心房細動の解説Q&A(詳細解説)
|
公開日 2003.01.20 更新日2007.01.30 更新履歴 HOMEへ(メニューを表示) メニューを隠す
このページの解説レベルは、医学的な予備知識がない人には難しいことをお断りしておきます。
治療方針一部には当院の考え方がはいっています。
参考にする場合の責任を当院は一切とりませんので、ご了承下さい。
01)不整脈でない正常な心臓の動きは?
02)不整脈はどんな方法で調べるのか(不整脈と心電図の関係)?
03)心房細動とはどんな病気か?
04)心房細動になるとなぜいけないのか?
05)心房細動にも種類があるか?
06)どんな人が心房細動になるのか? 類似:16)心房細動の背景にある疾患は何が多いか?
07)心房細動の原因、発作誘因は何か?
08)心房細動の心臓検査は何があるのか?
09)心房細動の治療はどうするのか?
10)心拍数(心室レート)を調節する薬剤について?
11)心房細動による脳梗塞の予防対策は?
12)ワーファリン内服中の注意点は?
13)心房細動は正常(洞調律)に戻す治療と、心房細動のまま心拍数コントロールする治療のどちらがよいのか?
14)なぜ心房細動は治りにくいのか? 2004 .4.28追加
15)頻拍誘発性心筋症とは? 2004 .4.28追加
16)心房細動の背景にある疾患は何が多いか? 2004 .5.8追加 類似:06)どんな人が心房細動になるのか?
17)心房細動患者の病歴のどこに注意が必要か? 2004 .5.8追加
18)心房細動の心臓外の検査には何があるのか? 2004 .5.8追加 参考:08)心房細動の心臓検査は何があるのか?
19)心房細動の除細動を行う人と行わない人はどう選択するのか? 2004 .5.6追加
20)心房細動の除細動の方法にはどのようなものがあるか? 2004 .5.6追加
参考資料
○1)Heart Disease:A Textbook of Cardiovascular Medicine 6th Edition
: Braunwald
◎2)心房細動治療(薬物)ガイドライン: Jpn Cir J65(supplV)2001
○3)不整脈 :medical practice 2002.vol19.no.12 2002.12.01発行
○4)不整脈への対応 :今月の治療 第10巻第7号 2002.6.20発行
○5) 国立循環器病情報サービス: http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/cvdinfo.htm
◎6) 心房細動の治療と管理:井上 博、新 博次 医学書院2004.3.1発行第1版
図1 心臓の刺激伝導系(緑) |
正常では右房と上大静脈の境にある洞結節(どうけっせつ)から心臓の筋肉を収縮させる電気信号が発生し、心臓全体に伝搬してゆく。洞結節のこの働きを歩調取り(ペースメーカー)と呼ぶ。よく聞くペースメーカーとは「人工の植え込み型ペースメーカー」のことである。通常、安静時には洞結節から1分間に50回から100回の電気信号をほぼ等間隔で発生する。運動時や興奮時などでは必要に応じて増加する。
心房や心室の筋肉自体は、この電気信号を伝える電線の役割も果たしている。とくに伝導速度の速い筋肉があり、特殊心筋または刺激伝導系と呼ばれている(図1の緑)。
電気信号は洞結節から心房全体に行き渡り、心房筋の収縮が始まる。
次に心房から心室に電気信号が伝わる経路には、房室結節(ぼうしつけっせつ)という心房と心室の電気の伝達をする中継所がある。この中継所で約0.12〜0.20秒ほど遅れて心室に電気信号を伝えることにより、心房と心室の収縮が少しずれるようになっている。
この時間のずれはとても大事である。心房の中にあった血液を心房の収縮により心室に送り出し、心室内が十分な血液で充満された時点で心室の収縮が始まるようにしているからである。心房は心室が全身に血液を送り出す働きを手伝っているのである。心房と心室の境界は電気を通さない繊維組織によって仕切られている。心房内にある房室結節と心室はヒス束という細い通路で連絡されている。この部分が傷害されて、電気信号が心室に全く伝わらなくなると、「完全房室ブロック」と呼ばれ、人工ペースメーカー植え込みの主要な病気の一つとなっている。
