インフルエンザ/ワクチンQ&A(詳細解説)
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注意!当院は乳幼児の診察を行っていないため、乳幼児のインフルエンザの話はかなり省略しています。
公開日2002.10.01 更新日 2005.03.08  更新履歴   HOMEへ(メニューを表示)  メニューを隠す
記事はあくまでも参考に留め、治療方針は診療医師と相談してください。
インフルエンザ流行状況 各地の発生状況各県のABタイプ別発生状2005.02.10リンク確認


(5)【症状・診断】 【インフルエンザ総目次へ】

01)インフルエンザの症状を教えてください          2002.10.01記
02)インフルエンザの合併症について教えてください     2002.10.01記
03)インフルエンザの診断方法を教えてください。       2002.10.01記
04)インフルエンザの迅速診断について教えてください    2002.10.01記
05)インフルエンザの疑いのある人すべてに迅速検査が必要か  2003.12.08記
06)インフルエンザ迅速検査はどれくらい信頼できるか     2004.01.23記
07)インフルエンザ迅速検査のこつ              2004.01.28記
08)インフルエンザの臨床診断    >>             
【インフルエンザ追加情報】 のQ7:インフルエンザの臨床診断 2005.03.08記



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Q1:インフルエンザの症状を教えてください

A:38度以上の急な高熱と悪寒、頭痛、上気道炎症状、全身倦怠感等の強い全身症状が出現します。

インフルエンザの症状自己チェック

 病状の頂点では、筋肉痛、関節痛、から咳、のどの痛み、無気力が顕著となります。
38度以上の高熱が平均2〜4日続きます。小児では半日から1日解熱したかにみえる2峰性の熱型を示す例が30〜70%に認められます。解熱後もくしゃみや鼻汁が続きます。合併症がなくとも体調が元に戻るまでには、解熱後約1週間はかかります。また小児では、腹痛、嘔吐、下痢を伴うことも少なくありません。大人ではB型よりもA型のほうが一般的に症状は強くでます。潜伏期は1日から5日(平均2〜3日間)です。症状は約1週間で軽快することがほとんどですが、肺炎などを合併することも少なくありません。
 特に、高齢者では4人に一人は肺炎になるとも言われていますので、高齢者の肺炎合併には注意が必要です。小児ではB型もA型と同程度の重症度です。
 追加参考資料:
【インフルエンザ追加情報】:Q3:成人では38度未満でもインフルエンザを疑う 2004.12.08記 、
【インフルエンザ追加情報】Q7:インフルエンザの臨床診断 2005.03.08記


普通感冒(鼻風邪)の特徴     
インフルエンザの特徴
・症状は徐々に悪化        
・鼻水など鼻炎症状が主体。    
・発熱は軽度で、全身症状は軽い
・肺炎などの合併症はすくない 
・突然の高度発熱(38.5度以上)
・高熱、筋肉痛・関節痛などの全身症状が強い
・肺炎などの重症合併症が多い
・流行は通常12月末から4月始めまで

 


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Q2:インフルエンザの合併症について教えてください

A:高齢者では肺炎、乳幼児では脳炎・脳症が危険な合併症としてあります。

 高齢者や乳幼児、肺疾患、心臓疾患、糖尿病、腎不全、免疫抑制剤による免疫低下などの人では、インフルエンザになると合併症を併発する場合が少なくありません。
インフルエンザにかかった高齢者の1/4が細菌の二次感染による肺炎になると言われています。重症の場合は死亡することも少なくありません。 少し前までは、インフルエンザは迅速かつ簡単に診断することができなかったので、インフルエンザで死亡しても病名は肺炎・敗血症・脳炎などの合併症の病名になり、インフルエンザの病名が陰に隠れてしまったと思われます。 統計の数値の約10倍の死亡数があるのではないかと推測する人もいます。

 小児では中耳炎、気管支炎、肺炎、咽頭炎、喘息発作、副鼻腔炎等の合併症が多い。 発熱が5日以上にわたるときは、耳鏡検査や胸部X線撮影を行うことをお勧めします。 熱性けいれんも多く、1歳児のインフルエンザで顕著です。けいれんが重積したり、意識障害を伴うときは、脳障害を疑わなければいけません。 年長児であっても生まれて初めてのけいれんをインフルエンザで起こすことがあります。

 その他にライ症候群、ギラン・バレー症候群、横断性脊髄炎、小脳性失調、ベル麻痺、精神異常、突然死、ALTE(Apparent life threatening event、乳幼児突発性危急事態)、ヒラメ筋や腓腹筋の筋炎、横紋筋融解症、筋炎、胸痛症、血小板減少性紫斑病、免疫性溶血性貧血などの合併症が記載されています。

 


