【トピックス(役立つ医学情報-循環器以外編No.22)】 
公開日2006.11.14 更新日2006.11.18  HOMEへ(メニューを表示)  メニューを隠す  
このページは、当院が興味を惹かれた医学情報(必ずしも最新ではありません)を紹介します。
このホームページの記事はあくまでも参考に留め、治療方針は診療医師と相談して決めてください。
103)【薬物】飲料物に含まれるカフェイン量                  2006.11.14記
102)【骨粗鬆症】骨粗鬆症薬物治療のわかりやすい開始基準           2006.11.14記
101)【インフルエンザ】タミフルでインフルエンザ死亡リスクが著明に低下   2006.11.14記
100)【糖尿病】思春期の糖尿病リスク予防に、ウエイ卜・トレーニングが有効  2006.11.14記
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   【薬物】
(103)飲料物に含まれるカフェイン量

まとめ:現在カフェインを含む飲み物が氾濫している。上手に利用しないとカフェインの副作用に悩まされることになる。
 最近、ペットボトルの緑茶やウーロン茶の消費量が著しく増加している。茶の中に含まれる茶カテキンには抗酸化作用、抗菌作用、脂肪代謝促進作用があり、「がん」や「肥満」の予防に有効性を示唆する臨床報告がある。
表1各種飲料中に含まれるカフェイン量
飲料食品 カフェイン量
コーヒー:脱カフェイン 1-2mg
コーヒー:インスタント 30-100mg
コーヒー:レギュラー 50-150mg
緑茶(一番煎) 10-30mg
緑茶(二番煎) 1-5mg
ペットボトル入り緑茶/ウーロン茶(500ml) 30-50mg
缶入り緑茶・ウーロン茶・紅茶(350mL) 20-50mg
抹茶 20-50mg
紅茶 30-50mg
コーラ飲料(350ml) 30-45mg
強壮ドリンク剤 50mg
 しかし、茶の中には茶カテキンばかりでなく、さまざまな成分が含まれている。
 お茶に含まれるカフェインは中枢神経系の興奮を引き起こす。一杯の緑茶(一番煎)や紅茶によって、集中力の維持や精神的、身体的疲労感が薄れる。しかし、大量摂取後は中枢刺激作用により、不眠になりやすく、また指のふるえや不安・神経症に似た精神症状が現れやすい。大量のお茶を飲む習慣のせいで、不眠、翌日の眠気、それを軽減するためのカフェイン摂取、という悪循環にはまることもある。
 カフェインの大部分は肝臓で代謝される。通常、半減期は2-3時間であり、一杯の茶は数時間にわたって中枢刺激作用や強心作用を発揮する。しかし、肝機能障害のある人では、カフェインの代謝が遅れ、一杯の茶でも異常興奮や不整脈といった中毒症状が起こりうる。代謝機能全般が低下している高齢者でも、夕方以降の飲茶が不眠の主要原因となることがかなり多い。
 カフェインの精神依存性の強さはアルコールやニコチンと比較してかなり弱い。しかし、毎日コーヒーを数杯以上飲んでいる人では、摂取中止後の頭痛で特徴づけられるカフェイン依存症の可能性がある。個人差があるが、健康な人でも一日当たりの最大摂取量を300mg未満に止めたい。
 一方、高齢者子ども妊婦肝機能障害者心臓病既往者、パニック障害既往者、およびカフェイン、テオフィリンあるいは交感神経様薬を含む医薬品(鎮咳配合薬、感冒配合薬、気管支拡張薬など)の服薬者は、茶からのカフェイン摂取量を削減すべきである。このような場合、カフェインをほとんど含まない二番煎の緑茶を飲むとよい。
【当院の意見】
 緑茶には「不眠」の副作用以外にも「胃腸障害」、「便秘」もある。夕食後よりもあとの飲用は避けるように勧めている。
【参考資料】
1)日本医事新報2006年11月11日号 「カフェイン含有飲料の大量摂取」 :東京福祉大学社会福祉学部教授 栗原 久
2006.11.18記  2006.12.08修正


   【骨粗鬆症】
(102)骨粗鬆症薬物治療のわかりやすい開始基準(ドイツ)

まとめ:骨粗鬆症の薬物療法を開始するかどうかは、日本では医師の主観に頼る部分が大きい。参考としてドイツの基準を紹介する。
ドイツの骨学連盟(DVO)は、骨粗鬆症治療の開始に関する明確なガイドラインを発表した。
骨粗鬆症の薬物療法の判断基準(ドイツの骨学連盟DVO)

【危険因子】
1)親のいずれかにおける大腿骨近位部骨折の既往
2)些細な外傷による末梢骨折
3)喫煙の継続
4)頻回な転倒
5)身体を動かさない
危険因子が1つでもあれぱ、実際のT値より治療の必要度を上げる。例えば、T値-3.5からではなく、-2.5から治療を開始するといった措置を講じる。また、臨床状態を総合的に判断しつつ.治療の必要度を1段階引き下げることも可能である