正常洞調律の心電図 |
A:心房の筋肉が不規則・高頻度に収縮するために、心房全体が小刻みに震えている状態である。
図2 |
心房細動は、心房自体から1分間に約350〜600の頻度で不規則な電気信号が発生し、心房全体が細かくふるえ、心房のまとまった収縮と弛緩がなくなる不整脈(下図)である。
心房細動は図2の様に、心房内の種々の場所で無秩序な電気的な旋回(リエントリー)が起こることが原因と考えられている。リエントリーとは直訳すれば「再入」、電気刺激が旋回し、再び刺激するために、一回の刺激で何度も電気的興奮を繰り返すのである。
例えれば傷ついたレコードで同じところを何度も繰り返すようなものである。その引き金として心房性期外収縮や、心房や肺静脈から発生する異常な自動能(ペースメーカー)がある。 心房と心室の電気的中継所である房室結節の伝導が正常ならば心室の動く回数は多くなり、100〜160/分の頻拍になる。
房室結節の電気の伝わりが悪くなると心室へ伝わる回数が減少して、脈が乱れはあるが心室の収縮頻度(=心拍数)は正常範囲となる。さらに房室結節の障害が強くなると、徐脈性の心房細動となる。
つまり、心房細動では房室結節の働き次第で、脈拍が多くなったり、少なくなったりするのである。
心房細動の心電図の特徴(V1誘導) |
図3 左房・左心耳の位置 |
|
胸部レントゲン写真(正面) |
●心房細動では心臓のポンプとしての働きが低下する以外にも、もう一 つ大きな問題がある。左房にはその左端に左心耳という出っ張りがある。正常な洞調律では、左心耳も収縮と弛緩を繰り返している。心房細動になると心房内の内圧が高まり、心房・心耳は拡大し、心房の収縮と弛緩がなくなるため、左房(特に左心耳)内の血液の流れに「よどみ」が生じる。
血液の流れが緩やかになるとたとえ心臓内であっても、血液の塊(血栓)が生じやすくなる。特に左心耳内の血液のよどみは高度で、血栓ができやすい場所である。
左心耳に形成された血栓は、時々流れ出し、また形成されるということを繰り返する。左房が拡大するほど、また左心耳内に血栓を認める人や左心耳内の血液のよどみが強い人ほど、脳梗塞が多いと報告されている。
高齢者では、心房細動でなくとも多発性の脳梗塞を認めるが、 心房細動の人の脳のCT検査やMR検査を行うとほとんどの人で多発性の脳梗塞を認める。脳梗塞の1/4〜1/3が心臓由来(大部分が心房細動)と言われている。さらに、一過性の心房細動は見落とされている可能性があるので、心房細動が原因となる脳梗塞は、実際にはもっと高頻度であろうと思われる。
また、心房細動に伴う脳梗塞は動脈硬化による脳梗塞よりも重症例が多いとされている。 心房細動による脳梗塞は、その原因が持続していることから、何回でも再発するため、確実な予防が必要である。
単純な心房細動(孤立性心房細動)を1とした場合の塞栓症(おもに脳梗塞)の 頻度(倍率) |
|
心房細動を合併した僧帽弁狭窄症では、年間4-6%が動脈塞栓を起こする。 心臓弁膜のない心房細動でも一過性脳虚血や脳卒中の既往があると22.5倍、糖尿病があると1.7倍、高血圧があると1.6倍、10歳高齢になる毎に 1.4倍となる。 心不全または虚血性心疾患があると3倍になる。 また、左室拡大や左房拡大があるとなりやすい。 しかし、60もしくは65歳以下の比較的若年で、心エコー検査でも異常のない人(つまり、構造的な心臓病のない人)は、塞栓症の年間発生率は 1%未満と極めてリスクが少ない。 |
|
僧帽弁狭窄症は、単純な心房細動の塞栓症頻度を年間0.94 % と仮定したときのおよその数値。 |
明らかな心血管病(65歳以上)がある人では |
9.1%
|
※原文=clinical |
軽微な心血管病(65歳以上)がある人では |
4.6%
|
※原文=subclinical |
心血管病のない人(65歳以上)がある人では |
1.6%
|
|
米国の調査(Braunwaldより)
|
●心電図
