トピックス(役立つ医学情報-循環器以外編)】 
公開日2004.09.15 更新日 2004.09.15  HOMEへ(メニューを表示)  メニューを隠す  
このページは、当院が興味を惹かれた最新医学情報を紹介します。
このホームページの記事はあくまでも参考に留め、治療方針は診療医師と相談して決めてください。
31)【変形性膝関節症】膝痛にはグルコサミン・コンドロイチンを試してみるとよい。 2004.09.15記    目次へ   次へ  前へ 


     【変形性膝関節症】


31)変形性ひざ関節症の膝痛にはグルコサミン・コンドロイチンを試してみるとよい。

まとめ:変形性膝関節症による膝痛にグルコサミン・コンドロイチンが有効なことが多い。
【変形性ひざ関節症とは】
 関節を形成する骨は軟骨という組織に被われ、座布団のように衝撃を減らし、また関節を滑りやすくしている。しかし、加齢とともに徐々に軟骨がすり減ってくると膝の痛みが起こりやすい。これが変形性ひざ関節症である。中高年の男女におこるが、女性に多い。症状は、『ひざがつっぱる』、『正座ができない』から、やがて『ひざの痛み』が起こり、最終的に関節が硬く動かせなくなり、歩行困難となる。
【変形性ひざ関節症の治療と対策】
 変形性関節症の治療には、抗炎症薬、鎮痛剤などが使われているが、これは病気の進行を止める治療法ではない。進行すると手術しかない。しかし、手術でも満足ゆく結果が得られる可能性は高くない。現状では多くの場合、変形性ひざ関節症の根本的な治療法は、病院や診療所に行っても見つからない。
  一方、変形性関節症や関節炎に対する「サプリメント」または「健康食品」として、グルコサミン、コンドロイチン、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、ショウガエキス、デビルスクローなどが市販されている。これらの多くは科学的根拠に欠けており、効果はあまり期待できない。しかし、グルコサミンとコンドロイチンについては、医師も認める研究結果が数多く発表され、その作用機序についても科学的に解明されている。
  当院でもグルコサミン&コンドロイチンを100名以上の人が試しに飲んで、約6割の方のひざの痛みが軽減した。試験第一号は当院の院長とその母親である。両者とも著効し、短期的な副作用の心配はないとの米国発の報告を知り、広く患者さんに勧めたのが、当院で汎用するはじまりである。
【グルコサミンとコンドロイチンとは】
  グルコサミンはブドウ糖にアミノ基が結合した分子量約200の低分子物質である。骨・軟骨・皮膚・つめ・毛髪の組織を形成するムコ多糖類の一種で、軟骨をつくるために必要な成分の産出を促し、軟骨の形成を促進するほか、ヒアルロン酸やグルコサミノグリカンの成分にもなる。元来グルコサミンを合成する力を人間は持っているが、加齢とともにこの力が衰えてくる。そこでグルコサミンを補い、軟骨の細胞を刺激し、より多くの水分を軟骨内に保つことを促すようにするとよい。またグルコサミンは軟骨代謝をコントロールし、軟骨の老化も予防する。 また、軟骨破壊に働く蛋白分解酵素(マトリックスメタロプロテアーゼ)や、炎症や痛みを引き起こすプロスタグランジンE2の産生を抑制する作用も確認されている。
  コンドロイチンは体内に存在する成分の一種、軟骨を破壊する酵素を抑制する。コンドロイチンはガラクトサミンとグルクロン酸の二糖の繰り返しによる巨大分子であり、関節軟骨の弾力性・耐久性を改善する働きがある。コンドロイチンも年齢とともに減少する。
  このように、グルコサミンとコンドロイチンは、軟骨を保護し、変形性関節症の進行を抑え、プロスタグランジンE2を抑制することによって鎮痛効果を発揮する。 グルコサミンとコンドロイチンを一緒にとることによってそれぞれの効き目はさらに増すと言われている。
【変形性関節症に対するグルコサミン・コンドロイチンの臨床効果】
  変形性関節症に対するグルコサミンの使用は、ヨーロッパを中心に約30年前から行われていたが、1997年に出版された健康書「THe Arthritis Cure1)」をきっかけに、全世界で注目を浴びることになった。後に臨床治験の報告も相次ぎ、Lancetに発表されたグルコサミン治療の長期成績では、プラセボに比べて症状が改善するだけでなく、関節の磨耗も予防できることが報告された2)。また、過去の報告を網羅して分析したメタアナリシスでもグルコサミンとコンドロイチンの有効性が示された3)。
  イタリアではすでに医薬品として承認されている。米国ではひざの治療薬として一般化している。
日本での報告では、外来通院中の変形性膝関節症患者に市販のグルコサミン含有サプリメントを3カ月にわたって投与したところ、痛みを中心とした臨床症状が緩和した4)。
■ 高齢者にも有効 、効果発現はゆっくり■
 グルコサミンとコンドロイチンは、高齢者でも有効である。ただし、変形の強い膝関節症では効果が低いようだ。効果発現は緩やかで、こわばりや痛みが解消するまでの要する期間は約2週間から1ヶ月である。ただし、2カ月以上経ってから効き始めた例は当院ではなかった。進行した変形性関節症の強い痛みには効果が薄い。
■ グルコサミンとコンドロイチンの合剤■
  グルコサミンとコンドロイチンの合剤がよいとの意見があるが、単剤でも十分効果がみられる。グルコサミンのほうが効果を証明した文献が多い。

