トピックス(役立つ医学情報-循環器以外編No.10)】 
公開日2005.10.26 更新日2005.11.18  HOMEへ(メニューを表示)  メニューを隠す  
このページは、当院が興味を惹かれた医学情報(必ずしも最新ではありません)を紹介します。
このホームページの記事はあくまでも参考に留め、治療方針は診療医師と相談して決めてください。

66)【皮膚】男性型脱毛症に有効性の高い経口薬が発売開始となる。  2005.11.18記
65)【漢方薬】麻黄湯をタミフルと併用すると症状のある日数が短くなる。 2005.11.16記
63)【皮膚】浅い切り傷、かすり傷、軽症の火傷には湿潤療法がよい。   2005.10.26記
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     【漢方】

(66)男性型脱毛症に有効性の高い経口薬が発売開始となる。

まとめ:フィナステリドは従来の育毛剤に比べて、男性型脱毛症に有効性のとても高い経口薬である。さらに効果を上げるためには、リアップ(ミノキシジル)と併用すると良いようである。
 
 フィナステリド(米メルク社)は男性型脱毛症の治療に使える経口内服の発毛剤である。フィナステリドの特徴は、既存の発毛剤よりずっと高いことである。これまで、個人輸入で一部の人が使っていたが、2005年12月頃に日本でも発売される。
【作用機序】
 フィナステリドは、テストステロン(男性ホルモン)をジヒドロテストステロン(DHT)に変換する「5α-還元酵素(II型)」を阻害する薬剤である。DHTは毛母細胞の成長を抑制し、髪が太く成長するのを妨げて脱毛を引き起こす。フィナステリドは、そのDHTの生成を抑えることにより、男性型脱毛症の治療に効果がある。
【効果】
  東京女子医大皮膚科教授の川島 眞氏は、「フィナステリドは、市販の育毛剤を市場から駆逐してしまう可能性さえあるほど有効性が高い」と語る。服用1年後の評価で「髪の毛が増えた」と判断された患者の割合が、フィナステリド1mg投与群で58%、プラセボ(※偽薬)では6%だった。すでに、フィナステリドの効果は外用薬のミノキシジル(商品名リアップ)よりも上だとの評判である。
  国内で1万人以上に処方経験がある城西クリニック(東京都新宿区)院長の小林一伝氏は、「フィナステリドの方が圧倒的に効き目が強い。」と言う。海外の治験でも、リアップより優れた効果を発揮したと報告されている。インドでの試験では、1年間の使用で「軽度改善」以上になったのが、ミノキシジル(2%外用:日本の製品の2倍の濃度)群は41.7%、フィナステリド(1mg内服)群は86.7%だった。
  また、ミノキシジルとの併用で、より効果が高まることも報告されている。小林氏は、「海外では両者を併用するのが標準的。当院でもほとんどの患者に併用している」という。
【副作用】
  一方、副作用については、5.0%の患者で胃部不快感や性機能に関連するもの(2.9%)などが報告されているが、プラセボ(偽薬)と比較して統計的に有意差はなかった。川島氏は「重大な副作用はなく、性機能も含めて安全性は高い」と強調する。ただし、フィナステリドは医師の処方せんが必要となる見込みであるため医師の診療が必要となる。バイアグラと同様に生活改善薬であるため保険は適用されない。販売価格は、医療機関や薬局が決めることになる。個人輸入で入手できる価格(1ヵ月分6000円前後)が目安となるだろうという話である。
※プラセボ=偽薬=見かけは本当の薬と同じだが、薬効作用が全くない製剤。つまり、効果も副作用もほとんど生じない製剤。

参考
日経メディカル2005.9月号
2005.11.18記  200511.18修正


【漢方薬】            トピックスの目次  次へ  前へ 

(65)麻黄湯をタミフルと併用すると症状のある日数が短くなる。

まとめ:麻黄湯をタミフルと併用するとタミフル単独よりも、頭痛と全身倦怠感の症状持続日数が短縮された。
 
この内容は「インフルエンザの追加情報-2」に移動しました。
2005.11.16記  200511.16修正


【皮膚】            トピックスの目次  次へ  前へ 

(63)浅い切り傷・かすり傷、軽症の火傷には湿潤療法がよい。

まとめ:小さな傷は「消毒し、乾燥させる従来の治療法」よりも、「よく洗った後で、消毒薬やクリームを使わずに、『BAND-AIDキズパワーパッド』で覆う」とよい。
 個別商品の宣伝になるのでやや気が引けるが、知らない人が多いので紹介する。
  一般に、「傷は乾かすよりもよく洗った後に傷を覆って、傷口に出てくる体液を保持した方が、細菌の増殖を抑え、傷を治す細胞増殖因子を保持するので好ましい。これにより傷の痛みがなくなり傷が早く、しかもきれいに治る」という。この目的で開発された傷を覆う医療用具(ハイドロコロイドドレッシング材)は、1987年に褥創などの大きな皮膚損傷に対して、保険適応となった。しかし、かすり傷、小さな火傷程度の皮膚損傷には今も健康保険の適応はない。
 ハイドロコロイドドレッシング材は柔い、少し厚みのある板状構造物である。傷の大きさより少し大きいものを貼り付けることで傷から出てくる浸出液をため込み、人工的な水疱(すいほう)を作り、傷を覆う。一般家庭向けには、「BAND-AIDキズパワーパッド(750円、普通サイズ10枚入り、大きめサイズ6枚入り」(johnson & johnson) が発売されている。

