【トピックス(役立つ医学情報-循環器以外編No.21)】 
公開日2006.07.28 更新日2006.09.24  HOMEへ(メニューを表示)  メニューを隠す  
このページは、当院が興味を惹かれた医学情報(必ずしも最新ではありません)を紹介します。
このホームページの記事はあくまでも参考に留め、治療方針は診療医師と相談して決めてください。
96)【皮膚科】大人のニキビの新しい治し方           2006.09.24記
95)【小児科】乳幼児の喘息発作治療に知っておくと役立つ治療薬 2006.09.24記
94)【医療】長期入院がますます困難になった。         2006.09.24記
93)【医療】きつい診療科を避ける研修医が増加している。    2006.07.28記
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   【皮膚科】
(96)大人のニキビの新しい治し方。

まとめ:大人のニキビには、ビタミンC誘導体(医薬部外品)が有効。
 美白用の化粧品原料として開発された「ビタミンC誘導体」医薬部外品が治療の効果を高める
 思春期後ざ瘡(にきび)は、20-30歳代の女性に好発し、皮疹が下顎や口の周り、頬から首に分布し、10歳代のざ瘡とは異なり、面皰(毛穴に生じた皮脂の塞栓)が多く見られる。このにきびは、通常の治療ではうまくいかない場合が多い。ところが、従来の薬物療法にビタミンC誘導体を併用する方法が効果が高いと皮膚科医で、従来の薬剤と組み合わせて治療するケースが増えている。ビタミンC誘導体により、皮疹の赤みが消失し、肌の状態が良くなる。通常、2ヵ月程度で効果が見られ、半年ほどで治癒する例が多いという。 これ以外にも、グリコール酸で表皮を剥奪して皮膚の代謝を促す「ケミカルピーリング」もあるが、手間や技術の面で医療機関では扱いにくい。
  ビタミンC誘導体は、ビタミンCの骨格にリン酸や脂肪酸、糖などの側鎖がついたもの。肌内部に浸透した後、ビタミンCに変換されて抗酸化作用で、炎症を起こす活性酸素を除去する。さらに、ビタミンC誘導体には肌代謝の促進、コラーゲンの合成促進、皮脂分泌の抑制など肌そのものへの作用があり、毛包漏斗部の角化を改善する働きがあるという。
 しかし、中には面皰が顔中に広がっている例など、ビタミンC誘導体を使用しても改善しないケースがある。その場合は、ケミカルピーリングなど他の治療法を勧められるという。副作用については、ごくまれに皮膚が乾燥したり紅斑や炎症を起こすという報告がある。
【参考資料】
1)日経メディカル2006.09月号
2006.09.24記  2006.09.24修正


   【乳幼児の喘息発作】
(95)乳幼児の喘息発作治療に知っておくと役立つ治療薬。

まとめ:乳幼児や小さな子供には、「ホクナリンテープ」と「ロイコトリニン拮抗薬」が使いやすい。
乳幼児の喘息発作治療に知っておくと役立つ治療薬
「ホクナリンテープ」と「ロイコトリニン拮抗薬」が人気
 吸入薬やβ2刺激薬(内服)が使いにくい乳幼児に、「ホクナリンテープ(テープ型のβ2刺激薬)や「ロイコトリエン拮抗薬」がよく使われている。現在の「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン」では、乳幼児の家庭における発作の治療薬として、β2刺激薬の吸入または内服薬が推奨されている。喘息症状は夜から早朝にかけて出ることが多く、寝ている小さな子供を起こして、噴霧式吸入器を使用したり、薬を飲ませたりするのは、やっかいだ。実際の臨床では、これら以外の薬剤がよく使われている。
簡単便利なテープ剤
 以前よく使われたテオフィリンは、けいれんなどの副作用が騒がれたせいで、使用が減った。それに代わり、β2刺激薬(ツロブテロール)の貼付薬(商品名ホクナリンテープ)が、特に3歳以下の乳幼児に処方されるケースが多くなった。ガイドラインでは第一選択にされていないが、「発作時に吸入や内服が困難な場合はやむを得ず使用する場合もある」とも記載されており、実際の臨床でよく使われている。子どもの背中にペタッと貼るだけで済むテープ薬は、非常に使いやすい。ただし、テープは貼ってから4時間ほどたたなければ効いてこない。呼吸がいつもよりあらい、咳込むなどの喘息発作の前兆が発作の数時間前に出ることも多い。こういった兆候があれば、予防的に貼ってよい。内服では急激に体内濃度が上昇するため、副作用への不安がある。一方、テープ剤はβ2刺激薬としては効果がさほど強くなく、血中濃度が上がり過きず、副作用も出にくい。風邪症状などが出始めたときにあらかじめ貼っておくことが、どれだけ有効性があるかは、まだ実証されていない。その研究は始まったばかりという。
即効性あるLT拮抗薬
 ガイドラインでは喘息の長期管理薬と位置付けられているロイコトリエン拮抗薬も、発作が起きそうな場合に使われ始めている。即効性があり、管理薬でありながら発作治療薬として使える。内服後早ければ1-2時間くらいで効いてくる。経口薬であり副作用が少ないので、乳幼児にも使いやすい。ドライシロップもあり、乳幼児にも飲ませやすい。
 また、ロイコトリエン拮抗薬はウイルス感染によって発症した喘息や気管支炎に対する有効性が示されている。同薬を発作前に使うことは理論的にもあり得るという。ただし、喘息全体の1-2割程度はロイコトリエンが関係していないので、みんなに効くとは限らない。あくまで第1選択は、吸入β2刺激薬であるとの認識が必要である。
【当院の意見】
 当院は乳幼児を診ることはほとんどないが、こういった実地医科に役立つ情報は読んで楽しい。
【参考資料】
1)日経メディカル2006.09月号
2006.09.24記  2006.09.24修正


