【トピックス(役立つ医学情報-循環器以外編No.16)】 
公開日2006.03.22 更新日2006.03.26  HOMEへ(メニューを表示)  メニューを隠す  
このページは、当院が興味を惹かれた医学情報(必ずしも最新ではありません)を紹介します。
このホームページの記事はあくまでも参考に留め、治療方針は診療医師と相談して決めてください。
83)【生活習慣病】厚生労働省は、今まで以上に運動することを推奨   2006.03.26記
82)【血液】原因不明の血小板減少がピロリ菌除菌で改善する      2006.03.22記
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     【血液】

(83)厚生労働省は、今まで以上に運動することを推奨

まとめ:厚生労働省は、生活習慣病予防のために、今まで以上運動すること推奨した。
「健康づくりのための運動基準」を改定
 
身体活動と運動強度()内はMET値※
〔図,出典=厚生労働省「健康づくりのための運動基準(2005年)強度の運動(普-身体活動・運動・体力-(案)」〕

 ※METとは、一定時間に、安静座位のときに消費されるエネルギー(率基礎代謝量)の労作によって何倍エネルギーが消費されるかを示す単位です。1MET = 3.5 cal/kg/min。年齢・性別・体重などの固体差が消去され、労作強度(運動強度)の評価方法としてよく使われています。

我が国の生活習慣病罹患患者は推計で、糖尿病740万人、その予備群880万人、高脂血症3000万人、高血圧症3100万人、その予備軍2000万人、生活習慣病による年間の死亡者数は、脳血管障害13万人、心疾患16万人、悪性新生物32万人、医療費も全体の3割を占める。そういった現状を踏まえて、厚生労働省は健康づくりのための運動所要量の基準値を17年ぶりに見直した。冠動脈疾患などの生活習慣病予防を目的に今まで以上に運動量を増やすことを推奨した。新しい身体活動量の推奨基準値は、23METs・時/週、運動量は4METs・時/週となった。
 1989年の前回の改訂当時に比べると、国民の疾病構造が大きく変化し、生活習慣病の罹患者が増大してきたこと、生活習慣病の重症化による介護問題が深刻になっていること等が、改訂の背景にある。生活習慣病予防に効果のある活動量の下限値を19-26MET'時/週と算定した。わかりやすくするため、この平均値を23METs・時/週を基準値とした。いずれの基準も、65歳以下ならば性・年齢を問わない
 3METs強度の運動(普通の歩行)ならば1日当たり約60分、日常生活のなかでは低中度の歩行もあるため、1日当たり8,000-1万歩が基準値となる。運動量の基準も同様に算定し、4METs・時/週とした。ジョギングやテニスで約35分/週、速歩で約60分/週程度の運動が基準になる。

参考
Medical Tribune 2006.3.9 p32「健康作りのための運動基準」改訂
2006.03.26記  2006.03.26修正


【血液】           トピックスの目次  次へ  前へ 

(82)原因不明の血小板減少がピロリ菌除菌で改善する

まとめ:特発性血小板減少性紫斑病という血が止まらなくなり、脳出血の危険性が起こる奇病の約半分がピロリ菌の除菌で、血小板数が増加することが最近わかってきた。
 1. 特発性血小板減少性紫斑病とは
 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)とは、明らかな基礎疾患・原因薬剤の関与なく発症し、血小板数が減少するため種々の出血症状をひき起こす病気である。血小板数は3万/μL以上なら死亡率が高まることはないというが、それ以下では脳出血など重篤な出血の危険性が高まる。人口100万人当たり11.6人の発症があると推定されている。病気の原因は今のところ不明である。血小板に対する「自己抗体」ができ、脾臓で血小板が破壊されるために、数が減ってしまうと推定されているが、なぜ「自己抗体」ができるのか、未だわかっていない。また、遺伝性は認められていない。
 推定発病または診断から6ヶ月以内に治癒する「急性型」は小児に多く、6ヶ月以上遷延する「慢性型」は成人に多い傾向にある。小児では男女同数、成人では男女比1:3と、女性に多い。 発症年齢は、小児では5歳未満がもっとも多く、次いで5〜9歳、10〜14歳の順に多くみられる。成人では20歳代後半と40歳代後半に多いようである。
【症状】
 血小板は、出血を止める重要な役割があり、数が減ると種々の程度の出血症状がみられる。
 点状や斑状の皮膚にみられる出血 、歯ぐきからの出血 、鼻血 、便に血が混じったり、黒い便が出る 、尿に血が混じって、紅茶のような色になる 、月経過多 、重症な場合は、脳出血 など。
【治療】
 血小板数が10万/μL以下を「血小板減少」と診断するが,血小板数が正常より少ないからといってすぐに治療を行う必要はない.ITPでは血小板数が3万/μL以上では死亡率は正常と同じである。一般的に血小板数は3万/μL以上,できれば5万/μL以上を維持するように努める.昭和63年度に厚生省研究班で作成された治療指針がある。副腎皮質ステロイドが使われる。手術で脾臓を摘出することもある。アザチオプリンやシクロホスファミドなどの免疫抑制剤を用いることもある。
  また、最近、保険適用外ではあるが胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因となるピロリ菌という細菌を保菌している場合、抗菌薬で除菌できれば、60-70%の患者さんで血小板数が増えるという。保険適用外ではあるが副作用が少なく安価であり有効性が高いため、早急な治療を必要としない患者にはまず第1選択として試みる価値がある。
【経過・予後】
 小児の急性型の大部分は自然に治癒し、慢性型に移行するものは10%程度である。慢性型でも約20%は副腎皮質ステロイドで治癒し、さらに摘脾で60〜70%が治癒する。それでも残りの約10〜20%は治療に抵抗性で、出血に対する厳重な注意が必要とされるが、致命的な出血を来して死亡する例はまれである。
【当院の意見】
 この4年間に血小板数が正常下限の1/4-1/2にまで減少する患者さんが数人いました。ほとんどは薬の副作用ではなく、原因不明の特発性血小板減少性紫斑病という診断されました。今回、ピロリ菌の除菌で血小板数が4倍に増加した患者さんがおられて、「血小板減少とピロリ菌」との関連がこれほど強いことを知らなかったので驚きました。私の不勉強と言えますが、私以外にも知らない先生が多いと思い、ここに掲示しました。上の文は参考資料のまとめです。

参考
1)難病情報センター
特定疾患「特発性血小板減少性紫斑病について」http://www.nanbyou.or.jp/sikkan/077.htm

2)今日の診療 Vol.15
2006.03.24記  2006.04.08修正