トピックス(役立つ医学情報-循環器編No.20)】
公開日2006.06.14 更新日2006.06.14  HOMEへ(メニューを表示)  メニューを隠す  
このページは、当院が興味を惹かれた医学情報(必ずしも最新ではありません)を紹介します。
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92)【循環器】スタチンが脳梗塞再発予防に有効  2006.06.14記
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     【循環器】

(92)スタチンが脳梗塞再発予防に有効

まとめ:強いLDLコレステロール低下作用のあるスタテン(アトルバスタチン=商品名リピトール)は冠動脈疾患だけでなく、脳梗塞の再発予防に有効であることが示された(SPARCL)。ただし、その効果は約30%といわれる冠動脈疾患予防効果よりも低く、脳卒中を16%減少させるという。また、脳出血は逆に増える可能性がある。
●スタチンは脳梗塞の再発を予防する ●
 今までも血中コレステロール血症低下薬(スタテンが主役)が脳卒中の発症も抑制することが示されていた。脳卒中既往患者を対象としたSPARCL(Stroke Prevention by Aggressive Reduction in Cholesterol Levels)試験の結果で、アトルバスタチン(リピトール)が脳卒中の再発予防に有効であること報告された(第15回欧州脳卒中会議(ESC))。
●脳卒中リスクを16%抑制●
 SPARCL試験では、脳卒中既往患者4,731例が、アトルバスタテン80mg/日群またはプラセボ群に無作為に割り付けられ、二重言検法で比較された。登録条件は、1)一過性脳虚血発作(TIA)または脳卒中の既往(6か月以内)、2)冠動脈疾患の既往がない、3)LDLコレステロール(LDL-C)が100-190mg/dL一など。
 病型は一過性脳虚血が約30%、脳卒中が約70%で、脳卒中の95%以上が脳梗塞。試験開始前のLDL-Cは両群とも平均133mg/dL、アトルバスタテン群で38%、プラセボ群で7%、それぞれ低下し、試験期間中のLDL-Cの平均値はアトルバスタテン群73mg/dL、プラセボ群129mg/dLであった。
 主要エンドポイントは致死性または非致死性脳卒中で、アトルバスタテン群で16%有意に抑制された(p=0.03)。二次エンドポイントの脳卒中またはTIAの発症はアトルバスタテン群で23%有意に抑制された(p<0.001)。しかし、頻度は少ないものの、出血性脳卒中がアトルバスタテン群で有意に多かった(2.3%vs.1.4%;p=0.02)。
 1件のイベントを防止するのに、5年間のアトルバスタテン治療を必要とする患者数(NNT)は、脳卒中46例主要心血管イベント29例、血行再建術32例であった。
 同試験グループは、脳卒中既往患者へのアトルバスタテン投与について「出血性脳卒中リスクをやや増加させたが、全体として利点が認められる」と結論した。
【当院の意見】
 コレステロール低下薬のスタチンは脳梗塞の再発予防に有効である。ただし、その減少率は約16%と弱く、さらに脳出血に関しては増加させる可能性もあることから、再発の危険性の高い人を対象に使う方がよい。心房細動に合併する脳梗塞も多く、この場合は出血性脳梗塞も少なくない。すべての脳梗塞(特に脳塞栓)に有効とは言っていないので注意が必要である。
【参考】
「スタチンに脳卒中再発予防効果」Medical tribune 2006年6月1日p6
2006.06.14記   2006.06.14修正