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Q3:インフルエンザの診断方法を教えてください

A:38度以上の急な高熱と悪寒、頭痛、上気道炎症状、全身倦怠感等の強い全身症状が出現します。

 12月〜3月に前述の症状のあった場合は、インフルエンザの可能性が高いと考えられます。この時期に38度以上の発熱があれば、24時間以内に受診を勧めます。48時間以上過ぎるとインフルエンザの薬の効果が期待できません。
感染直後にインフルエンザウイルスを検出するための迅速検査が普及しています。鼻粘膜や咽頭粘膜を綿棒で擦過し、綿棒についたウイルスの有無を調べます。約10〜15分で結果がでます。
 
しかし、感染の初期はまだウイルス量が少なく、インフルエンザであるにもかかわらず、検査結果が陰性になる可能性がかなりあります。迅速検査は絶対的な診断法ではないことに注意下さい。

 【診断のポイント】

1)冬から春先にかけて毎年必ず流行するので、症状や流行状態からインフルエンザの疑いを持つこと。
2)同様の訴えの患者が急に増加する。
3)家族、保育園、学校など患者の所属する集団内での流行状況を確かめる。
4)高熱と全身症状を説明できるほどの咽頭所見に乏しいこと。
5)鼻・咽頭粘膜擦過によるインフルエンザウイルス迅速検査を参考にする(陽性率はどれも約80%以上とあるが、検査薬メーカーの報告なので本当のところは不明、多くの実施医師はこれより低いと感じている。発症24時間以内は特に低い?)。
6)「白血球数は正常範囲内か、減少する。CRPは合併症がなければあまり亢進しない」と教科書には書いてあるが、当院での経験では高低まちまち。


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Q4:インフルエンザの迅速診断について

A:鼻粘膜や咽頭粘膜のウイルスを調べますが、検出率は約80%以上です。

 2001年の秋から約15分でインフルエンザウイルスが、鼻やのどの粘膜にいるかどうかを調べることができる迅速診断キットが登場しました

おかげで日常外来でのインフルエンザの診断が格段に進歩しました。 しかし、いくつかの問題も生じています。

問題1) 診断の感度は100%ではない
 インフルエンザウイルスの増殖は、発病後2〜3日で最高に達し、その後急速に減少し、5〜7日で消失します。迅速診断キットで陽性になるには、インフルエンザウイルス量がある程度必要です。ウイルス量の少ない発病の初期は陰性になりやすくなります。これを「偽陰性」と呼んでいます。

問題2) インフルエンザではないのに陽性にでる場合がある(偽陽性)
 また、一部ではインフルエンザではないのに陽性にでる場合がある(偽陽性)ことが報告されています(インフルエンザABクイック他)。 以上から、インフルエンザ流行時期には、たとえ検査が陰性でもインフルエンザの可能性が充分あることを理解しながら、治療します。 発熱の程度や筋肉痛などの全身症状、流行の兆しや周囲に同様な症状の人がいるかどうかを参考にして、抗インフルエンザ剤を使うかどうか判断しなければなりません。 また、数少ない当院での経験ながら、インフルエンザワクチン接種を受けた人が、インフルエンザになった場合には、38度以上の発熱はあるもののその割に、元気な人が多いようです。ワクチンを受けた人の場合は、全身症状が強くなくてもインフルエンザを疑わなくてはなりません。

参考 日本医事新報2002.12.14号 高平好美(浜松・高平内科)

 



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Q5:インフルエンザの疑いのある人すべてに迅速検査が必要か?

A:流行状況や臨床症状から、インフルエンザと考えてよい症例は、迅速診断キットは不要です。
 以下はMedical Practice2003.12月号p2005(インフルエンザと肺炎の最新の実地診療)の座談会からの一部抜粋(要約)です。

 迅速診断キットは、15分もしないうちにインフルエンザA,Bの診断ができて、非常に有効です。ただ、どういう患者さんにどのように使うかということは、考えなければならないところだと思います。疑った全症例に使う必要はないと思います。
流行のピーク時であれば臨床症状のみで診断がつきますので、迅速診断キットを使う必要はありません。また。家族や同僚がすでに診断されている場合も同様です。

参考 Medical Practice2003.12月号p2017(大久保修一先生:大久保内科呼吸器科クリニック)談



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Q6:インフルエンザ迅速検査はどれくらい信頼できるか?