心房細動の診断には心電図が不可欠である。また、心房細動以外の心臓病の診断の手がかりを与えてくれる。
●24時間連続心電図
24時間連続心電図は、おもに一日の心拍数の推移をみる。高齢者では伝導障害の合併がしばしばあり、「頻拍と除脈を合併した心房細動(洞機能不全症候群のひとつ)」が少なくない。高齢者の場合、日中の心拍数のみで心拍数をコントロールしていたのでは、夜間の高度の除脈を助長してしまう。ま
た、一時的に正常洞調律に復帰していないかみる。
●胸部レントゲン写真
おもに、心拡大や肺うっ血など心不全の有無をみる。
●心エコー/ドップラー検査
心臓の構造的な異常の有無を調べるのに不可欠な検査である。心臓の異常の種類・程度の評価だけでなく、心臓の機能評価(心不全の評価)、治療の効果判定にも大変役立つ。心房細動の人は、治療方針を決めるために、治療開始時に最低一度はこの検査を受けておく必要がある。その後も数年に一度は僧帽弁逆流、三尖弁逆流、左室と左房の拡大を定期的に調べると、心臓の状態にあった治療方針が立てられる。ただし、このレベルになると循環器科の看板を掲げている医師なら誰でもできるわけではない。
A:●原因・誘因の排除、●心室レートのコントロール、●再発の予防、●塞栓症の予防4つの重要項目がある。
●原因・誘発因子の排除
心房細動の原因に甲状腺機能亢進症が隠れていることがあることは有名である。心房細動は心房に負担をかけ続けると起こるので、心臓病はもちろん、心臓に負担をかける心臓外の病気でも起こる。代表的なものとして、甲状腺機能亢進症、肺塞栓症、脈拍数や心拍出量を増加させる疾患(高度の貧血、動静脈短絡、発熱疾患)、低酸素血症、低カリウム血症などがある。また、生活習慣では極度の不眠や夜更かしは心房細動発作の強い誘発要因である。過度の運動、アルコール、カフェインも心房細動を誘発する。肥満・喫煙もよくない。以上の原因や誘発因子の治療と排除がもっとも根本的な治療となる。
●心室収縮頻度(心室レート)のコントロール
心房細動では心房はあちこちで300/分以上の高頻度の心房筋の収縮がバラバラにおこり、心房全体のまとまった収縮がなくなる。通常、心臓の心拍数という場合は、心房の収縮頻度ではなく、心室の収縮頻度を言う。
心房から心室への電気の伝導が正常の場合、300/分が全部心室に伝わるのではなく、およそ100〜160/分のが心室に伝わり、発作時のの心房細動の心拍数はこれくらいになる。この程度の頻拍であっても長く続くと心臓の構造的な異常がなくても心不全になる。このため、薬物を使って適切な心拍数まで低下させる。
目標とする心拍数は、安静時では60-90/分くらい(米国の教科書では60-80/分)である。軽度な労作で100/分を超さない。軽度から中等度労作時
で110〜120/分以下をおよその目安とする。高齢者では、電気の伝導障害がおこり、心拍数が多くないことがある。この場合には心拍数を低下させる薬剤はむしろ有害であるので、心拍数を減らす薬は使わない。心拍数を低下させる薬は別のところで解説する。
●心房細動の再発予防
発作の原因や誘発因子が排除できる場合は、抗不整脈剤を内服し続けるよりも、原因の治療が望ましいのではあるが、薬物を使わなければコントロールできない場合も多いのが現状である。その場合、運動により誘発されるなら、激しい運動は控え、薬剤にはβ遮断薬を使う。
心不全がある場合には心不全改善治療を優先する。薬剤には利尿剤、ACE阻害剤、抗アルドステロン剤、一部β遮断薬など用いる。低カリウム血症があれば改善するようにする。カリウムの多い食事、カリウム製剤、抗アルドステロン剤などを使う。
以上により予防できない心房細動の再発予防には抗不整脈剤を使用するが、投薬前に心機能をエコーなどで評価しておく必要がある。抗不整脈剤を選ぶ際に、心機能障害の程度が薬の選択の参考になるからである。
心機能正常
|
心機能軽度低下または肥大型心筋症
|
心機能中等度低下
|
|
第一選択 |
K遮断中等度+Na遮断slow+M2遮断 |
K遮断中等度+Na遮断intermediate |
K遮断中等度+Na遮断intermediate Na遮断intermediate (β遮断作用のある薬剤を除く) |