【キズパワーパッド】 の解説
【特徴】
(1)水やバイ菌の侵入を防ぐ。
(2)体液を吸収・保持し、やわらかいゼリー状にし、傷口を乾燥させずに適度な湿潤環境を維持する。
(3)傷を「3倍早く治す」。
    人為的につくった傷に対しての臨床試験結果である。ただし、治癒にかかる日数はキズの種類、程度、個人差によって異なる。
(4)痛みが少なく、傷あとが残りにくい。
   乾燥による神経への刺激をおさえ、その上、神経への刺激となる異物の侵入も防ぐ。
(5)貼り替えがいらない。
  最大5日間まで貼ったままでよい。むしろ、できるだけ貼ったまま張り替えないほうがよい。ただし、密閉できなくなったら、交換する。
【適応症】
  切り傷、すり傷、浅いさし傷、かき傷、靴ずれ、軽度のやけど
【使用が好ましくないもの】
 ・あきらかに細菌感染がある傷
    傷口の周りが赤くなっていたり、膿を持っていたり、熱や腫れ等の異常が見られる傷
 ・ 深いさし傷
 ・ 筋肉や骨・腱が見えるような深い傷
 ・すでにかさぶたがある場合

    はがす時にキズパワーパッドがかさぶたにくっつくなどして、再び傷つける恐れがある。

【使用時の注意】
(1)傷の中の汚れを水道水でしっかり洗い流す。
(2)キズパッドで密閉するときは消毒はせず、軟膏も併用しない。
(3)最大5日間貼り替えずに使う。料理・水仕事、プール、お風呂も貼ったまま。液が漏れたり密閉が無くなったら交換する。
 
できるだけ長い間、貼ったままにした方が、傷は早く治る。一枚で、最大5日間貼ったままにできる。ただし、端がはがれたり、傷口に出てくる体液(滲出液)が多すぎて白い膨らみが製品の端まで達したりしたときには、傷口を密閉することができなくなるので、新しいものに貼りかえる。
  キズパワーパッドは、貼ったままで料理・水仕事してよいプールやお風呂にも貼ったままでよい。ただし、端がはがれると、はがれた部分から水分を吸収し、パッドがふやけてしまい粘着力が落ちてしまう。はがれたら、新しいものに取りかえる。
(4)いつまでもたってもズキズキ痛く、赤くはれている場合や傷の治りが悪い場合は、使用を直ちに止めて、 医師の診療を受ける。
(5)有効期限(使用期限)を過ぎたものは使わない

 メーカー側の推奨期間は製造から3年。
(6) キズの大きさに合わせて切って使わない。 
  小さい切り傷に対して、傷の大きさに合わせて切ることは勧められない。
 切ってしまうと、切断面で素材がむき出しになって、防水・防菌の性能を十分に発揮できない。また、切断面から外部の水分を過剰に吸収し、パッドがふやけ過ぎてしまう。
(7)貼っている時に、傷口やそのまわりがかゆくなったら、医師や薬剤師に相談
 軽度のかゆみは通常、問題はありませんが、ズキズキするような痛みをともなっている場合は、細菌感染の可能性があるので、医師または薬剤師に相談する。
(8)張り替え時の注意点。
 キズパワーパッドは、正常な皮膚の部分にはしっかり粘着していても、傷口につきにくくなっているのではがしやすい。ただし、再生されたばかりの表皮はとてもデリケートなものなので、キズパワーパッドは、ゆっくりとはがす。はがれにくい場合は温水につけるなどして少しパッドを温めるとよい。綿球やガーゼなどで傷口をふき取ると、新しく再生した表皮組織が損なわれ、かえってよくない。水道水または生理食塩水で洗浄のみでよい。もし、再生した皮膚がはがれた場合は、傷口を洗浄して、再び新しいキズパワーパッドを貼る。
 はがしたとき、ゼリー状のものが傷口についていても、透明もしくはグレー色で、臭いもない場合は、ハイドロコロイド素材が傷口に出てくる体液(滲出液)を吸収したものである。水道水または生理食塩水で軽く洗い流して、新しいキズパワーパッドを貼る。
  膿の場合は、淡黄色に色がにごっていて、粘りが強くドロッした感じで、いやな臭いがする。また、傷口のまわりが赤く腫れる。この場合には、使用を中止して医師の診療を受けること。
【その他】
・キズ口に潤いを保つとジュクジュクしてバイ菌が発生しやすくなるのでは? 汗等が感染の原因にならないの?

 汚れのひどい場合や感染のある場合を除き、傷口を十分に洗浄してあれば、キズパワーパッドを使った方が救急ばんそうこうやガーゼ等よりも感染率が低い。また、正しく貼られていれば、汗では感染の原因にならない。ただし、傷口にゴミなどの異物が残っていたりすると、感染や化膿につながる。貼る前にかならず、傷口を十分に洗浄して、異物を洗い流しておくことが重要。

参考
・キズパワーパッドの解説: http://www.jnj.co.jp/consumer/bandaid/products/medicaltools/
キズパワーパッドのQ&A:http://www.jnj.co.jp/consumer/bandaid/products/medicaltools/q_a_top.html

2005.10.26記  200511.04修正