トピックス(役立つ医学情報-循環器以外編)】 
公開日2004.11.08 更新日2004.11.18  HOMEへ(メニューを表示)  メニューを隠す  
このページは、当院が興味を惹かれた医学情報(必ずしも最新ではありません)を紹介します。
このホームページの記事はあくまでも参考に留め、治療方針は診療医師と相談して決めてください。
36)【医療】注射用抗菌薬〔抗生物質)のアレルギー皮内テストが廃止になった。 2004.11.18記 
34)【医療】「患者様」と呼ぶのは変だ。 2004.11.08記

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     【循環器】


(36)注射用抗菌薬〔抗生物質)のアレルギー皮内テストが推奨からはずされた。

まとめ:注射用抗菌薬の静注前の皮内テストは、重症アレルギー反応(アナフィラキシーショック)の予知にあまり役立たないばかりでなく、偽陽性も多いため、厚生労働省は皮内反応を推奨から削除した。 
 
●もともと皮内反応の有用性に疑問をもつ医師が多かった

 これまで多くの医師は、「皮内反応を行っていれば、アレルギー反応がいくらか予知できる。しないよりもした方がよいであろう」と漠然と考えていた。しかし、2004年9月29日の厚生労働省の指示により、注射用抗菌薬の説明書(添付書類)が改訂されて、皮内反応の推奨が削除された。
(1)抗菌薬静注後に生じることがある重症アレルギー反応(アナフィラキシー・ショック)の予知に皮内反応が役立つという研究結果はない。
(2)真の陽性※に比べて、間違いの陽性(偽陽性※)が圧倒的に多い。
(3)もともと皮内反応はβラクタム系(ペニシリン系、セファム系など)注射薬に混入した不純物が原因となるアレルギー反応を予知する目的で設定された。製造技術が発達した現在では、不純物によるアレルギー反応は考える必要はない。
以上の3つがその理由である。
●今後の対策方針
 今後は、「しっかりと病歴をとり」、「静注直後から終了まで観察する」となった。ただし、医師が注射の最初から最後まで付き添う必要はない。「医師の指導下で注意する」ということである。
 また、 皮内反応は禁止になったのではなく、場合によっては行った方がよいと思われる。日本化学療法学会の「抗菌薬投与に関連するアナフィラキシー対策ガイドライン http://www.chemotherapy.or.jp/」では、
(1)抗菌薬にショックの既往がある患者に系統が異なる抗菌薬を投与する場合、
(2)抗菌薬にショック以外の過敏症の既往がある場合、

以上の2つの場合は皮膚反応陰性を確認した上で、慎重投与を行うとされている。

主な参考資料:
1) 日経メディカル2004.12 P35の記事をもとに、より平易な文章とした。
2004.12.18記 2004.12.18記
※真の陽性=皮内テスト陽性で、本当に薬物アレルギーがある場合。※偽陽性=皮内テストは陽性だが、実際は薬物アレルギーがない場合


               【医療】            トピックスの目次へ   次へ  前へ 


(34)「患者様」と呼ぶのは変だ。

まとめ:「患者様」の呼称は、勘違いから始まったらしい。日本語としても変で、違和感がある人も多い。「●●さん」に戻す医療機関も出てきている。医療機関としては、呼称よりも待遇改善のほうが、遙かに大事ではないか。

以下は内容を一部省略した抜粋です。 
 

●日本語として変、現場では使用に違和感「うわべだけ」と手厳しい意見も
 現在、多くの医療機関で、「患者様」という言葉が使われているが、この言葉遣いに対する反対も強い。日本文藝家協会会員の絵本作家・矢玉四郎氏は、「こちらは困っていて医者にすがりたいのに、変に敬われると違和感を覚える。」、「言葉が丁寧でも、受ける扱いがぞんざいだと、うわべだけの態度と感じてしまう。」、「そもそも『患者様』という言葉からは、『お客様』を連想してしまい、こっちは金づるではないと反発したくなる。」と手厳しい。
 NHK放送文化研究所主任研究員の柴田実氏も、「『様』は、あまりなりたくない立場に置かれている人に対して使う敬称ではない」と指摘する。「患者」は「被災者」や「けが人」と同様、仕方なくその立場に甘んじている状態である。
 また、医療機関は、患者に対して療養指導を行う立場にある。変にへりくだると、下のものが上のものに対して何かを指導するという状態になってしまう。病院の窓口や受付などでは、さほど違和感はないかもしれないが、医師が使えばやはり変である。
「患者様」は勘違いから始まった?
 「患者様」という呼称は、勘違いからはじまったとの説が有力。2001年11月に厚生労働省健康島国立病院課が、「国立病院等における医療サービスの質の向上に関する指針」を発表し、その中で「患者の呼称の際、原則として、姓(名)に『様』を付する」と指示した。これから「患者」に「様」をつけなければならないとの誤解が生じ、それが広まったという。
●やみくもに使わない方がよい
 通達以前の1995年から「患者様」の呼称を使い始めた亀田総合病院でも、「主に使っているのは窓口や事務。現場では使っていて違和感を覚える場合が多いので、医師や看護師は名前に『さん』付けして呼ぶことが多い。」と説明する。

●「患者さん」にも評判が悪い
  静岡県藤枝市の藤枝総合病院では、入院患者のアンケートで約7割が「さん」を支持し、4%が「様」を支持した。2002年に同院では患者の姓に「様」を付けて呼ぶのをやめ、「さん」に戻したという。

主な参考資料:
1) 日経メディカル2004.10 P17の記事(文:野村和博)より
2004.11.10記 2004.11.11修正