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公開日2007.04.18 更新日2011.03.07  HOMEへ  メニューを隠す  前へ 次へ
 このツールは心筋梗塞予防、脳卒中予防、高脂血症の治療にあたる医師向けに作成したものです。結果の解釈には十分な医学知識が必要ですので、十分な知識を持った医師と相談下さい。ツールの利用により生じた、いかなる結果に対しても当院は責任を負いません。


欧米では米国 Framingham Studyに基づく「冠動脈10年リスク評価ツール」を利用して、心筋梗塞リスクを評価することができる。冠動脈疾患の予防の参考となる。一方、日本人での類似研究として、約5千人を6年間追跡調査したJ-LIT(J-LIT チャート)というものがあるが、対象者には心筋梗塞が多発する家族性高脂血症患者が多数含まれており、しかも全員が高脂血症治療薬を内服中なので、一般の人にこの資料を適応することはできない。
 仕方がないので、米国白人向けの「冠動脈10年リスク評価ツール」や日本人の発症率を米国人の1/3と仮定した「冠動脈10年リスクから治療効率(NNT)を計算するツール」の利用を勧めている。
 2006年10月の日本循環器学会誌Circulation Journal に発表されたNIPPON DATA80は、日本人の一集団を19年間追跡調査し、死亡統計から心血管疾患(脳卒中・冠動脈疾患など)による死亡リスク一覧表を発表した。ただし、危険因子として取り上げられているのは、性別、年齢、喫煙習慣の有無、糖尿病の有無(非空腹時血糖<200mg/dlか200以上か)、血圧、総コレステロール値である。重要な危険因子HDLコレステロール値は扱われていない。
 このリスクチャートの大きな問題点は、1)死亡率であり、罹患率(りかんりつ:病気の発生率)ではないので、疾患発症の実態がわかりにくい、2)HDLコレステロール値が考慮されていない、3)高血圧の治療の有無が考慮されていないなどの大きな問題点がある。しかし、日本人での信頼できる心血管疾患リスク評価資料が全くない現状においては、NIPPON DATA80の心血管リスクチャートの利用はある程度意義のあるものと思う。特に、「意味のない総コレステロール値高値による薬物療法」を牽制する上で役立つ。
  なお、利用にあたってはMicrosft社の表計算ソフト Excelが必要である。ソフトを開くときの警告で、マクロを有効にすると印刷ボタンが利用できる。マクロを無効にすると印刷操作が通常の手動となる。他の機能は同じ。 
●日本人の心血管10年死亡率(NIPPON DATA80チャート)から心血管疾患リスク、冠動脈疾患リスク、脳卒中リスクを評価するツール 

☆ND10yearCVrisk1.0M.xls(MACOS9.1用) (マクロあり)(非圧縮423Kbites) Download 
( マクロは無効では印刷はできませんが表示は可能です)

☆ND10yearCVrisk1.1W.xls(Windows用) (マクロあり)(ZIP圧縮368Kbites) Download
( マクロは無効では印刷はできませんが表示は可能です)
2011.03.07version1.1へ

●利用時の注意●以下の解説を必ず読んでお使い下さい。
【NIPPON DATA80とは】
 出典論文のタイトル:Risk assessment chart of death from cardiovscular disease based on a 19-year follw-up study of a Japanease representative population - NIPPON DATA 80 - Cir J.;70:1249-55,2006
 日本人の一集団を19年間追跡した調査(NIPPON DATA80)に基づく、心血管疾患による死亡リスク評価
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1980年から1999年までの19年間で、9,353人(男4,098人、30歳以上平均年齢50.3歳、女5,255人、30歳以上平均年齢50.8歳)を追跡調査して、脳卒中や冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症)による10年死亡リスク表を作成した。考慮されて危険因子は、年齢、性別、収縮期血圧、喫煙習慣、総コレステロール値、糖尿病の有無(随時血糖値200以上か未満か)の6つである。これによって、個々の日本人の心血管疾患による死亡リスクが推定可能となり、生活習慣の改善などの指導の参考となる。心血管疾患の危険因子は欧米人も日本人も同じであるとされている。しかし、日本人は脳卒中が多く、逆に冠動脈疾患が少ないという特徴がある。米国にはFramingham Studyという信頼度の高い調査研究があるが、日本にはなかった。そのため日本人での冠動脈疾患・脳血管疾患の危険因子と発症率の実態調査が望まれている。NIPPON DATA-80は、死亡統計を基にしているため、発生率ではなく、死亡率であるが、それでも利益追求団体からの直接的な資金援助がない分だけ、公正な結果が期待できる。
【このリスク表の対象となる人】
 この調査の対象となっているのは、心臓病や脳血管障害の既往のない人である。すでに心筋梗塞や脳卒中になった人、大動脈瘤や下肢の動脈硬化性疾患(閉塞性動脈硬化症)と診断された人は、それだけで心筋梗塞や脳卒中に大変なりやすいので、リスク表による評価の対象外である。
【結果についての注意(当院の意見)】
 この調査の取り上げられたリスク因子は、一世代前の種類である。有名な米国のFramingham studyと比較するとその違いがよくわかる。問題点は以下の通りである。1)危険因子として、男女とも最重要視されるべき善玉コレステロール(HDLコレステロール)値が取り上げられていない。2)悪玉コレステロール(LDLコレステロール)値ではなく、総コレステロール値を扱っている。3)高血圧は治療によって血圧値が低下しても、高血圧の治療中というだけで心血管リスクが高くなることが考慮されていない。4)また、疾患発症率は疾患死亡率よりはるかに大きな数値となる。したがって、死亡リスクが低くても将来の発症リスクが高い場合も多いと考えられ、「低死亡率=対策不要」とは言えない。将来に備えての治療が必要な場合がある。
  このツールを利用すると、「冠動脈疾患の発症リスク因子として、一般的に考えられているほど、総コレステロール値の高低は重要でない。特に女性においては280mg/dl未満の軽症、中等症の高コレステロール血症はリスク因子とは言えない。」ことがよくわかる。2007年4月改訂の高脂血症診療のガイドラインではやっと総コレステロール値が220mg/dl以上を、高脂血症と診断する項目が削除された。
 冠動脈疾患危険群の患者さんが食事、運動、禁煙などの生活習慣の見直しをする発端となり、また医師の高脂血症診療の一助として、無意味な高脂血症治療薬を処方しないように、このツールを利用していただければ幸いである。
【使用上の注意】
 このツールは、リスク評価の信頼性を保障するものではない。また、プラグラムのミスも含めて、すべての結果に対して作成者は責任を負いません。自らの判断と責任で、ご利用ください。無断の商業目的配布、利用、デザイン盗用を禁じます。
【プログラム作成】
作成者 前田敏明
参考資料:NIPPON DATA80(Cir J.2006;70:1249-55)の心血管疾患死亡リスクチャートから作成。
入力部分を便利にするために入力インターフェースでは、Visual Basic for Application for EXcel(マクロ)を利用した。ツールを開くときにマクロを有効にすると使いやすい。なお、マクロウイルスが混入しないようにこのホームページから直接ダウンロードしたものか、信頼できる筋からのコピーを使ってください。