【トピックス(役立つ医学情報-循環器以外編No.18)】 
公開日2006.04.26 更新日2006.05.14  HOMEへ(メニューを表示)  メニューを隠す  
このページは、当院が興味を惹かれた医学情報(必ずしも最新ではありません)を紹介します。
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87)【喘息】喘息治療用のβ2吸入薬には、大きく2種類がある( 高難解度 )   2006.04.26記
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   【喘息】 ( 高難解度 )
(87)喘息治療用のβ2吸入薬には、大きく2種類がある。

まとめ:喘息治療用のβ2吸入薬には、発作時に使う短時間作用型と、非発作時に使う発作予防の長時間作用型に分けられる。長時間作用型は発作治療には向かない。お断り:以下は医師用のかなり専門的な内容です。
気管支喘息治療吸入薬、短時間作用性・長時間作用性β2刺激薬の使い分け
 一回の吸入で気管支拡張効果が12時間以上持続する吸入β2刺激薬は、LABA(long-acting beta2-agonist)と呼ばれ、作用時間がそれより短い吸入β2刺激薬はSABA(short-acting beta2-agonist)と呼ばれている。本邦で発売されているSABAには、サルブタモール(商品名:サルタノール吸入,ベネトリン吸入など)、プロカテロール(メプチン吸入など)、フェノテロール(ベロテック吸入など)がある。いずれも気管支拡張効果は6時間以内に消失する。
 SABAは一般に「発作止め」と呼ばれ、急性の喘息発作が生じた場合に頓用で用いる。吸入は加圧型定量噴霧で行っても、ネブライザーで行っても効果に差はない。通常、吸入から15分以内に効果が現れる。効果不十分の場合には反復吸入可能であるが、一時間に3回以上吸入しても効果が得られない場合や、一日に4回以上の吸入を必要とするような場合は、早期に医療機関を受診することが推奨される。
 また、 SABAは、6時間おきに一日4回というように定期的に吸入しても発作の予防効果はまったく得られない。SABAには抗炎症作用がなく、吸入ステロイド薬を併用せずに繰り返し使用していると、気道の炎症が進行し、気道過敏性が亢進して、発作はむしろ起きやすくなる。
  他方、LABAは発作予防と喘息コントロールのために、吸入ステロイド薬と併用して毎日定期的に吸入するための薬剤である。作用は12時間以上持続するので、吸入は一日2回でよい。食事の影響は受けない。LABAは吸入ステロイド薬との併用でステロイドの持つ抗炎症作用を増強し、かつ平滑筋の機能を改善する。多くの臨床研究のメタ分析により、低-中等用量の吸入ステロイド薬で喘息コントロールが不十分な場合には、吸入ステロイド薬を増量するよりもLABAを追加したほうが、呼吸機能改善、発作の抑制に有用であることが確認されている。
  国際的な喘息ガイドラインであるGlobal Initiative for Asthma(GINA)では、中等度持続型(ステップ3)以上の喘息に、吸入ステロイド薬と併用する第一選択薬としてLABAが挙げられている。従来、β2刺激薬に抗炎症作用はないとされてきたが、本邦で発売されているLABAであるサルメテロール(セレベント吸入)は抗好中球作用、細菌感染に対する粘膜保護作用など、独自の抗炎症作用を有する可能性が報告されている。ただ、サルメテロールは吸入してから気管支拡張効果が最大に発現されるまでの時間が30分程度と長いため、「発作止め」として使えない。
 また、LABAはCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療にも有用である。気管支拡張効果だけでなく、吸入ステロイド薬との併用で呼吸困難感の軽減、QOLの改善や急性増悪の減少、さらには死亡率の減少をもたらすことが知られている。

参考
日本医事新報(2006年3月25日)p86 同愛記念病院アレルギー・呼吸器科医長 鈴木直仁
2006.04.26記  2006.04.26修正