【新聞・雑誌記事】 公開日2017.02.24 更新日2018.01.14 HOMEへ メニューを隠す 前へ 次へ 掲載記事一覧へ
入浴中に亡くなる人は、東京都23区の調査では交通事故の3倍だったと言われています。シャワー中心の海外では入浴中の死亡事故はほとんどない。東京は地方に比べて、高齢者が少なく、またシャワー浴の割合も多い。当院(山口市)の聞き取り調査では、交通事故死に比べると桁違いに入浴時の死亡が多かった。自分の親が入浴中に亡くなった人が当院だけでも10人いました。中には両親が亡くなった人がいました。 |
NHK「ためしてガッテン」は人気の健康番組です。私も録画して欠かさず見ています。また、ガッテンのホームページでは、放送終了後に、放送のまとめが印刷できるようになっています。めまい対策、入浴時死亡対策、転倒予防、腰痛対策、筋トレの方法など私の知らない貴重な情報が少なくありません。しかし、希に変な放送内容もあります。「腕をマッサージすれば薬を使わなくても血圧が下がる(測定時の血圧がさがるだけで、普段の血圧は変化しない)」、「新しい痛風予防の薬ができました(画期的でもない新発売の薬の宣伝に過ぎない)」、「肺炎球菌ワクチンは5年経ったら再接種すればよい?(1回摂取群と2回摂取群で効果に差がない)」、「動脈硬化予防にはコレステロールが大事(高コレステロール血症と相関があるのは、心筋梗塞、しかも中年女性の心筋梗塞リスクは、男性の約1/6)でLHLC200mg/dlでもリスクは低い」などが気になった放送です。 |
心臓病に限らず、急性疾患の回復処置(リハビリなど)はできるだけ早期に行う琴が医療の常識となっています。手術の後長期に寝た状態での安静を続けると、下肢の静脈に血栓が生じて、流れて肺の血管に詰まり、重篤な肺塞栓症のリスクが高まります。ロングフライト症候群(=エコノミー症候群)と同じ機序です。記事には書いていませんが、15年前、私が勤務医の頃は、冠動脈ステント留置術後の早期の運動では血栓による閉塞が増加するので、2週間は運動負荷検査や早歩き等の運動も禁止となっていました。 |
高血圧症は治療が必要ですが、低血圧症はどうなのでしょう。脳の病気による高度の自律神経障害がある場合は、起立時に血圧が60mmHg以下にもなり、失神するような人もいます。このような場合は低血圧の対策なしでは、普通の日常生活は送れません。しかし、「低血圧で朝が起きづらい。身体がだるい」などは必ずしも薬物による積極的な治療の必要はありません。なぜなら、血圧を上げる薬剤を使用しても症状改善も軽度ですし、その人の寿命が延びたり、合併症が減るなどの予後の改善もありません。 |
高コレステロール血症を扱う専門の学会は『日本動脈硬化学会』です。産学癒着の非常に強い学会です。今年、同学会は5年ぶりに『動脈硬化性疾患予防ガイドライン』の改訂を行いました。本来、動脈硬化は、血液中のコレステロール値よりも、年齢、性別、高血圧、糖尿病、喫煙の影響のほうが、ずっと強いのに、それらを総合した『動脈硬化予防』の主役が同学会になっていることに強い違和感を覚えます。当然、我田引水となり、高コレステロール血症を動脈硬化の主役級に引き上げています。 発症相対リスクと発症絶対リスクについて 1)相対リスク評価の例(心臓病死亡率も相対的発症率の代用にすぎない):「コレステロールが40mg 高いと心筋梗塞が●●%増加する」。「10歳の子供は70歳の高齢者の○○倍心筋梗塞が増加する」。両者とも何%、何倍から治療薬が必要か判断できない。例として、以下が間違っているのは、直感的にもわかりますよね。「女性は男性の100倍乳がんになりやすいので、女性は全員、乳がん予防薬をのむべきだ!?」。 |
最近の脳ブームの影響もあり、『めまい』があると脳外科診療所を受診する人が増えています。脳外科は必要もないのにMR検査を行って、「脳血管に狭窄がある。血流をよくする薬を出しましょう。年に一回脳のMR検査を行いましょう。頸動脈エコー検査をやりましょう。」とワンパターンで検査治療セットを患者に押しつける例を数多く見ています。まともな医師からみると明らかなインチキ診療です。めまいのほとんどは脳外科と関係ありません。また、脳血流改善薬の効用はかなり限定的で、効果と副作用を考慮するとほとんど不要です。 |