トピックス(役立つ医学情報-No.25)】
公開日2007.12.12 更新日2007.12.12  HOMEへ(メニューを表示)  メニューを隠す  
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109)【循環器】ブルガダ型心電図だけでは、予後は悪くない。 2007.12.12記

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     【循環器】

(109)無症候のブルガダ型心電図の予後は悪くない。

まとめ:日本人の突然死の多くはブルガダ症候群との話を聞く。しかし、失神などの重篤な症状のないブルガダ型心電図の患者さんの予後は良好である。  
 「ブルガダ型心電図」=「 ブルガダ型症候群」ではない。
 日頃健康に問題のないと思われていた男性が突然心室細動を起こし、死に至るブルガダ症候群。自動体外式除細動器(AED)で心蘇生した人が後で、ブルガダ症候群だった。このような例が増加しているという。
 ブルガダ症候群とは1992年にベルギー人医師のBrugadaらによって提唱された疾患概念。若年から中年の男性に多く、突然心室細動を起こす。日本における''ぽっくり病''の大部分を占めるとされている。
  心電図は特徴特徴的で、心電図で右脚ブロック様波形ならびに、右前胸部誘導(V1-V3)でのST上昇を示す。「ブルガダ型心電図」と呼ばれている(図1)。
  成年日本人の1000人に1-2人がこの心電図を示すことが分かっている。しかし、ブルガダ型の心電図に特徴だけで、ブルガダ型症候群の診断はつけてはいけない。ブルガダ型心電図の患者すべてが心室細動を起こすわけではないからである。心電図はあくまで、ブルガダ症候群のスクリーニング法である。ブルガダ型症候群の治療法は、今のところ植え込み型除細動器(ICD)のみ。薬物療法の効果は期待できないと考えられている。
 軽度の心電図異常には、満腹テストを行う
 欧米では一般的に、ブルガダ型心電図は図1に示すようなcoved型をなす2mm以上のST上昇(現在はType1と呼ばれる)を伴うことが条件。しかし、上昇の程度が小さかったり、saddle-back型でも、日内変動などでType1へと変化することがある。
 このような例には、「満腹テスト(Full Stomach Test)」が有用である。まず安静時の心電図をとり、その後、満腹になるまで食事をとることで副交感神経を刺激し、30分以内に再度心電図をとる。食前と比較して満腹時に1mm以上STが上昇したり、coved型へと変化した場合、専門医へ紹介する。
 無症状の「ブルガダ型心電図」の予後は良好である。
 無症候性Brugada症候群の予後は、日本人は予後が良好であると報告されている。自然状態でType1を示す患者について、心室細動の既往歴がある患者の年間心事故発生率は、欧米13.7%、日本10.3%と同程度だったが、失神の既往歴がある患者では、欧米8.8%、日本は0.8%であった。無症候性のブルガダ型心電図患者では欧米3.7%に対し日本は0.7%だった。無症候群または失神群における、心室細動発生の危険予測因子は「3親等以内に70歳未満で突然死した家族が存在」、つまり家族歴のみだった。この結果を基に、鎌倉氏は図のような日本での治療方針を提案している。
 ICDには誤作動もある
  ICDを入れないに越したことはない。ICDは医療費が500万円程度と高価で、手術時の感染リスクもある。さらに、ICDの誤作動も問題となる。ブルガダ型心電図を持つ患者の25%程度は心房細動を合併しており、心室細動と間違えてICDが作動し、本人に意識があるのにもかかわらず電気ショックを受けることが頻繁にある。ICDは本当に必要な人にのみ植え込みすべきなのである。


【参考】
「日経メディカル2007.8」より
2007.12.12記  2007.12.12修正