【トピックス(役立つ医学情報-循環器以外編No.13)】 
公開日2006.02.18 更新日2006.02.18  HOMEへ(メニューを表示)  メニューを隠す  
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75)【認知症】中年期の運動で認知症が大幅に低下    2006.02.18記

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     【認知症】

(75)中年期の運動で認知症が大幅に低下

まとめ:中年期の運動で、アルツハイマー病と認知症の発症率が約半分にまで低下することが報告された。
 Kivipelto博士ら(カロリンスカ研究所,スウェーデン・ストックホルム)は、中年期に運動をした人はしない人よりもアルツハイマー病(AD)その他の認知症発症率がきわめて低いとLancet Neurology(2005;4:705-711)に発表した。その一部はNew York Times(2005;October11)にも引用された。「定期的な運動は、特に遺伝的に認知症やADに罹患しやすい人でリスクを低下させたり発症を遅らせたりする可能性がある。こうした所見は、予防医療に幅広い意味を持つ可能性がある。」と付け加えている。
【まとめ】
  65歳以上の1,449例を対象としたコホート試験で、運動習慣を平均21年間フォローアップした。中年期に週2回以上運動を行った被験者の認知症発症率は50%低く、AD発症率は60%低かった。
【対象】
  65歳以上の東フィンランドに住む1,449例を、余暇の運動に週2回以上参加した781例を運動群、週2回未満の1,154例を非運動群とし、平均21年間フォローアップした。
【結果】
  運動レベルとのちの認知症との関連は、人口統計変数、フォローアップ期間、運動障害、中年期の血管危険因子、再検時の血管障害の病歴、APOEε4保因者状態、喫煙、飲酒、中年期のうつ症状、収入、結婚状態を調整後も有意であった。今回の最終モデルでは、非運動群と比べて運動群の認知症オッズ比は0.48と非運動群より52%低く、ADオッズ比は0.38であった。
【考察】
 早期の運動とADや認知症と関連を検討した研究のほとんどは調査期間が短いか、他の余暇活動に注目しており、運動には焦点を合わせていない。また、放射線影響研究所(広島県)臨床研究部の山田美智子副部長らがJournal of the American Geriatrics Society(2003;51:410-414)に発表した「20年間の追跡研究で、運動と認知症との関連を見出せなかった」報告に関しては、この研究が運動強度の低い動作を含めていることを問題視している。また、ADを発症するように遺伝子操作されたマウスを用いたKivipelto博士らの試験でも、ケージにトレッドミルが設置されていたマウスは、トレッドミルが設置されていない対照マウスの2倍の速度で迷路の脱出ルートを学習しただけでなく、剖検時の脳へのβアミロイドの沈着がきわめて少なかったと報告している。

参考
 medical tribune2006.2.9 号
2006.02.18記  2006.02.22修正




【認知症】           トピックスの目次  次へ  前へ 

(75)中年期の運動で認知症が大幅に低下

まとめ:中年期の運動で、アルツハイマー病と認知症の発症率が約半分にまで低下することが報告された。
 Kivipelto博士ら(カロリンスカ研究所,スウェーデン・ストックホルム)は、中年期に運動をした人はしない人よりもアルツハイマー病(AD)その他の認知症発症率がきわめて低いとLancet Neurology(2005;4:705-711)に発表した。その一部はNew York Times(2005;October11)にも引用された。「定期的な運動は、特に遺伝的に認知症やADに罹患しやすい人でリスクを低下させたり発症を遅らせたりする可能性がある。こうした所見は、予防医療に幅広い意味を持つ可能性がある。」と付け加えている。
【まとめ】
  65歳以上の1,449例を対象としたコホート試験で、運動習慣を平均21年間フォローアップした。中年期に週2回以上運動を行った被験者の認知症発症率は50%低く、AD発症率は60%低かった。
【対象】
  65歳以上の東フィンランドに住む1,449例を、余暇の運動に週2回以上参加した781例を運動群、週2回未満の1,154例を非運動群とし、平均21年間フォローアップした。
【結果】
  運動レベルとのちの認知症との関連は、人口統計変数、フォローアップ期間、運動障害、中年期の血管危険因子、再検時の血管障害の病歴、APOEε4保因者状態、喫煙、飲酒、中年期のうつ症状、収入、結婚状態を調整後も有意であった。今回の最終モデルでは、非運動群と比べて運動群の認知症オッズ比は0.48と非運動群より52%低く、ADオッズ比は0.38であった。
【考察】
 早期の運動とADや認知症と関連を検討した研究のほとんどは調査期間が短いか、他の余暇活動に注目しており、運動には焦点を合わせていない。また、放射線影響研究所(広島県)臨床研究部の山田美智子副部長らがJournal of the American Geriatrics Society(2003;51:410-414)に発表した「20年間の追跡研究で、運動と認知症との関連を見出せなかった」報告に関しては、この研究が運動強度の低い動作を含めていることを問題視している。また、ADを発症するように遺伝子操作されたマウスを用いたKivipelto博士らの試験でも、ケージにトレッドミルが設置されていたマウスは、トレッドミルが設置されていない対照マウスの2倍の速度で迷路の脱出ルートを学習しただけでなく、剖検時の脳へのβアミロイドの沈着がきわめて少なかったと報告している。

参考
 medical tribune2006.2.9 号
2006.02.18記  2006.02.22修正