■心房細動(頻拍性)による心不全■
頻拍コントロールにより心臓機能が改善した心房細動
公開日 2008.5.18  更新日 2008.5.18 左メニューを隠す TOPへ  

心臓断面の設定
左室の縦切り断面(左室長軸断面)
解説 

(1)初診時の心臓
 年齢50歳代後半の男性です。約2年前に脳梗塞(脳塞栓)となり、脳外科に入院しました。その時に心房細動を指摘されています。手足の麻痺や言語障害などの後遺症はありません。抗痙攣剤とワルファリンを処方されていました。退院後は自覚症状はありません。
 外来での待ち時間が長いことと、抗痙攣剤により強い眠気が生じるために、当院を受診しました。
  血圧130/98mmHg、心拍数110-130/分。甲状腺機能正常。血漿BNP値 636ng/dl。
 仕事は軽度の肉体労働ですがが、仕事中に疲れは感じないと言います。下腿浮腫なし。  
心腔の大きさの計測値
左室の短径:拡張末期(最大時)59mm、収縮末期(最小時)51mm。
 体格からして、左室は中等度拡大している。収縮末期径はかなり大きい。
左室の動きの指標:左室駆出率28%、左室径短縮率14%
 頻拍時の検査である影響もあるが、左室壁運動は高度に低下している。
左房前後径:57mm(最大時)拡大している。
血漿BNP値とは何か

自覚症状はありませんが、緊張もしていないのに臥位安静時の心拍数が、120-130/分という明らかに心臓の負担が増える心拍数です。心拍数だけで心不全の存在が疑われまする。慢性心不全は徐々に起こるので、中等度の心不全までは自覚症状がないことも少なくないのです。検査でもこの予想を裏付ける結果となっています。胸写では心胸比54.5%と心拡大あり。血漿BNP値は500ng/ml以上とかなり上昇。
  治療を要する心不全と診断しました。このような病態で最も効果のあるとされる薬剤(β遮断薬)を少量から開始することにしました。  
グラフ:左室径や左室の動きがどのように変化したかをみる
 

(2)治療後: 約6ヶ月後
 途中経過は、検査資料が抜けていることもあり、6ヶ月後のみを提示します。アーチストというβ遮断薬の内服療法により、心拍数が低下しています。利尿剤は使っていません。ワルファリンは継続投与しています。検査記録中の心拍数は約70-75/分(検査中66-97/分、心房細動)です。
 心腔の大きさの計測値
左室の短径:拡張末期(最大時)52mm、収縮末期(最小時)41mm
左室の動きの指標:左室駆出率42%、左室径短縮率19%
 左室壁運動は軽度低下に改善。
左房前後径:57mm(最大時)
左室は小さくなり、左室壁運動は改善した。

β遮断薬による治療により、1ヶ月から心拍数が安静時90/分未満になりました。自覚症状も労作時の息切れがしなくなり、仕事が楽になったと言っています。胸部レントゲン写真での心臓の大きさ:心胸比は54.5%→51%へと軽度縮小しています。心エコー検査での左室径は57mm→52mmと縮小し、左室壁運動も改善し、左室駆出率は28%→42%と著明改善しました。血漿BNP値は 636ng/dl→ 217ng/dlと著明改善しました。心拍数の低下とともに、心不全重症度の客観的指標も明らかに改善した。

(1)初診時の心電図(I 誘導)
心拍数は110-130/分の心房細動。

(2)6ヶ月後の心電図(I 誘導)

心房細動は続いていますが、心拍数は66-97/分に減少しています。

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