●二次予防の薬剤療法は年齢に関わらず、T値が-2.O未満なら開始
 骨粗鬆症性椎体骨折の二次予防では、二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)による骨密度測定で腰椎、もしくは大腿骨近位部のT値が-2.0未満の患者全員に特異的な薬剤療法を行うのがよいとしている。
●一次予防の薬剤療法は、危険因子を考慮する。年齢やT値だけでは、決まらない。
  骨粗鬆症性骨折の一次予防における特異的治療の適応は個々の患者の危険因子によって決まる。この危険因子は、ただ単に年齢とT値から求めるべきではなく、
1)親のいずれかにおける大腿骨近位部骨折の既往、2)些細な外傷による末梢骨折、3)喫煙の継続、4)頻回な転倒、5)身体を動かさない
一などの要因を考慮に入れて判定すべきである。ただしDXAによるT値が-2.0以上であれば、原則として薬剤療法の適応ではないとしている。
●勧める薬剤の種類
  閉経後女性に対する骨折予防効果が証明されている骨粗鬆症症治療薬として、アレンドロン酸ナトリウム水和物(商品名:フォサマック、ボナロンなど)、ibandronate、リセドロン酸ナトリウム水和物(商品名:ベネット、アクトネルなど)、raioxifen(商品名:エビスタなど)、エストロゲン(商品名:エストリオールなど)、strontium ranelanelate、teriparatideを挙げている。
【当院の意見】
 骨粗鬆症の薬物療法の開始基準は、医師によって異なる。悪い言い方をすれば、高齢女性のすべてに処方しようとする医師もいる。 今回の基準にもあるように、薬物療法開始の骨密度低下の評価は、腰椎または大腿骨で行うべきである。現実は腰椎の圧迫骨折の評価もせずに、前腕や踵(超音波)の評価だけで、薬物療法を始める医師は少なくない。当院では踵による骨粗鬆症の評価を行っているが、骨粗鬆症の薬物療法には、腰椎・胸椎の圧迫骨折の所見の有無を重要視している。また、薬物療法の効果に対しても過大な効果を期待しないようにしている。
【参考資料】
1)medical tribune2006年10月26日号
2006.11.14記  2006.11.14修正


   【インフルエンザ】
(101)タミフルでインフルエンザ死亡リスクが著明に低下。

まとめ:タミフルがインフルエンザ死亡リスクを著明に低下させた。
●タミフルがインフルエンザ死亡リスクを著明に低下させた。
 AllisonMcGeer医師(ニューヨークのマウントサイナイ病院)は、オセルタミビル(タミフル)で治療された15歳以上の小児と成人はインフルエンザによる死亡リスクが顕著に低下すると発表した(第46回航微生物薬・化学療法インターサイエンス会議ICAAC)。
●インフルエンザで死亡したほとんどが65歳以上で、タミフルは死亡率の71%低下と関連
 McGeer博士によると、インフルエンザで入院した成人患者では、オセルタミビル療法は死亡率の71%低下と関連(p=0.05)しているという。インフルエンザの徴候により救急で来院した患者512例では多くの患者が最初にプライマリケア医の治療を受け、多くは薬剤を処方されていた。
  15歳未満の小児185例では死亡例はなかったため、分析からは除外した。15-64歳の群では、プライマリケア医の診療所で23%に、病院では84%に抗菌薬が処方され、24%にはオセルタミビルが処方されていた。
  65歳以上の群では、医師の診療所で23%に、病院では91%に抗菌薬が処方され、34%にはオセルタミビルも処方されていた。
今回の研究期間中に死亡した25例のうち、65歳以上は22例で、死亡したのは大部分がオセルタミビル治療を受けなかった患者であった
【参考資料】
1)medical tribune2006年9月21日号
2006.11.14記  2006.11.14修正


   【糖尿病】
(100)思春期の糖尿病リスク予防に、ウエイ卜・トレーニングが有効

まとめ:思春期の糖尿病リスク予防には、有酸素運動だけでなく、ウエイ卜・トレーニングも有効


思春期の糖尿病リスク予防には、ウエイ卜・トレーニングで、インスリン抵抗性が著しく改善

 Michael Goran教授ら(南カリフォルニア大学予防医学)は、糖尿病リスクが高い思春期の小児で、週2回のウエートトレーニングが糖尿病の予防または発症遅延に有効であると報告した(Medicine&Exercise(2006;38:1208-1215)。
 成人の糖尿病やその予防には運動が有効である。しかし、若年層に対する運動の効果は、ほとんどわかっていなかった。教授らは、14-17歳のヒスパニック系米国人の肥満児22例を対照群と運動群に割り付けした。運動群は、ジムで週2回のウエートトレーニングを16週間行った。運動群の91%で有意なインスリン感受性の改善が見られた。データ解析には、ミニマル・モデル法が用いられた。運動群では、対照群と比べて上半身と下半身の筋力が有意に増加した。試験前のインスリン感受性の平均値は運動群で-7.3%、対照群で-12.9%であった。試験終了後のインスリン感受性の平均値は運動群で45.1%に跳ね上がったが、対照群では-0.9%までしか上昇しなかった。
  運動群で、体重はそれほど減少しなかったにもかかわらず、インスリン感受性が改善したことは、除脂肪体重が増加したことを示す
筋力が有意に増加
 この研究がヒスパニック系米国人の小児を対象とした理由は、ヒスパニック系米国人で糖尿病リスクが最も高いからである。2000年以降に生まれたヒスパニック系米国人の半数が2型糖尿病に罹患すると推定されている。ウエートトレーニングは有酸素運動と比べて身体的な疲労が少なく、見た目の効果が早く出るため、今回の研究に用いられた。Goran教授らは「ウエートトレーニングは、10歳代の肥満児でも上手にできるということだけでなく、高い効果も得られるという点で優れた運動方法である。筋量増加という効果があるため、体重が減少するかどうかは必ずしも重要ではない」と述べている。
【当院の意見】
 親が糖尿病である場合、肥満児の子供は糖尿病リスクが高い。この場合の運動、種類にかかわらず期待できるであろう。また、体重減少がなくとも効果が期待できるいうことになる。
【参考資料】
1)medical tribune2006年9月21日号
2006.11.14記  2006.11.14修正