(商品名) | リスモダン、シベノール、サンリズム | アミサリン、キニジン | アミサリン、キニジン、アスペノン |
タンボコール、ピメノール | |||
第二選択 |
K遮断中等度+Na遮断intermediate K遮断中等度以上 Na遮断intermediate |
K遮断中等度+Na遮断slow Na遮断slowまたはK遮断中等度以上 Na遮断intermediate |
|
(商品名) | アミサリン、キニジン | リスモダン、シベノール、サンリズム | アンカロン |
プロノン、アスペノン | タンボコール、ピメノール | ||
ベプリコール、プロノン、アスペノン | |||
第三選択 | |||
(商品名) | アンカロン |
慢性期心房細動の心拍数コントロール
|
||
ジギタリス | (商品名) | ジゴシン、ラニラピッド |
β遮断薬 | (商品名) | アーチスト、メインテート、セロケンなど |
カルシウム拮抗剤 | (商品名) | ヘルベッサー、ワソラン、ベプリコール |
A:動脈塞栓のリスクの高い人には、ワーファリン治療が原則である。
日本ではその管理の煩わしさと出血性の副作用を恐れるあまり、残念ながらワーファリン療法を手がけない医師が多いのが日本の現状である。ワーファリンの血栓塞栓症予防効果が他の薬剤よりもはるかに優れていることは、多くの大規模試験で確認されている。血栓塞栓の危険性の高い心房細動の患者を診る循環器専門医以外の臨床医も、専門医にアドバイスを受けて、ワーファリン療法を熟知し、禁忌でないかぎり積極的にワーファリン療法をおこなうことを勧める。ただし、自動車の運転と同じように、常に注意しながら使う必要がある。
また、ワーファリンの効果を評価するのに、最近のすべての大規模研究では「PT-INR」検査が採用されている。従来使われてきた「トロンボテスト」は採用されていません。まだトロンボテストを利用している臨床医は検査方法をPT-INRに変えるべきです。
PT-INR目標値は、70歳未満では INR2.0〜3.0とする。
70歳以上では 頭蓋内出血の危険性が高まるため、INR1.6〜2.6になるように少量のワーファリンを使う。
その場合の塞栓症予防効果は、INR 2.0〜3.0とした場合の約80%とされている。ただし、塞栓症の危険性により、目標値の変更は当然ありえます。 当院の経験では、INR2.0くらいでは脳梗塞になる人が時々あり、危険性の高い人は2.5以上がよいと考える。逆に、INR4-5くらいと効き過ぎになっているときは、2-3日ほどワーファリンを中止し、減量した量で再開すれば大丈夫である。
血栓塞栓の危険性に影響する因子は、年齢、血栓塞栓の既往の有無、心疾患の有無(弁膜症、虚血性心疾患、心不全、左房拡大、左室拡大)、高血圧の有無、糖尿病の有無などである。低リスク群には、アスピリン、アスピリンが使えないときはパナルジンなどの血小板凝集抑制剤を使うか、もしくは塞栓症の予防薬は使う必要がない。
これらの血小板凝集抑制剤の予防効果は、動脈塞栓を約20%減少させる程度でワーファリンに比べて強くない。効果がなかったとする報告すらある。中等度以上の危険群ではワーファリンが勧められる。ワーファリンは血栓塞栓を約50〜60%減少させるとの報告があるが、高危険群だけできちんと管理すると比較するともっと効果があるようだと当院では考えている。
弁膜症のない心房細動患者における一次予防のためのリ スク層別化(米国胸部内科学会)
|
|||
血栓塞栓の危険性 |
低い
|
中等度
|
高い
|
年齢 |
年齢64歳以下
|
年齢65〜75歳
|
76歳以上
|
危険因子 |
危険因子なし
|
糖尿病
|
高血圧歴あり
|
冠動脈疾患
|
左心不全・左室機能不全あり
|
||
甲状腺中毒症
|
中等度危険因子が2個以上
|
弁膜症のない心房細動患者における治療薬選択の目安 (日本循環器学会)
|
|||
血栓塞栓の危険因子: ●一過性脳虚血または脳梗塞の既往、●高血圧、●糖尿病、●冠動脈疾患、● 心不全 |
|||
危険因子1つ以上あり
|
危険因子なし
|
||
76歳以上
|
59歳以下
