高コレステロール血症の薬物療法の治療効率を考える
一次予防(心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症など動脈硬化性疾患がないひとが対象)
公開日2006.09.08 更新日 2006.09.12 HOMEへ メニューを隠す
合併症のない女性の高脂血症治療効率(標準治療):ATPIIIから 
米国ATPIIIの冠動脈10年リスク評価ツールから求めたNNT(人/5年) 設定(血圧=120mmHg、TG=150mg/dl)
●標準治療=血清LDLコレステロール(LDLC)を基準値の140mg/dlまで低下させる治療。
●NNT(人/5年)=1/(治療前LDLC値の場合の10年リスク - LDLC値140mg/dlの場合の10年リスク)×2
 LDLCを治療前の数値から140mg/dlに低下させた場合の心筋梗塞・冠動脈死発生率の差から求めた。
 ただし、日本人での発症率は米国人の1/3とする。

1)すでに狭心症や心筋梗塞になった人、腹部大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症と診断された人は、この一覧表の対象者から除く。
2)間近の発表では、日本人の 心筋梗塞は米国の1/4とされている。ここで心筋梗塞の発症率を米国人の1/3としたのは、
  日本人の心筋梗塞の発症危険率を過小評価しないためである。
3)日本の高脂血症治療ガイドラインのLDLC目標値は年齢以外にリスクがなければ、140mg/dl未満、年齢+1つ以上あれば 、
  120mg/dl未満である。治療後のLDLC100mg/dlはこれらよりも低い値で、ガイドラインよりも強力に治療した場合である。
4)J-LIT(1)やMEGA studyなどの日本人の報告では、高齢者ほど高脂血症治療効果が高いとされており、欧米の報告とは逆である。
  その理由は明らかにされていないが、J-LIT(1)では心筋梗塞の発症が大変多い家族性高脂血症が多く含まれており、その影響が
  強く出たものと推測できないこともない。 MEGA studyでの理由は不明であるが、糖尿病や高血圧の合併率が高齢者でより高く
  なっている可能性は十分ある。

1)狭心症や無症状の冠動脈疾患(予後はよいわけではない)を考慮するとNNT値が100(人/5年)以下なら治療の意義がある
  かもしれない。しかし、上の一覧表のあるように合併症のない女性の場合、高齢や低HDLC血症(HDLC=40)にもかかわらず、
  治療後のLDLC値を100mg/dlとする強力なLDLC低下療法をおこなっても、NNT値は200(人/5年)以上となり、薬物治療は
 極めて非効率的と言えよう。薬剤による副作用発現率は年間数%はあると考えられ、NNT値が200(人/5年)以上なら、
  疾患発症減少頻度よりも副作用の発生頻度の方が高くなり、薬物療法療法はむしろ有害と考えられる。
2)欧米人に比べて日本人では、同程度の高LDLコレステロール血症でも冠動脈疾患発症リスクはかなり低いために、家族性高脂
  血症でもない、兄弟に冠動脈疾患がいない、糖尿病や高血圧、喫煙習慣などの危険因子の集積がない日本人女性では、
  LDLコレステロール値200以下の中等症または軽症の高脂血症の薬物療法はほとんど無用で、むしろ有害
と考えられる。
  生活習慣の改善を勧める必要があるかどうかも不明である。