■頻拍性心房細動頻による心不全■
頻拍コントロールにより心臓機能が改善した心房細動
公開日 2009.5.18  更新日 2009.6.28 左メニューを隠す TOPへ   
左室の縦切り断面(左室長軸断面)
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年齢50歳代後半、男性。約2年前に脳梗塞(脳塞栓)となり、脳外科に入院。その時に心房細動を指摘されている。手足の麻痺や言語障害などの後遺症はない。抗痙攣剤とワルファリンを処方されていた。退院後は自覚症状はない。
 外来での待ち時間が長いことと、抗痙攣剤は眠気が強く、実際のところ3ヶ月以上も内服していなかったので、当院に相談にやってきた。
  血圧130/98mmHg、心拍数110-130/分。甲状腺機能正常。BNP 636ng/dl。
 仕事は少し肉体労働があるが、仕事中に疲れは感じないという。下腿浮腫なし。  
心腔の大きさの計測値
左室の短径:拡張末期(最大時)59mm、収縮末期(最小時)51mm
 体格からして、左室は中等度拡大している。収縮末期径はかなり大きい。
左室の動きの指標:左室駆出率28%、左室径短縮率14%
 頻拍時の測定の影響もあるが、左室壁運動は高度に低下している。
左房前後径:57mm(最大時)拡大している。

グラフ:左室径や左室の動きの経時的変化

自覚症状はありませんが、緊張もしていないのに臥位安静時の心拍数が、120-130/分という明らかに心臓の負担が増える心拍数です。心拍数だけで心不全の存在が疑われまする。慢性心不全は徐々に起こるので、中等度の心不全までは自覚症状がないことも少なくないのです。検査でもこの予想を裏付ける結果となっています。胸写では心胸比54.5%と心拡大あり。血漿BNP値は500pg/dl以上とかなり上昇。
  治療を要する心不全と診断しました。このような病態で最も効果のあるとされる薬剤(β遮断薬)を少量から開始することにしました。  

(1)初診時の心電図(I 誘導)心拍数約120-130/分の心房細動。
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