【新聞・雑誌記事】 公開日2018.03.07 更新日2019.01.18  HOMEへ メニューを隠す   前へ  次へ  掲載記事一覧へ


サンデー山口2018年12月26日号

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2009年11月放送のNHK番組ためしてガッテンで「安全入浴術」という特集がありました。血圧低下から意識障害、さらに少量のお湯を肺に吸い込むことによりショックを起こすという説を唱えていました。このときから入浴事故に興味を持ちました。
  当院外来にて 高齢者を中心に約400人に「入浴事故を知ってますか」と聞き取り調査を行いました。一部には重複があると思いますが、合計120人超の入浴事故がありました。中には両親とも入浴死、20歳代での死亡もありました。一方、シャワーやぬるま湯入浴の欧米人では入浴事故はほとんどないという情報も入ってきています。日本式入浴の入浴事故対策は十分でないと感じました。
2018年11月頃、「入浴事故は温度差によるヒートショック」という内容の民放番組が2つありました。消費者庁のホームページでもこの説に基づいたような入浴事故対策「入浴前室を暖かくする」という記載がありました。
  一方で、私が住んでいる山口市(近くに湯田温泉があります)では、温泉や銭湯の入浴事故に遭遇した人がたくさんいました。言うまでもなく、温泉や銭湯では前室には暖房があり、全く寒くありません。この時、「入浴事故の本当の原因はまだわかっていない」と思いました。
  そこで2018年再度入浴事故に関する詳細な聞き取り調査記録を行うことにしました。調査途中で追加した項目があり、まだ調査の途中です。現在までに、400例超の協力が得られました。 参考となる症例がたくさんあり、あらたな真実が示唆されました。特に、倒れて回復した人の話が大変参考となりました。
  一部ですが、それから推論された結果を列挙すると、、
「入浴事故はほとんど意識消失が先行する」「意識消失直後からの回復は可逆的であり、すぐに浴室から出して、身体を冷やすと15分以内程度で後遺症なく回復する」「意識消失から死亡までの時間はかなり短い(5分以内?)」「入浴事故の主因は熱中症である」「入浴事故に最も影響する要素は、湯温、入浴総時間ではなく、首までどっぷり浸かっている時間である」「温泉・銭湯での事故率はむしろ高く、前室を暖かくすることが入浴事故を減らす効果がある結果は得られなかった



サンデー山口2018年10月31日号

8/30記事

最近、インフルエンザ予防接種期間が、前倒しになっています。10月になったら「早く接種した方がよい」と言われて接種した高齢者が増えています。テレビで、10月にインフルエンザ患者さんが出たと聞いて、今年は流行が早いようだと、慌てて受診する人もいます。逆に、11月末になって13歳未満の児童が1回目のワクチン接種に来ることも少なくありません。1回接種よりも2回接種の方がよく効くと思っている人も少なくありません。患者さんだけでなく、医師の知識もレベルが低いことも少なくありません。
  例えば、「インフルエンザワクチン接種の目的は、インフルエンザ患者の減少ではない」「肺炎球菌ワクチンよりもインフルエンザワクチンの方が肺炎予防効果がずっと高い」「なぜ大人は1回接種でよいのか」「妊婦は接種した方がよいのか」「インフルエンザの生ワクチンはないのか」。これらの質問にすべて正確に答えれる医師は意外と少ないようです。


サンデー山口2018年8月30日号

8/30記事

2018年夏は記録的猛暑です。今回は知っておきたい補給する水分の種類に関するお話しです。
マスコミでは、「水分」、「お茶」、「スポーツドリンク」、「経口補水液」、「カフェインのないお茶」、「真水はよくない」、「喉が渇く前にこまめに水分補給をする」などの繰り返し、伝えています。マスコミの報道はしばしば偏った内容が多いので注意が必要です。マスコミで偏った医学情報が発信される一番の原因は、CMや番組のスポンサーの存在です。例えば、「お茶やスポーツドリンクなどで水分を取りましょう」との報道は、スポンサーから喜ばれますが、「麦茶は安くて、糖分も少なく、ベストです」とか、「スポーツドリンクは糖分が多いので糖尿病の方や、熱中症になって吐き気がある人には向きません」などとスポンサーからすると余計な報道ということになります。
  そこで、こういった商品のスポンサーへの気遣いを無視した「激しいスポーツをしている人以外の一般人のための水分補給」をまとめてみました。文字枠があるため少し舌足らずのところがありますが、放送される内容よりは実際に使える内容です。ここでは紹介していませんが、冷たい牛乳も胃腸に優しく、夏ばて予防やタンパク質が不足がちな高齢者にお勧めです。