   【医療】
(94)老人の長期入院がますます困難になった。

まとめ:206年4月の医療制度の変更で、長期入院となりやすい高齢者の入院が難しくなった。退院の目処が立ちにくい高齢者を紹介できる病院が減ってきた。
2006年9月ごろより「行き先のない老人」大量発生する可能もある。
 2006年6月に医療制度改革関連法が成立し、長期入院を扱う療養病床が38万床から15万床へ削減されることが決まった。病床を住居のように使う''社会的入院''をなくすことが目的である。「いまや無駄な医療費を使うことは許されないご時世」というのがその理由だ。目的達成のために、2006年7月から社会的入院に対する病院への支払い(診療報酬)が大幅に下げられた。病院側は採算悪化のために、こうした患者の退院を進めるようになる。
  病床を出た老人は、家庭や老人ホームで受け入れることが想定されているが、現実には「家庭で面倒を見る者がいない」「介護施設に空きがない」「お金がない」といった状況が多く、行き場をなくした老人が増加しそうである。
  療養病床を持つ関東の病院の経営者は、「9月ごろから介護難民が発生する」と警告する。
 医療費を削減するよう求められた厚労省は、それを回避するために自主的削減策を示すと約束した。
【当院の意見】
 社会的入院は本来あるべきではないが、代わりの施設が必要である。しかし、現在その体制はできていない。病院経営が困難なこの時代では、長期入院となりやすい病気の高齢者は、避けられる傾向がでてくるだろう。診療所からbyほういんへ、こういった患者の紹介が難しくなりそうである。入院が必要であるにもかかわらず、紹介できる病院がないといったことが今後増えそうである。
【参考資料】
1)日経メディカル2006.09月号
2006.09.24記  2006.09.24修正


   【医療】
(93)診療科の偏在がどんどん進んでいる。

まとめ:医学部を卒業した後の研修制度の変化や労働条件の厳しい診療科目を避ける傾向が強まっている。これが診療科の偏在を生み、診療医師不足を生じさせている。この傾向は当分続くと考えられ、将来の日本の医療崩壊がくる可能性が低くない。
診療料別増減
平成18年研修修了大学帰学者/平成14年卒業者
出典:全国医学部長病院長会議「地域医療に関する専門委員会報告」より
 
 臨床研修終了後の医師の教育(大学病院)
 地方の基幹病院の若手や中堅医師は、医学部の所属医局の派遣医師であることが多い。形式的には「個人医師と病院」との契約により勤務しているが、実際は「所属医局と病院」との関連で医師が派遣されていることが多い。テレビドラマ「白い巨塔」にあるように、この人事権があるからこそ医学部の教授は、ほかの学部の教授よりもはるかに権力がある。この教授を頂点とした医局制度には、いい面も悪い面もある。
 ところが、この構図が最近大きく様変わりしてきている。医学部卒業直後は、実際の医療技術はほとんど身につけていないので、実習により技術を身につける必要がある。そのため卒業後の研修システムが非常に重要である。
 きつい診療科に進む研修医が激減している
  今までは、医学部卒業後に医局に所属して研修することが多かったが、「すべての医師に初期治療に対応できる臨床能力をつけるため」、「研修医に対する処遇を確保する」を主な目的として2004年から新研修制度が導入された。その趣旨は賛同できる。本制度の導入以降、医局に所属する医師が大幅に減少し、医局は派遣医師数が足らずに、派遣病院からの医師を引き上げることが多くなった。従来の医師派遣システムが維持できなくなっている。このため地域では深刻な医師不足が起こっている。大都会においても、代休のない深夜勤務や休日勤務などが多い労働条件の厳しい診療科に対する研修希望者の減少し、それらの診療かでは悪循環で、過重労働が増加している。
 以外かもしれないが日本の医療制度は、世界では高く評価されている
  労働条件の厳しい診療科の医師不足は、研修医制度だけが原因ではない。医療費削減の製作も影響している。経営的にも簡単に医師を増員できないのである。急速な高齢化のため医療費削減が叫ばれているが、日本の医療費は対GDP比で世界でもっとも効率的とされている。実際の医療に当たっている立場として、本音で言わせていただくと、まだまだ不必要な投薬、効率の悪い検査づけなど、医療の無駄は多いが、その一方で医師、特に勤務医の過剰労働という犠牲の上に今の医療が成り立っている。慢性的な寝不足、徹夜直後の通常勤務もまれではない今の勤務医の待遇は、まともに勤めると定年まで健康を保持し、医療事故なしで続けられるものではない。ほとんどの勤務医は事実上、労働者なのに管理者扱いで
労働基準法の適応となっていないため、過重労働が放置されている
 英国では医療崩壊は現実に起きている
 英国ではサッチャーイズムにより、医療費削減のあおりで、医療費が削減され、医療機関が減り、医師になり手がいなくなり、医療が崩壊した。英国では手術を要するような患者でも数ヶ月順番待ちという状況である。多くの人がフランスに渡り医療を受けるという。2005年頃から今までの過ちに気づき、医師を大幅に増やす政策に変更している。医療費削減ばかり目標としていると英国の二の舞になる。このように日本の医療が崩壊しないことを望む。
【参考資料】
1)日医ニュース2006.07.20号、「臨床研修医終了後の医師の教育(大学病院)」(北里大学医学部長・全国医学部長病院長会議前会長吉村博邦)
2006.07.28記  2006.07.28修正