年齢ほぼ90歳、143cm 、細身、 小柄な女性。治療中の疾患は、高血圧、甲状腺機能低下症、一過性脳虚血発作、喫煙習慣有り。
●心筋梗塞と診断された時の状態
2ヶ月前の心電図は正常で、たまたま記録したこの日の心電図は典型的な前壁中隔心筋梗塞の所見でした。いつ梗塞になったか、自覚症状からは分からなかった。当日の血液検査では、急性心筋梗塞の初期に上昇する血清酵素(CPK-MB
= 8U/L ,心室筋ミオシン軽鎖I= 2.4ng/ML)は正常値でした。心不全の指標である血液中のBNPは 833.5 pg
/ml(正常<約20)と大きく上昇してた。 検査記録中の心拍数は70/分(洞調律)。なお、心筋梗塞になったばかりの時に、詰まった冠動脈を再潅流療法によって、血流再開してあげると心室瘤にはなりにくい。急性心筋梗塞は、発症から数時間以内に治療を開始することがとても大事です。
なお 後日、いままでできなかった禁煙を実行して、1週間後に息切れがなくなりました。これは、肺の働きがよくなった結果で、心筋梗塞はもとに戻りません。
(3)心筋梗塞と診断された時の心臓 この時の心電図をみる
左室心尖部に心室瘤が生じている。心室瘤は心筋梗塞になって壊死した心筋がまだ柔らかいときに、心臓内圧によって瘤〔こぶ〕状に押し広げられた状態で、強固な線維組織に置き換えられたものである。瘤の内壁には血栓が付着したり、瘤の薄く弱い部分が破裂したりする危険性がある。この心室瘤の大きさはそれほど大きいわけでなく、心室瘤壁厚も特に薄い部分もなく、すぐに破裂する危険性はない。ただし、瘤の大きさがどんどん大きくなる場合は、破裂の危険性が高まります。左室の基部(画面上の左室の右半分)の内径は心筋梗塞になる前41mmから47mmへ大きくなっています。また、左室径短縮率は26%から38%へ大きくなっています。このことは、「心筋梗塞になっていない部分の左室で、以前よりもたくさんの血液を送り出している」ことを示します。
心腔の大きさの計測値(左室拡大あり)
左室の短径:拡張末期(最大時)47(心室瘤部分52)mm,収縮末期(最小時)29mm
左室の動きの指標:左室駆出率67.5%,左室径短縮率38%
左房前後径:39mm(最大時)
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