじ」、「べにほまれ」に含まれている。
 東海大学で、通年性のアレルギー性鼻炎患者に、朝夕の1日2回1ヶ月「べにふじ」のティーバック茶を飲んでもらったところ、症状の改善があり、血清IgE値の抑制があったという。効果は個人差があり、きわめて重症患者には鼻汁を抑制する程度の軽い効果しかない。ペットボトル入りの「べにふうき茶」が、コンビニの棚に並ぶのは2006年以降になる見込みである。
 メチル化カテキンは、茶を摘む時期、加工方法によって変化する。また無農薬であることも大事である。海外からの安価な商品は、この点で大きな問題となるので、避けてほしいと開発者は言っている。抗アレルギー茶は、品種で選ぶことが大事である。
 現在、2001年から、農業技術研究機構野菜茶業研究所、静岡県立大学、九州大学、東京海洋大学、大手の飲料・食品メーカーの研究所などが、協力して抗アレルギー茶の製品化が進められている。
参考
Medical tribune 2003.12.18より
2004年01月18日記


               【医療】                       トピックスの目次へ   次へ  前へ 


7)真空採血管の使用上の注意等の自主点検等について(厚生労働省からの通知)

まとめ:本来は真空採血管による採血により、採血管内の内容物が患者の体内に移行することはない。しかし、適切な手順で行わなかった場合には、採血管内の内容物や細菌等が逆流し、患者の体内に入る可能性があるので注意がいる。


真空採血管の使用上の注意等の自主点検等について
 真空採血管は本来、採血管内を減圧にすることにより自動的に血液を採取できるように設計された医療用具であり、採血管内の内容物が患者の体内に移行することはない。しかし、適切な手順で採血を行わなかった場合には、採血管内の内容物や細菌等が逆流し、患者の体内に入る可能性がある。今般、逆流を発生させるおそれのあるリスクについて再整理し、より詳細な真空採血管の使用方法等の注意事項について関係業者に対し、下記の通り自主点検等を行い、適切な措置を速やかに講ずるよう、御指導方お願いする。記

1.禁忌・禁止欄に、以下の事項を記載すること。

1)駆血帯を装着した状態で採血管をホルダーに挿入しないこと。
 駆血帯を装着した状態で採血を開始し、採血後採血管を挿入した状態で駆血帯を外した場合、静脈血圧が急激に低下し、採血管内の内容物等が患者の体内に逆流するおそれがある。

2)採血管が室内温度に戻らないうちに採血を行わないこと。
 採血管の温度変化により採血管内の圧力が変化し、採血管内の内容物等が患者の体内に逆流するおそれがある。

3)採血針を抜くまで、被採血者の腕の血管を圧迫したり、動かしたりしないこと。
 圧迫を解除した際、あるいは腕の配置によっては静脈血圧が急激に低下し、採血管内の内容物等が患者の体内に逆流する恐れがある。

4)採血管に血液が流入し始めた後は、採血ホルダーに押し込むような力を採血管に加えないこと。
 採血管内の圧力が変化し、採血管内の内容物等が患者の体内に逆流するおそれがある。

5)体外循環回路又は中心静脈から採血は行わないこと。
 圧力の変動により、採血管内の内容物等が患者の体内に逆流するおそれがある。

2.操作方法又は使用方法等(用法・用量を含む)欄に、少なくとも以下の事項を記載し、その他必要事項を詳細かつ簡潔に記載すること。
1)室内温度になった採血管を準備すること。
2)採血針を血管に穿刺したら、採血管を装着する前に駆血帯を外すこと。
3)採血管はホルダーにまっすぐ完全に押し込むこと。
4)採血の血流が停止したら、直ちに採血管を採血ホルダーから外すこと。
5)連続採血する場合には、ホルダーを固定したまま、採血管を取り替えること。

3.使用上の注意欄に、重要な基本的注意事項として、以下の事項を追加記載すること。
1)患者の腕、穿刺部位及ぴ採血管が採血中は常に下向きであることを確認すること。
2)奥付針チューブを使用して採血する際は、採血管の位置が上下に動かないようにすること。

参考
 厚生労働省からの通知 薬食安発第1117001号 平成15年11月17日より
2003年12月09日記


               【白内障】                      トピックスの目次へ   次へ  前へ


6)白内障の予防と薬物療法の科学的根拠(日本医事新報2003.10.25号)

まとめ:白内障は40歳代で30%、80歳代でほぼ100%にみられる。白内障の主な原因は加齢である。加齢以外の白内障の危険因子をして確実なものは、糖尿病、ステロイド薬、放射線、紫外線、酸化障害などである。しかし、白内障の予防や薬物療法が本当に有効なのかどうかについての科学的な証拠(エビデンス)は以外と少ない。

 紫外線対策は重要な白内障予防のひとつで、帽子やサングラスの着用は予防効果があると考えられているが、これを明確に証明した研究はない。
  白内障に対して、すでに広く使われている目薬ピレノキシン点眼液(カタリン、カリーユニ)、グルタチオン点眼液(=タチオン、イセチオン,グルタチオンT,チオグルタン,ノイチオン,ピネチオン)は、今後も投与してよいとされているが、「現在の医療水準でその有効性が検討されておらず、効果があると判断する科学的な根拠がない」とされている。使用の際には、このことを患者さんに十分話した上で使用することが望ましい。
 酸化を防ぐと言われる薬剤(抗酸化剤:ビタミンC,ビタミンE,β-カロチン)は4,500余名、7年間の調査結果で効果なしと報告された。
参考
  日本医事新報2003.10.25 白内障-予防と治療のエビデンス- 日本医科大学付属千葉北総病院眼科教授 茨城信博 より