【副作用】
 グルコサミン、コンドロイチンの一日服用量は経験的にそれぞれ1500mg、1200mgであり、この量では重篤な副作用は現れない。胃部不快感や腹部膨満感を訴える場合がある。また、太るとの訴えも当院では数名いた。かなり大量に摂取すると動脈硬化や糖代謝異常を来す可能性も指摘されている。2000年、米国NIH(国立衛生研究所)は大規模な臨床研究を始めた。短期的な副作用は問題ないことが、今までの経過で報告されている。

■ 当院の使用経験から ■
 なお、当院の患者約100人の経験では、約60%でよくなった。副作用としては、『やや太った』、『顔が太ってきた』という人が、10人に1人くらいあった。『グルコサミン&コンドロイチン』は、軽症の人は半年間続け、すっかりよくなってきたら、量を1/2〜1/3に減らしてもひざの痛みは悪化しないことが多いようである。摂取量を減らして、痛みが再発すれば、また内服を再開すればよいと考えている。

【最後に】
- 変形性膝関節症対策に、肥満、運動不足の改善とグルコサミン・コンドロイチンの内服を -

  『肥満』はひざに負担を増加させ、変形性ひざ関節症を悪化させる。運動不足も『筋力の衰え』を引き起こし、症状を悪化させる。病院で処方される鎮痛剤は一時的に痛みをとるだけで、病気の進行を止め、症状を改善することができない。
 グルコサミンは、本来なら、日本でも保険薬剤として認められてもよいほどの臨床効果のある代物です。アメリカでは、変形性膝関節症で膝が痛いと言えば、整形外科で行うリハビリ治療や処方される鎮痛剤を飲むよりは、グルコサミン&コンドロイチンを試すのが常識になっている。なお、製品は普通に薬局で買うと一ヶ月分で7000-8000円はするが、安い入手先を選べば、その半額で手に入れることができる。
参考資料
●変形性関節症に対するグルコサミン・コンドロイチンの効果、聖マリアンナ医大難病治療研究センター生体制御部門講師 中村 洋 日本医事新報2004.09.11
 文中の紹介文献
  1 ) Theodosakis J, Adderly B, Fox B : The Arthritis Cure, St Martin's Press. New York, 1997.
  2 ) Reginster JY, Deroisy R, Rovati LC, et al. : Lancet 357 : 251, 2001.
  3 ) McAlindon TE, LaValley MP, Felson DT : JAMA 283 : 1469, 2000.
  4) 中村 洋: MB Orthop 16 : 29, 2003 .
  5) Nakamura H. Shibakawa A, Tanaka M, et al. : Clin Exp Rheumatol 22 : 293, 2004.
●日経ヘルス2000.1月号p80
●日経メディカル2000.8月号
2004.09.15記