【トピックス(役立つ医学情報-循環器以外編No.17)】 
公開日2006.04.12 更新日2006.04.18  HOMEへ(メニューを表示)  メニューを隠す  
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85)【肺塞栓症】低リスクの肺塞栓症患者を識別する方法      2006.04.12記
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     【肺塞栓症】

(85)低リスクの肺塞栓症患者を識別する方法
まとめ:
年齢、血圧、病歴などの10の危険因子の観察で、肺塞栓症の早期死亡リスクが予想できることが発表された。
 ●低リスクの肺塞栓症患者を識別する方法
 ローザンヌ大学(スイス)のDrahomir Aujesky博士らは肺塞栓症患者について、簡単な10の危険因子の観察によって、早期死亡リスクが低い患者を識別にできると発表した(Archieves of Internal Medicine 2006;166:169-175)。
 識別する明白な臨床基準ない
 肺塞栓症は、下腿あるいは骨盤静脈で発生した血栓が離れ飛び、肺の血管(肺動脈)を突然、閉塞させておこる。長時間の飛行機搭乗後におこる『ロングフライト症候群(以前はエコノミー症候群と呼んだ)』もこの疾患である。
Aujesky博士らは「肺塞栓症は死に至る可能性があるが、呼吸不全などの重度な合併症を伴わず広範でない場合は、効果的かつ安全に外来で治療できることが示唆される」と述べている。
 しかし、「有害結果を生じるリスクが低い肺塞栓症患者を正確に識別する明白な臨床基準がないため、肺塞栓症の外来治療は広く受け入れられていない」という。
 ●過去のデータなどでモデルを検証
 Aujesky博士らは、退院する際に肺塞栓症と診断された入院患者1万354例に焦点を当て、早期(30日以内)死亡リスクが高いことを示す10の危険因子を同定した。
 その危険因子は、1)70歳以上2)癌3)心不全4)慢性肺疾患5)慢性腎疾患などの2)-5)の既往歴6)心血管疾患7)精神状態変化8)頻脈9)収縮期血圧低下10)動脈血酸素飽和度低下で、いずれの因子も持たない患者はリスクが低く、外来治療の適格例であると判断される。
 その後、同博士らは、当初の試験群の残りの参加者5,177例とスイス人PE患者221例を対象とする過去の研究データを用いて、自身らのモデルを検証した。これら両群で、同モデルにより低リスクと判断された患者では、30日以内に死亡したのは少数(それぞれ1.5%と0%)で、1%未満が死に至らない合併症を来した。同博士らは、実際に使うには、さらに検証する必要があると付け加えている。
 LisaK.Moores博士(ウォルターリード米陸軍医療センター(ワシントン))は、「この研究は、最初の研究という点で重要であるが、最初の問診と診察で容易に入手できる臨床データを用いて、リスクスコアが迅速かつ確実に算出できることが、さらに重要である」と述べている。
参考
Medical Tribune 2006.4.06 p1「低リスクの肺塞栓症患者を識別」
2006.04.12記  2006.04.18修正