2003年11月04日記


           01)【アトピー性皮膚炎】              トピックスの目次へ   次へ  前へ 


1)アトピー性皮膚炎患者の体質改善によく効く食事療法、漢方薬がある!(NHKためしてガッテン2003.7.30放送より)

まとめ:最新の研究で、「免疫細胞T1とT2の比率が、アレルギー体質(アトピー体質)に深く関係している」こと、「アレルギー体質は3歳までに決まってしまい、それ以降は変化しないと、これまでされていたのが、食事や漢方薬で変化する」ことがわかりました。その食事内容と漢方薬を紹介しています。以下同テレビ番組と同番組のホームページの内容をまとめ、補足したものを紹介する。
 免疫細胞は、身体に入ってきた細菌、ウイルス、異物、ガン細胞、壊れた細胞などを攻撃し、処理する。免疫に関わる細胞は色々あるが、ある種の免疫細胞はT1、T2の二種類に分けられる。体に入る細菌やウイルスの量が少ないと、仕事が少ないためにT1細胞が減少し、逆にT2細胞が過剰になる。T2細胞は、花粉やダニなどの直接的な有害性の低い異物を、むやみに攻撃するそそっかし屋の細胞である。極度に衛生的な環境では、T1細胞が減少し、T2細胞が増えてしまう。アレルギー体質の元凶は、このT1細胞とT2細胞のの数のバランスが崩れたことが大きな原因のひとつである。
 以前は、この体質は3歳までに決定され、それ以降は変化しないとされていたが、最新の研究で、このT1とT2バランスを変えるスイッチが存在することが判明した。スイッチを押すことで、アレルギー体質そのものを改善できる可能性がある。アレルギー体質を改善するのだから、アトピー性皮膚炎、喘息、食物アレルギー、花粉症などに効果がある可能性がある。
 ただし、 金属アレルギーなどの「接触アレルギー」は、T2の増えすぎとは関係ないと考えられている。また、T2が増えすぎでないのに、アトピー性皮膚炎になる人がいる。
◎「樹状細胞」
 樹状細胞は、菌のDNAや細胞膜を感知してT1細胞を増やすことから、「行き過ぎた清潔志向」、「抗菌志向」は、アレルギー体質につながる可能性がある。もっとも、子供を汚い環境で生活させたほうがよいということではない。汚い環境は体によくないばかりか、大量のホコリやダニにさらされすぎると、アレルギー症状を引き起こす可能性がる。
◎T1細胞を増やし、T2細胞を減らす方法
 過剰に増えたT2細胞はアレルギー反応を起こしやすいので、T1細胞を増やし、T2細胞を減らすことができれば、「アトピー性皮膚炎」、「花粉症」、「気管支喘息」などを体質改善から治せる可能性がある。T1、T2は互いに相手を減らし、勢力争いをしている。つまり、増えすぎたT2を減らすには、T1を増やせばよい。
 赤ちゃんT細胞は、はじめはT1になるか、T2になるか決まっていない。樹状細胞は菌の遺伝子(DNA)や菌の細胞膜を関知すると、赤ちゃんT細胞をT1細胞へと変化させる。菌そのものは生きている必要はない。また、効果に差があるだろうが、どんな菌でもかまわないようである。現在、「菌の成分を身体にいれて、アレルギー体質を改善する治療法」が臨床試験中です。数年以内に新しい治療方法として登場することになるだろうとのことである。
現在可能な「T1 細胞を増やす方法」には、「発酵食品」、「漢方薬」がある。


大学生の皆さんに以下の発酵食品をたべてもらい、T1、T2の割合の変動を調べた結果がしたの表である。
大学生がどれか1つの発酵食品を2週間食べ続けた結果
  納豆 ぬかづけ ヨーグルト
T1 6%増 11%増 14%増
T2 5%減 6%増 2%減

期間は2週間と短く、対象も片寄っており、科学的には十分な研究とは言えませんが、発酵食品によりT1増加の傾向はあるようである。発酵食は腸内細菌を健康にし、アレルギーになりにくい体質にする可能性があるとして、注目され始めている。

◎T1細胞を増やす作用のある漢方薬がある!
*梔子柏皮湯(ししはくひとう)、十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)はT1を増やす効果が認められている。ただし、漢方薬は体力や症状によってその人にあわない場合がある。また、副作用も生じることがある。とくに、甘草は長期内服で、むくみや低カリウム血症が起こりやすい成分である。薬局で買うのではなく、信頼できる医療機関で診察を受けた上で漢方薬を使うことを強くお勧めする。アトピー治療の場合、漢方薬の効果は2〜4週間で現われてくる。効果がない場合は、薬が合っていない可能性がある。また、残念ながら、人によってはどんな漢方薬を使っても効果がでない場合がある。
梔子柏皮湯の成分:黄柏(おうばく)/山梔子(さんしし)/甘草(かんぞう)⇒ 効用:かゆみを抑える 。
◎ アトピーに対する漢方治療として、皮膚のかゆみ神経の成長を抑える漢方薬
* 白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)
 効用:ほてり/熱を冷ます/口の乾燥を解消する/かゆみ神経の成長を抑える
白虎加人参湯の成分:人参(にんじん)/粳米(こうべい)/甘草(かんぞう)/知母(ちも)/石膏(せっこう)
白虎加人参湯にも甘草が含まれているので、長期連用には注意が必要である。
おもな参考資料 NHKためしてガッテン

2003.08.01記