質問 Q&A NO.4】 公開日 2006.03.16 更新日 2006.04.18  HOMEへ  メニューを隠す
このページは、診療中やメールでの患者さんからの質問の返答に説明を追加補充したものです。とくに、よくある質問に対して、参考となる資料が見つかった場合には紹介するようにしています。
  このホームページの記事はあくまでも参考に留め、治療方針は診療医師と相談して決めてください。
57)【診療】心臓病をみてもらうには、看板に「循環器」とある医療機関を捜せばよいのですか? 2006.04.08記
56)【カルシウム】2年前に甲状腺の手術を行いました。指の痙攣が起こるのはカルシウムのせい? 2006.03.18記
55)【動脈硬化】テレビでよくみる「血液サラサラ」の検査はできますか? 2006.03.16記
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【医療】                       目次へ  前へ戻る

Q57:心臓病をみてもらうには、看板に「循環器科」とある医療機関を捜せばよいのですか?
A:標榜科目に「循環器科」とあるだけでは、あてにできません。
●看板の診療科目と診療水準は全く無関係
 病院や診療所で標榜されている診療科目名があることと、その診療水準とは全く関係ありません。たとえば、担当医師にその科目の診療経験が全くなくても、ほとんどの診療科名(麻酔科を除く)の標榜が可能です。また、看板や広告に標榜はできませんが、各学会が認めた専門医制度、私の場合を例にあげれば、日本循環器学会認定「循環器専門医」というものもあります。ある程度の水準を示してくれるのものではありますが、高い心臓病の診療技術水準を保証してくれるとは言えません。では、どうしたら、医師の専門性、診療水準がわかるかというと、実際なかなか困難です。以下のことは、ある程度目安となります。
例:診療所の場合
1) 標榜科目では、2番目以内に循環器科があること
  まず、標榜科目に循環器科がない場合は、心臓病の診断と治療の水準は低いと考えて間違いありません。専門医への紹介なしに診断された「虚血性心疾患」、「狭心症」はほとんど誤診か、根拠の薄い診断です。なぜなら、心臓の専門医でもこれらの診断は、心エコー、冠動脈造影、運動負荷試験などの専門的な検査なしでの診断や治療方針決定が難しいからです。
  一人の医師の場合、「循環器科、内科、消化器科」と、一番目に専門性の高い診療科目があれば、それを得意としていると考えてよいとおもいます。「内科、循環器科、小児科」のように2番目に循環器科がある場合、循環器を専門としていることが多い。しかし、3番目以降にある場合は、循環器は専門外と考えてまずまちがいありません。
2)診療所で、何気なく、看護婦や医師に専門かどうか聞く。
  「先生の得意分野は何ですか」、「開業前の勤務病院での診療内容、専門分野」、「心臓(内科)が専門ですか」 など聞いてみる。はっきり答える場合は、専門家かもしれない。ただし、ほかにもいろいろ得意分野をいう場合ややや遠慮がちに言う場合は、専門ではありません。また、「外科」、「心臓外科」の一言がある場合は、心臓の手術に関しては、技術があるかもしれないが、総合的な心臓病の診断、薬物治療の水準はまず高くない。
3)医師の説明態度
 医師の人間性は大いに参考となる。「診療水準を上げることに努力している医師は、説明熱心である」と断言してよい。口先だけで取り繕う医師は信用ならない。いくつか病気や薬に関して質問してみるとよい。患者の予想よりも詳しい情報を説明できない医師の診療水準は疑問です。いばって説明しない医師は論外です。また、長期に渡って、処方薬が変化しない患者がやたら多い場合は、医師が診療や治療効果の評価を手抜きしていることが多い。
4)人の噂は疑問。専門医を紹介した雑誌も疑問
 人のうわさは参考にはなるが、あてにできるかどうかは不明である。わたしの地域でも、評判と実力は一致する場合も、しない場合もある。 とくに、年輩の医師のうわさは昔医療水準が低かった頃の評価が多く、あてにできない。
【参考】 医療機関の名称制限について
 病院・診療所の名称や診療科名は、許可された診療名しか掲示できない。また、病名や一般的でない特殊な治療方法を広告に掲示できない。たとえば、「糖尿病科」、「心臓病科」、「頭痛外来」、「MR検査ができます」は、看板や広告に載せることは認められていません。「○○こども病院」は診療料名に類似し、かつ一般的に定着しているので、認められています。「○○往診クリニック」、「○○夜間クリニック」については、夜間・往診体制が確保(医師や看護師等の従事者の勤務体制、必要人員の確保等)されており、夜間診療や往診を実施していれば、名称として使用しても差し支えないと解されています。
 医療に関して広告規制をしている理由
1)医療は人の生命・身体に直接関わるサービスであり、不当な広告により、みる側が誘引され、不適切なサービスを受けた場合の被害は、他の分野に比べて著しい。
2)医療はきわめて専門性の高いサービスであり、広告の受け手はその文言から、提供される実際のサービスの質について事前に判断することが非常に困難である。
3)医療には、非営利性の原則(医療法七条五項)があり、医療機関が自由な広告により患者を積極的に誘引することは、この原則に反するおそれがある。
  こうした点から、医療機関の原則として医療法に定められている事項以外は広告できないという限定列挙方式になっている。
日本医事新報(2006年3月25日)p98
2006.03.018記 2006.04.18修正
【カルシウム】                       目次へ  前へ戻る