サンデー山口2018年6月29日号

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睡眠時無呼吸症候群の一般的な説明です。「無呼吸」という言葉から、呼吸器科領域、または耳鼻科領域の疾患を思いがちですが、睡眠時無呼吸症候群で臨床上問題になるのは、「いびき」「日中の眠気による仕事や交通事故への悪影響」「無呼吸、低酸素血症による身体的なストレスによる、脳血管、心臓疾患、高血圧症が2-3倍の増加」です。疾病としては循環器領域の疾患が主体となっているので、循環器科で治療するのが良いと考えています。


サンデー山口2018年4月28日号

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今回は急性心筋梗塞※の症状についてお話しします。
  急性心筋梗塞の症状というと、『突然生じる強い胸痛』というイメージがあります。しかし、高齢者においては胸痛があるのは約半分と言われています。実際に高齢者でよく見かける症状は、『胸痛と気分不良(冷や汗など)』『吐き気と上腹部痛』『気分不良』が多いので、医師ですら急性心筋梗塞を見逃すことも少なくありません。特に、吐き気がある場合は胃腸の異常と勘違いされることがしばしばあると聞いています。
 こういった見逃しがないようにするには、1)上腹部が痛い、または吐き気がする、2)冷や汗を伴う気分不良では、まず、心筋梗塞ではないかと疑うことが大切です。とくに、中年以降の男性または60歳以上の女性では確率が高くなります。
 心筋梗塞が完全に否定できたあとで、消化器疾患の診断に移ります。
 急性心筋梗塞ではないかと疑ったら、まず心電図を取ります。ただし、循環器専門医でないと見逃しやすい心電図異常もありますので、心電図の判読には慎重な判断が必要です。心電計に付属した自動診断による急性心筋梗塞の否定では、全く不十分です。血液中の心筋特異的トロポニン検査も役立ちますが、どこの診療所にでもあるわけではありません。心エコー検査ではさらに梗塞の部位、広がりまでわかりますが、できるだけ早く、治療ができる病院に紹介した方がよいので、診断が付いたらすぐに転送することを優先します。

※急性心筋梗塞は、血管が閉塞した早期には、まだ心筋は壊死していない、つまり梗塞にはなっていないので、急性冠症候群と呼ぶことが多くなっています。


サンデー山口2018年2月28日号

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 日本動脈硬化学会は冠動脈疾患のリスク評価法を2018年7月に、NIPPON ATA80から『吹田スコア』に変更しました。吹田スコアは、2014年春に国立循環器病センターが発表したもので、大阪吹田市周辺住民の10年間の調査から得られたデータです。冠動脈疾患リスク評価法として、一部には問題批判はあるものの、日本人を対象とした現在利用できる唯一の実用的なツールと考えています。
  日本動脈硬化学会は、吹田スコアを変更修正して、以前のガイドラインとすりあわせています。しかし、修正の根拠は全くなく、無理があります。ここではオリジナルの『吹田スコア』による冠動脈疾患発症リスク評価をお勧めしました。
  その理由は
1)高コレステロール血症治療に携わるほとんどの医師が、「高LDLコレステロール値=高リスク」と単純に考えて、低リスク患者に内服治療を勧める図式ができあがっています。そのために、非常に多くの無駄な処方がなされています。
2)もう一つの理由は、日本動脈硬化学会は製薬会社と癒着し、薬が売れるように低リスク患者を高リスク患者と読み間違えるようなからくりを、そのガイドラインの中にちりばめています。
 当院では、そういった修飾のないオリジナルの吹田スコアを使い、高リスクの人のみに薬物療法を勧め、いたずらに患者さんの不安を煽らないようにしてほしいと願っています。吹田スコアは、国立循環器病センターのサイトに載っていますので、是非読んでください。
 なお、吹田スコアをより簡単に使えるように表計算ソフトを使ったツールを作成し、当院のHPで紹介していますので、試してください(DOWN LOADのページ)。