A:陽性と出た場合はほぼ100%インフルエンザと診断できるが、陰性の場合は注意を要する。特に大人は小児よりも陰性に出やすく、また発症初日は陰性になりやすい。

 以下はMedical ASAHI 2004.1月号p2005(インフルエンザ特集)の一部の要約です。

 迅速診断キットはインフルエンザウイルス抗原を検出する方法で、この検査で簡単、迅速、正確に診断ができるようになった。検査結果が陽性となれば、まず問題なくインフルエンザと診断してよい。しかし、検査結果が陰性の場合は、検体のウイルス量が検出できる以下の量であるのであって、インフルエンザではないと断言はできない。実際の診療においてはこのことに注意する必要がある。検査キット製造元発表の検出感度はいずれも80%以上となっているが、内科の医師の印象では過大評価ではないかという意見をよく耳にしている。
  下にまとめた表で、いままでの印象が間違いではないことがよくわかった。迅速検査キットを過信してはいけない。
メーカーの言うことを鵜呑みにしてはいけない。 しかし、迅速診断キットは、診断の方法として大変役立つ。とくに、インフルエンザの流行初期には積極的に活用したい。

●鼻腔拭い液のほうが咽頭拭い液よりも検出率が高い〔差は5%)。
●鼻腔拭い液や咽頭拭い液の採取者の手技の技術レベルも重要である。
●患者の年齢が高いと検出率が低くなる。
  大人はある程度免疫があり、インフルエンザウイルスの増殖をある程度抑えることができるために、大人のウイルス排出量は小児のよりもずっと少ないことが知られている。
●発症からの期間が短いとウイルス量が少なく、検出率が下がる。
  発症後12時間以内は、ウイルス検出率はかなり悪く、24時間以降はよい。
本文にはコメントはないが、下の表から小児では●インフルエンザBの検出感度はインフルエンザ Aより劣る可能性があるようだ。

 
迅速診断キットの成積 、調査したウイルス株A(H3N2) 、咽頭拭い液使用、 F市小児科医院グループ
発症後から検査までの時間
12時間未満
12-24時間
25-36時間
37-49時間
49時間以上
合計
(A)ウイルス分離数
8
26
7
2
0
(B)迅速キット陽性数
4
17
5
2
0
感度(B/A)
50%
65%
85%
65%
2000-2003年某病院における迅速診断キットの成積(H3N2)  下記参考資料より作成
インフルエンザA
インフルエンザB
病棟/外来
ウイルス分離数
陽性数
感度
ウイルス分離数
陽性数
感度
一般病棟
50
24
48%
0
0
0
小児科病棟
12
11
92%
2
0
ND
一般外来
102
38
37%
36
14
39%
小児科外来
34
30
88%
48
32
67%
合計
インフルエンザA
インフルエンザB
一般病棟 + 一般外来
152
62
41%
36
14
39%
小児科病棟 + 小児科外来
46
41
89%
50
32
64%

上の表から判断すると、臨床上十分に高い検出率が得られるのは「小児で発症24時間を過ぎたインフルエンザAの症例」ということができる。
逆に「大人の発症12時間以内の症例は陽性率がかなり低い(小児でも50%)」ということを念頭において診断すべきである。

 


参考 Medical ASAHI 2004.1月号 P23 西村修一(国立仙台病院臨床研究部ウイルスセンター長 第二臨床検査部長)

2004.01.22記



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Q7:インフルエンザ迅速検査のこつ

A:鼻腔ぬぐい液の採取方法では、鼻腔の最下縁に沿って、できるだけ奥まで綿棒を挿入する。

 以下は日経CME2004.1月のまとめです。

 最近は、咽頭ぬぐい液と鼻腔ぬぐい液を使ったインフルエンザ迅速診断キットが広く利用されるようになった。

 正しい手技で採取されれば、大人では両者の検査感度に大差はないという。しかし、小児では咽頭ぬぐい液は採取しにくいので、鼻腔ぬぐい液の方がうまくいく。迅速診断キットではある程度のウイルス量が必要なので、軽く粘膜をこすった程度ではウイルス量が少なく、検査が陰性になりやすい。しっかりと綿棒をこすりつけるとよい

【鼻腔ぬぐい液の採取のこつ】
●鼻腔口から耳孔を結ぶ平面を想定し、鼻腔の最下縁に沿って綿棒を挿入する。
 小児では顔や手を動かして危険なので、付き添いの人の膝の上にしっかりと子供を抱いて手を固定してもらうとともに、看護士に後ろから子供の頭部を固定する体勢をとることが重要である。綿棒の握りかたは、鉛筆の持ち方でよい。綿棒の端が手のひらに押しつけられていると頭部を動かした際に危険なので、綿棒の端が宙に浮いていることが大事。
 (当院の方法:小学生以上がほとんどなので、仰向けに寝てもらい、咽頭壁につきあたる軽い抵抗があるまで挿入する。ゆっくりと挿入すると苦痛が少ない。検査終了直後にくしゃみがでるので、片手にティシュを数枚もたせる。)
●なるべく咽頭後壁まで突きあたるように、できるだけ奥まで押し進める。
●突き当たったところで数秒おいて綿棒を引き抜く 。
 (当院の方法:この部位で綿棒をかき回している。)

鼻腔ぬぐい液の採取方法 日経CME2004.1月を模倣して描いた。


参考  日経CME2004.1月 座談会 -迅速診断キットを使いこなす- 三田村敬子(川崎市立病院小児科)、池松秀之(原土井病院臨床研究部)、山崎雅彦(座間小児科)

2004.01.28記