公開日 2002.12.25 更新07.04.25 
記事は参考に留め,治療方針は診療医師と相談してください.
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の簡単な解説
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甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の詳しい解説はこちら
 

甲状腺機能亢進症


 甲状腺ホルモンが過剰になった状態を甲状腺機能亢進症といいます.女性によく見られる病気です.
「自律神経失調症」,「ノイローゼ」,「更年期障害」などの病気と間違われやすい病気です.
脈が速くて動悸がする,たくさん食べるのに体重が減る,汗かき,手がふるえる, イライラして落ち着きがない,
下痢気味,生理不順,首の腫れ (喉仏のあたり)などの症状がでます.

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また,代表的な甲状腺機能亢進症であるバセドウ病では,眼球突出や眼光が鋭くなる症状も3人に一人くらいみられます.
 甲状腺機能亢進症の約7〜8割がバセドウ氏病ですが,一過性に甲状腺機能亢進症になる無痛性甲状腺炎,亜急性甲状腺炎などの病気もあります.これらはバセドウ氏病とは治療が異なるので,両者を区別することが大事です.

バセドウ氏病


 バセドウ病は甲状腺を刺激する異常物質(TSH受容体抗体)が作られ,これが甲状腺を刺激し,甲状腺ホルモンが過剰に分泌されて起こります.
●脈が早い(頻脈),●甲状腺の腫れ(甲状腺腫),●眼球突出の 3つの徴候がそろっていると典型的ですが,眼球突出は1/3くらいにしかみられません.
眼球突出は有名な症状で,眼球を動かす筋肉や脂肪組織が腫大するためにおこります.

 女性では男性より約5倍に多く,発病は20〜40歳代に多くみられます.家族に同じような症状のある人は要注意です.出産後に発病したり,増悪することもあります.バセドウ氏病を疑えば,あとの診断手順は確立されており,血液中のホルモンや 自己抗体などの血液検査で比較的容易に診断できます.

 治療は甲状腺の切除手術が一部では行われますが,抗甲状腺剤 (メルカゾールなど)の内服薬が一般的です.ただし,甲状腺機能亢進症+びまん性甲状腺腫の約10%はバセドウ氏病ではなく,無痛性甲状腺腫と呼ばれ,自然に回復する病気です.この場合には抗甲状腺剤は不要です.

  抗甲状腺剤(メルカゾール)は最初に3〜6錠くらい服用し,徐々に減量していきます.ベータ遮断薬という,症状を軽減する薬もよく併用されます.抗甲状腺剤の量は血液中の甲状腺ホルモンが正常になるように調整してゆきます.たいていは1〜2錠に落ち着きます.この時点では症状も乏しくなり, 普通の日常生活が送れるようになることがほとんどです.しかし,残念ながら眼の症状は甲状腺の治療を行ってもよくなりません.

 薬をすぐに中止すると再発しますので,2年以上は続けることがほとんどです.中には10年以上も薬が必要な場合もあります.甲状腺を刺激する異常物質(TSH受容体抗体)が血液中からなくなると,薬を中止できることが多くなります.その場合でも再発することがあるので,引き続き通院が必要です.

 抗甲状腺剤では,肝臓障害湿疹(薬疹)白血球減少(とくに顆粒球減少)などの副作用が約10%にみられます.なかには気づきにくい重症の副作用も ありますので,定期的な血液検査が必要です.とくに治療開始から2ヶ月まではこれらの副作用が起こりやすいので,注意が必要です.

バセドウ氏病の手術適応】 日本医事新報2007.4.21p49
1)若年者
2)抗甲状腺薬の中止が困難である
3)甲状腺腫大が著しい(整容性)
4)抗甲状腺薬に反応しない
5)抗甲状腺薬による副作用(無顆粒球症、皮疹、肝障害など)のため継続困難
6)結節性甲状腺腫を合併している
7)早期寛解を希望している
【バセドウ氏病の術前処置と手術様式】

術前処置
抗甲状腺薬の投与を行い、甲状腺機能を正常化させた後で手術を行う。無顆粒球症などの重篤名副作用により抗甲状腺薬を継続できないものは、無機ヨードとβ遮断薬の併用で甲状腺機能をコントロールする。なお、エスケープ減少を避けるため、手術までの無機ヨードの投与期間は1〜2週間とする。

手術様式
  術式は甲状腺亜全摘とし、残置量を片側1〜2g、両側で4g位を目安とするが、将来抗甲状腺薬の投与が困難で、再燃が望ましくない症例に対しては、甲状腺全適、甲状腺超亜全摘をおこなう。