【トピックス(役立つ医学情報-循環器編No.10)】
公開日2005.10.26 更新日 2005.10.26 HOMEへ(メニューを表示) メニューを隠す
このページは、当院が興味を惹かれた医学情報(必ずしも最新ではありません)を紹介します。
このホームページの記事はあくまでも参考に留め、治療方針は診療医師と相談して決めてください。
64)【心臓】以外と便利な携帯型イベント心電計。 2005.10.26記
まとめ:利用の仕方を工夫すると、いろいろな状況で使えて便利。
当サイトでは宣伝目的で商品や薬剤を紹介していない。当サイトの訪問者の参考となると考えた場合のみ紹介している。
最近、イベント心電計と呼ばれる手のひらサイズのメモリー型小心電計が小さなブームとなっている。通常、イベント心電計は自覚症状がある時に胸部に当ててボタンを押して記録(非ループ式)する。家庭用心電計として設計されたものだが、以外と外来診療で便利である。
イベント心電計は発作時の短時間記録という単純な機能から、1960年代にはすでに臨床応用が開始されている。しかし、あまり臨床の場で利用されることはなかった。一方、ホルター心電図は長時間記録(24時間)・短時間解析を目指して技術改善が行われ、保険適応もあるので広く普及した。
最近の携帯型イベント心電計は小型化、軽量化が進んだ。このことも普及の一因となっている。 また、電話回線を使った電送システムを使い、緊急時の迅速診断や遠隔診断も一部では行われるようになった。
発作がほとんど毎日起こるのであれば、イベント心電計よりも24時間ホルター心電計のほうが詳細な情報が得られる。しかし、月に数回しかおこらない低頻度の発作の場合は、非ループ式携帯型イベント心電計のほうが発作を捕らえられる可能性が高いので、使い分けが必要だ。
なお、現在国内で市販されている携帯型イベント心電計は数種類あり、代表的ものを以下の一覧表で紹介する。
市販されている携帯型イベント心電計
|
||||||
(1)
|
(2)
|
(3)
|
(4)
|
(5)
|
(6)
|
|
機種名 | ||||||
制作販売 |
カードガード
ジャパン |
パラマテック
|
クリニカル
サプライ |
オムロン
ヘルスケア |
日本光電
|
カードガード
ジャパン |
記録方式 |
体表式
(胸部) |
体表式
(手掌・胸部) |
体表式
(胸部) |
体表式
(手掌・胸部) |
体表式
(手掌・胸部) |
体表式
(胸部) |
非ループ式※
|
非ループ式
|
非ループ式
|
非ループ式
|
非ループ式
|
ループ式※※
|
|
記録時間 |
32秒×6回
|
30秒×12回
|
毎回自動送信
|
SDカードに記録
|
30秒×4回
|
前60秒後
27秒×6回 |
重量 |
約50g
|
約120g
|
約110g
|
約130g
|
約120g
|
約35g
|
出力方式 |
電話電送
|
PC出力
|
PHS自動
|
PC出力送信
|
電話電送
|
電話電送
|
※非ループ式は患者自身が心電計を胸部または手掌に当てて、スイッチを入れて記録を開始する。 ※※ループ式は常に電極を装着した状態で、スイッチを押すと数十秒さかのぼって記録する。 |
HCG-801:オムロンヘルスケア(当院で撮影)
|
【当院での実際の利用】
2005年8月から使用している私のところでの利用方法を説明する。
(1)約1週間貸し出しして発作時に記録してもらう。
異型狭心症が疑われる患者さんでは、24時間ホルター心電図検査を行うが、はっきりと発作をとらえることができない場合などに、携帯型イベント心電計を貸し出す。30秒間×5回の記録なので解析にほとんど時間がかからない。現在は無料で貸し出している。
(2)外来診療時に、不整脈の簡単なチェック、心房細動の心拍数のチェック
不整脈を認めた時、本人が脈拍の異常を訴えた時、脈拍数ではなく心拍数が知りたい時などに使う。
電極は一方が手のひら、もう一方の電極が患者の胸にあてるのが基本。また、振幅は小さくなるが、左右の手のひらに電極を当てる方法も簡単でよく使う。30秒間記録するが、もっぱら印刷することはない。発作性心房細動なのか、洞性頻拍なのか、上室性期外収縮なのか、心室性期外収縮なのか、ぺースメーカー植え込み患者では、ぺースメーカーの作動状況も簡単にわかる。わざわざ心電図検査をしなくてもすぐにわかるので便利である。
(3)訪問診療先で不整脈のチェック
訪問診療または往診先で不整脈を認めた場合、簡単な心電図チェックができる。また、不完全ではあるが 左乳房下に電極を当てると心電図のV4またはV5相当の誘導となり、またミゾオチやそけい部(太ももの付け根)に電極をあてるとII,III,aVF相当の誘導となり、それぞれ前壁中隔心筋梗塞、下壁心筋梗塞のST-T変化をとらえることができる可能性がある。ただし、実際にこのようにして診断した急性心筋梗塞の実例はまだない。
参考資料
出典:日本医事新報2005年10月8日 著者:加藤 貴雄(日本医科大学内科)
2005.10.26記 2005.11.04修正