Q56:2年前に甲状腺の手術を行いました。指の痙攣が起こるのはカルシウムが減ったせいでしょうか?
A:
甲状腺の切除手術の後に、痙攣などがおこると説明されていたので気になったそうです。甲状腺の手術後に低カルシウム血症を生じ、指の痙攣を生じることがあります。低カルシウム血症があるかどうかは、簡単な血液検査でわかります。
●甲状腺手術後の副甲状腺機能低下症

 甲状腺には小さな米粒大の副甲状腺が数個付着しており、血液中のカルシウム濃度を調整する副甲状腺ホルモンを放出しています。甲状腺の切除時に一緒に切除されて、術後に副甲状腺機能低下症(低カルシウム血症)になることがあります。血液中のカルシウム濃度が下がりすぎると、「神経・筋肉の興奮性が亢進するため、「口囲や指趾端のしびれ感」、「異常感覚」、「こわばり」、「手指手足、腹部の筋肉の痙攣」が生じることがあります。「軟便や下痢」、「頭痛」、「精神不安」などもときにみられます。重症の低カルシウム血症では,全身性の痙攣を起こし、てんかん発作と誤ることもあります。
●検査のポイントは血清Ca値の測定です。
 血液中のカルシウムの約50%がアルブミンというタンパク質と結合しているため、血清アルブミン値が4g/dl以下のときは下記の補正式で補正カルシウム濃度(Ca)を算出します。4g/dl以上のときは補正の必要ありません。
 補正Ca値(mg/dl)=実測Ca値(mg/dl)+{4.0−血中アルブミン値(g/dl)}
 補正Caが7mg/dl以下になって初めて臨床症状が顕性化することが多いのですが、カルシウム濃度が急速に低下するときはこれ以上の値でも症状が出現します。
 参考
今日の診療 Vol.15
2006.03.018記 2006.04.08修正
【動脈硬化】                       目次へ  前へ戻る

Q55:テレビでよくみる「血液サラサラの検査」はできますか?
A:「テレビの血液サラサラ・ドロドロ検査(血液流動測定装置)」は、実際の診療では全く役に立ちません。
●「テレビの血液サラサラ・ドロドロ検査」では、血液が詰まる病気になりやすいか全くわかりません。
 患者さんから「テレビでみた血液サラサラの検査をやってほしい」と言われることが最近多くなりました。「血液サラサラ・ドロドロ」という言葉が流行し、「テレビの映像を見て、これが最新医療技術!」と勘違いされているようです。
  動脈や心臓の中で血栓ができると、詰まって脳梗塞や心筋梗塞の原因となります。しかし、血液が固まる現象は、血液中に溶けている凝固因子と細胞成分の血小板が主役で、赤血球ではありません。しかも血液が動脈の中で固まるかどうかは、血液そのものよりも血管の壁の内側表面が傷ついていないかどうかが最も大切です。
  また、血液の流れる速度も重要で、血液のよどみができると血の塊ができやすくなります。遺伝的に赤血球に異常がある一部の特殊な場合を除いて、この検査と血の塊ができやすいこととの関係は事実上ないと考えられます。
  結局、この検査は診療に全く役立たないので、まともな医療現場では行なわれていません。この検査機器を使っているのは真面目な基礎医学研究の場か、「医学的には全く意味のない」と知りながら、客寄せとして導入しているごく一部の医療機関です。当然、健康保険適応ではないので、検査代は医療機関の言い値です。医療機関向けに最近販売されるようになった「血液流動測定装置」は、一台500万円以上(定価672万円)します。一人あたりの消耗品は1,400円くらいになるといいます。これくらいだと一回3,000円徴収するだけでは医療機関の利益はありません。客寄せが目的なので、他のいろいろな検査をさらに勧めたり、治療の必要性もないのに、「このままだと病気になりますよ」と言って、無駄な薬(特に高脂血症治療薬)を勧めることが多くなると考えられます。
●テレビの血液サラサラ・ドロドロ検査では赤血球のしなやかさ(形を変える能力)を観察しているだけ
 採血した血液はすぐに固まってしまうので、採血管の中には血液を固まらなくする薬剤(ヘパリン)が入っています。しかし、ヘパリンを使っても、血液中の血小板は凝集するため、映像の血液は血小板が取り除かれています。なお、血液中にある白血球の数は赤血球の千分の一しかなく、映像にほとんど出てきません。つまり、血液サラサラ・ドロドロ検査では、血液を固まらせる血小板がなくなった後の凝固しない血液を、血管とは全く異なる実験装置の中で流してみているだけです。当然、動脈硬化とも全く関係ありません。
 この赤血球の変形能には個人差があり、また食事や運動で変化します。赤血球変形能と疾患との関係や赤血球変形能と血液中成分の関係については、現在はまだまだ基礎研究の段階です。
 参考
All About ( http://allabout.co.jp/):
http://allabout.co.jp/health/familymedicine/closeup/CU20040810A/index.htm
2006.03.16記 2006.04.08修正