|
60〜75歳
|
76歳以上
|
ワーファリン内服
|
抗血栓薬不要
|
抗血小板薬 |
ワーファリン内服
|
69歳以下INR2.0〜3.0
|
少量のアスピリン
75〜325mg/日内服※1 |
少量のアスピリン |
69歳以下INR2.0〜3.0
|
70歳以上INR1.6〜2.6
|
またはパナルジン※2
200mg/日 内服 |
70歳以上INR1.6〜2.6
|
70歳以上INR1.6〜2.6
|
※1 この治療の目安が発表された後(2006年頃?)に、少量のアスピリンは心房細動の塞栓予防に使うのは、消化管出血などの副作用を含めるとむしろ不利であるとの発表があった。よって、当院では少量のアスピリンを心房細動の合併症予防に使うことは勧めていない。2007.1月追加
※2 パナルジンは少量のアスピリンよりも強い抗血小板作用があるが、血栓塞栓予防効果はアスピリンとほとんど差がありません。慢性と発作性心房細動の比較において、塞栓症の発生頻度には統計的な差異が認められていません。薬剤の価格はパナルジンがはるかに高く、安全性もアスピリンに勝るわけではありません。なんとなく「アスピリンよりパナルジンのほうが、よく効くだろう」と、パナルジンを服用させるのは無意味である。 上には書いてありませんが、心臓弁膜症、肥大型心筋症、 拡張型心筋症、左房拡大(心エコーで50mm以上)、除脈頻脈発作などの心疾患は血栓塞栓症の強い危険因子である。これらに合併した心房細動は、上図の限りではありません。積極的にワーファリンを使うべきである。 |
■納豆は少量でも禁止である。 ビタミンKはワーファリンの効果をなくす。多量のビタミン
Kを含む納豆、クロレラ、青汁、抹茶は少量でも摂取禁止である。
納豆は発酵により合成されたビタミンKを多量に含んでいる。週に1回でも食べてはいけない。 納豆はダメでも大豆、豆腐、味噌、甘納豆は影響ない。発酵といってもヨーグルトなどの乳酸菌発酵は影響はない。
ブロッコリー、ほうれん草、トマト、アスパラガス、キャベツ、レタス、海草類
などもビタミンKを多く含んでいるものとして知られているが、納豆に比べて 一食あたりの摂取ビタミンK量はずっと少ないので普通の量なら気にする必要はない。
アルコールは飲み過ぎるとワーファリンの効果を強めるが、少量なら問題ない。
○ 高齢者で、元気がなくなる、食欲がなくなる、ぼけが進行する、足腰が立たなくなるなど1〜4週間で進行した。
頭蓋内出血(慢性硬膜下血腫)可能がある。主治医に連絡し、頭部CT検査を受けましょう。
以上の所見がすべてワーファリンの効き過ぎを示すとは限らないが、上記の症状に日頃から注意しましょう。
どうも変だと思ったら、主治医に相談しましょう。
類似の質問:「なぜ心房細動は慢性化するのか?」、「なぜ上室性頻拍や心房粗動は、心房細動に移行するのか?」
A:心房細動や心房の頻拍が持続すると、心房筋に変化(電気生理学的、可逆的変化)が生じ、これがさらに心房細動になりやすくする。さらに長期間、心房細動が持続すると心房筋に元に戻らない構造的な変化(不可逆的変化)が生じるため、心房細動が正常洞調律に復帰しなくなる。
心房細動や他の原因による頻拍により、心房筋の収縮が高頻度に生じると心房筋内のカルシウムが過剰になったり、心房筋の仕事量増加による相対的酸素供給不足(心房筋の虚血)などの原因により、心房筋の傷害が生じる。短期間ならもとに戻るが、長期間に及ぶと傷害はもとに戻らなくなる。このためできるだけ早期の除細動が勧められる。
--- 短期間の頻拍の影響 ----
実験的に、山羊の心房をペースメーカーという一定の間隔で電気刺激を発生する器械を使って、電気的に高頻度に刺激すると、心房細動が生じやすくなり、約1週間で持続性の心房細動になったと報告されている。つまり、心房細動は長く続くと戻りにくくなる。これは、心房細動が持続すると心房筋に電気生理学的な変化(電気的リモデリング)を生じるためと説明されている。
