インフルエンザ/ワクチンQ&A(詳細解説)
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注意!当院は乳幼児の診察を行っていないため、乳幼児のインフルエンザの話はかなり省略しています。
公開日2002.10.01 更新日 2004.08.16  更新履歴   HOMEへ(メニューを表示)  メニューを隠す
記事はあくまでも参考に留め、治療方針は診療医師と相談してください。
インフルエンザ流行状況 各地の発生状況 、各県のABタイプ別発生状2005.02.10リンク確認

(4)【インフルエンザウイルスとは】 【インフルエンザ総目次へ】

01)インフルエンザは風邪とはどう違うのですか?
02)インフルエンザウイルスの特徴は?
03)インフルエンザウイルスの変異について?
04)インフルエンザの大流行(パンデミック)について



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Q1:インフルエンザと風邪はどう違うのですか?

A:インフルエンザは全身症状が強く、高齢者や幼児の死亡の原因にもなります。

 普通のかぜとインフルエンザでは全身に対する害の度合いが桁違いです。普通のかぜの原因は、80〜90%がウイルスで、アデノウイルス、コロナウイルス、ライノウイルスなどの毒性の弱いウイルス感染によって起こります。 風邪のウイルスは種類が多く、どのウイルスによる風邪かを診察時に診断することは困難です。 症状としては、のどが痛む、鼻水が出る、くしゃみや咳がでる程度です。重症化することはあまりありません。
 一方、インフルエンザは毎年国民の5%くらいがかかると言われています。 のどの痛みや鼻汁などの症状が見られますが、39度以上の高熱、関節痛、筋肉痛など全身症状が強いのが特徴です。 さらに、高齢者では肺炎、小児では脳症などを併発し、致命的になることがあります。また、感染力が強いのも特徴です。 インフルエンザが流行すると、65歳以上の高齢者の死亡率がふだんより高くなります。大流行になると平均寿命にまで影響を与えることがあります。大人の場合はB型よりA型の方が重症となりやすいと言われています。 ローマ時代の人々は、悪性の風邪は流れ星やすい星に影響されると思い、「影響」を意味する「influenza(イタリア語)」がそのまま病名としました。


インフルエンザの年齢別罹患率と死亡率

 インフルエンザにかかる人数では小学生の年齢層が大変多く、高齢者の割合は多くありません。しかし、高齢者では肺炎などの重症合併症が多く、死亡率は非常に高くなります。 その結果、インフルエンザの死亡者は、幼児でやや多い以外はほとんどが高齢者です。 60〜65歳以上では年齢とともに死亡率が急増します(グラフ:インフルエンザ情報サービス)。 また高齢者でなくとも合併疾患があると死亡率は高くなります。
  これらはインフルエンザの診断が難しかった頃の資料ですので実際の死亡者数は図の人数よりはるかに多いと考えられます。この点は注意下さい。

 



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Q2:インフルエンザウイルスの特徴は?

A:何種類もの亜型があり、原則的に亜型の数だけワクチンの種類もあります。

 インフルエンザウイルスは直径1万分の1ミリの大きさのウイルスです。風邪用のマスクは簡単に通過してしまいます。ウイルスは自分の子孫を自分自身で増やすことができませんが、生きた細胞の中でその細胞の仕組みを利用して、自分を複製します。
  インフルエンザウイルスは、鼻やのど粘膜から侵入し、その中で増殖して、血液を介して全身に広がります。このウイルスの表面には赤血球凝集素(HA)とノイラミニダーゼ(NA)という糖蛋白があります。 A型では、HAに15の亜型が、NAに9つの亜型があります。これらの組み合わせの数だけ、インフルエンザウイルスの亜型がありえます。そして各々にあったワクチンが必要となります。
  A型は数年から数十年単位で流行が見られますが、突然別の亜型にとって代わることがあります。これを大変異といいます。 同一の亜型内でもわずかな変化が起こり続けます。これを小変異といいます。 ウイルスの変化が大きいほど、以前A型インフルエンザになった人でも、再び別のA型インフルエンザになりやすくなります。また、B型はヒトに感染し、A型と同様に流行を起こします。
  C型もヒトに感染しますが、大きな流行は起こしません。

 


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Q3:インフルエンザウイルスの変異について?

A:過去においてA型はマイナーチェンジを数年から数十年続け、突然フルモデルチェンジの新型を出しています。 
保存しているワクチン候補株
(2002.11.28朝日新聞から)
  N1 N2 N3 N4 N5 N6 N7 N8 N9
H1
H2
H3
H4
H5
H6
H7
H8
H9
H10
H11
H12
H13
H14
H15
  ●は保存済み ○は非保存の組み合わせ

 インフルエンザウイルスのうち流行するのはA型とB型です。同じA型でも小変異を繰り返し、毎年のようにA型インフルエンザになることもあります。 このようにA型はマイナーチェンジを数年から数十年続けますが、突然大きくその姿を変えてフルモデルチェンジし、新型が登場してきました。

 1918年から39年間スペイン型が続き、1957年から11年間はアジア型が流行、1968年からは香港型が現われ、1977年からはこれにソ連型が加わりました。 しかしすでに香港型が30年、ソ連型が20年連続していおり、いつ新型に置き換わってもおかしくない状況です。 新型インフルエンザが現われば、多くのヒトがインフルエンザにかかり、その被害が甚大であると予測されます。

 最近の新型インフルエンザウイルスの報告として、1997年に香港でトリインフルエンザ(株種H5N1)が報告され、18人が罹患し、6人が死亡しました(香港のみ)。人から人への伝染はありませんでした。また、1999年香港では新型のトリインフルエンザ (株種H9N2、香港で2人が罹患、死亡0人)が報告されています。

 現在、インフルエンザはその表面にある抗原の組み合わせから、理論上15×9=135種類のウイルスがありえます。現在、ワクチン製造用に保存されているものは、その一部で右の表の通りです。

参考:2002.11.28 朝日新聞記事から

 

 



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Q4:インフルエンザの世界的大流行(パンデミック)について

A:インフルエンザの世界的大流行は、20世紀に4回あります。

 インフルエンザは定期的に大変異を起こし、その都度世界的な大流行を起こしています。「流行が短期間に世界的に拡大し、多数の人々が年齢を問わず感染する状態」をパンデミックと呼んでいます。20世紀には4回のインフルエンザの大流行(パンデミック)がありました。 パンデミックをおこすのはA型です。2002年現在、ウイルスの大変異がおきて、大流行が生じても不思議ではないといわれています。

 もし、全くの新型が流行すれば、日本全体で3200万人が罹患すると推定されています。これに対して、どんな新型のインフルエンザウイルスにも有効なワクチンの研究が行われていますが、まだ成功していません。