実験では、●電気刺激24時間で心房細動は誘発されやすくなる。●電気的リモデリングは断続的な電気刺激を中止すると1週間で正常化する。●電気的リモデリングはカルシウム過負荷が原因であり、心房筋の虚血や心筋の伸展は関与していない。●心房細動が長期間(9-23週間)持続すると、心房筋に構造的な変化がでる(・筋原線維の消失、・グリコーゲンの増加、・ミトコンドリアの形態変化、・筋小胞体の断裂)。
実験では、心房の高頻度刺激の2日目から心房筋の収縮力の低下が見られるため、心房細動の持続時間が短くても左房内に血栓が形成されやすいと考えられる。
---長期間の頻拍の影響----
長期間心房細動が持続したり、心不全では心房全体の高度の間質線維化が起こる。ACE阻害薬、アンギオテンシンII阻害薬(ARB)、アルドステロン拮抗薬を使えば、間質線維化が抑制できるとの報告がある。
---本院のコメント---
心不全に合併した発作性心房細動の発作予防には、心不全のコントロールが大切である。ACE阻害薬、ARB、アルドステロン拮抗薬を抗不整脈剤と併用すると心房細動発作を抑制しやすくなる。ただし、その効果は数ヶ月以上かかり、すぐには出ない。
参考資料
6) 心房細動の治療と管理:井上 博、新 博次 医学書院2004.3.1発行第1版、p19-23、「電気的リモデリングとは何でしょうか?」
参考資料
6) 心房細動の治療と管理:井上 博、新 博次 医学書院2004.3.1発行第1版、p24-27、「心房細動があると、臨床上、何が問題となるか?」
2004 .4.28記
心房細動の基礎疾患(不整脈薬物療法研究会共同調査) | ||
1991.1月-1993.12月、塞栓症の既往の内1819例、男性1183例 | ||
発作性(740例中)
|
慢性(1079例中)
|
|
初診時年齢 |
56歳
|
59歳
|
孤立性 |
34.1%
|
18.9%
|
高血圧 |
27.8%
|
27.3%
|
虚血性心疾患 |
12.2%
|
11.9%
|
僧帽弁疾患 |
8.5%
|
36.5%
|
心筋症 |
6.4%
|
14.4%
|
先天性 |
2.0%
|
2.6%
|
洞不全症候群 |
10.3%
|
4.8%
|
6) 心房細動の治療と管理:井上 博、新 博次 医学書院2004.3.1発行第1版、p7-9、
2004 .05.08記
6) 心房細動の治療と管理:井上 博、新 博次 医学書院2004.3.1発行第1版、p28-30
2004 .05.08記
A:必要に応じて、血液検査や頭部CTまたは頭部MRI検査を行う。6) 心房細動の治療と管理:井上 博、新 博次 医学書院2004.3.1発行第1版、p28-30
2004 .05.08記
参考資料
6) 心房細動の治療と管理:井上 博、新 博次 医学書院2004.3.1発行第1版、p28-30
2004 .05.08記
発作性心房細動の除細動効果の比較
|
||||
心拍数コントロール
|
薬物療法
|
電気的除細動
|
||
経口(頓服)
|
静注
|
|||
簡便性
|
比較的簡単
|
簡単
|
比較的簡単
|
手間がかかる
|
監視
|
短時間
|
短時間
|
長時間の監視必要
|
原則入院が必要
|
除細動効果
|
発症後24時間未満なら高い |
中等度
|
高い
|
最も高い
|
除細動までの時間
|
数時間〜数十時間
|
数時間
|
速やか
|
もっとも速やか
|
心不全例への適応
|
よい適応
|
要注意
|
要注意
|
最もよい適応
|
催不整脈作用※
|
ほとんど問題なし
|
あり
|
あり
|
なし
|
そのた
|
時間とともに除細動成功率が低下
|
患者自身による頓服の安全性に問題あり
|
経過の長い例でも除細動可能
|
麻酔、呼吸管理が必要
|
参考文献6)p44の表1から一部変更 | ||||
※催不整脈作用:抗不整脈薬の投与が、心室細動、心室頻拍等の新たな不整脈を誘発させる副作用を言う。 |
心房細動の除細動方法の選択流れ図:参考文献6)p45より
|
※血圧低下、心不全増悪、狭心症発作、WPW症候群の偽性心室頻拍は早急な除細動が必要 |
$十分な抗凝固療法を継続している例では48時間以下と見なして対応 |
6) 心房細動の治療と管理:井上 博、新 博次 医学書院2004.3.1発行第1版、p43-46
2004 .05.08記