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公開日2015.05.30 更新日2016.10.30    HOMEへ  メニューを隠す  前へ 次へ
 このツールは、高コレステロール血症の治療にあたる医師へ「どの人がハイリスクで、どの患者に薬物療法が必要なのか」を知っていただくために作成したものです。
ただし、結果の解釈には十分な医学知識が必要ですので、ご注意ください。このツールの利用により生じたいかなる結果に対しても当院は責任を負いません。

■吹田スコアによる心筋梗塞発症リスク評価ツール
2014年3月25日国立循環器病研究センター発表
☆吹田スコアv1a 2016.11.01 修正 (Microsoft Excel file,Macro なし )  DOWNLOAD
改善内容1)腎臓機能評価のeGFRの計算機能を追加、2)評価基準を若干修正。

●利用時の注意
・ネット上で公開された表をもとに急性心筋梗塞の発症確率を計算しました。
国立循環器病センター広報活動>プレリリース> 冠動脈疾患を予測する新しいリスクスコアの開発
http://www.ncvc.go.jp/pr/release/006484.html
・2015年5月現在入手できる日本人の冠動脈疾患リスク評価法でもっとも実用的なものと思います。
・「代表値」、「評価基準(暫定)」、「NNT(治療効率)」、「NNT評価、「NNTによる治療効率の推測」は当院が独自で追加した評価項目です。
・ 使用に当たっては、Microsoft EXcel が必要です。Open Officeなど互換ソフトでも使用可能と思いますが、レイアウトが崩れ、印刷の再設定が必要となります。シート保護を外して、修正してください。  
・プログラムのバグ、表記の間違いなど、お気付きの点がありましたら、以下にメール下さい。同意できる内容であれば、速やかに対応します。
toshiaki*ymg.urban.ne.jp】  *印は@に置き換えてメールしてください(迷惑メール対策です)。

☆吹田スコアv1.02の評価基準(変更前)
v10201
☆吹田スコアv1.1の評価基準(変更後)
v110

ツール制作の背景

●なぜ急性心筋梗塞リスク評価(絶対リスク評価)が重要なのか?
  残念ながら高コレステロール血症の診療にあたる大部分の日本の医師は、日本での高コレステロール血症の薬物療法が極めて過剰に行われていることを認識していません。適切な薬物療法を行うためには、LDLコレステロール値で投薬の適否を判断するのではなく、心筋梗塞の絶対リスクを知り、ハイリスク患者に処方することが大切だと米国のFDAのガイドラインで繰り返し述べられています。 日本動脈硬化学会のガイドラインでは、建前は米国と同様に「絶対的リスク評価で、ハイリスク患者に投薬する」とあるのですが、心筋梗塞の発症リスクではなく、死亡リスクを基準にしているために、結果的には相対的リスク評価となっています。これではどのレベルから予防対策が必要なのか判断できません。

●なぜ血清コレステロール(LDLコレステロール)値が高いとよくないのか?
  「 高コレステロール血症はすべての動脈硬化を影響する」と思っている人が医師も含めて多いようです。しかし、高コレステロール血症と関わり合いが強いのは心筋梗塞と一部のアテローム性動脈硬化です。
 動脈硬化学会が一番のよりどころとしている論文NIPPON DATA 80では 「脳卒中はコレステロール値が低い方が多い」 ことがわかっています。このことは意図的に?周知されないように同ガイドラインや講演会では無視されてきたのでほとんどの医師がこのことを知りません。参考までに、下肢の動脈硬化(閉塞性動脈硬化症)は喫煙の影響がとても強く、高血圧症、糖尿病、加齢の影響も受けます。しかし、高コレステロール血症の影響を報告したものは知りません。 世界中の調査で、総コレステロール値280mgi以下なら、女性は心筋梗塞は増加しない(280mg/dl 以上で増加するとも言ってません) となっていることもほとんどの日本の医師が知りません。女性は健診でコレステロールを毎年測定する必要はないとも言われています。

● 血清LDLコレステロール値がどのくらいになったら、薬物療法が必要なのか?
 年齢、性別、高血圧、HDLコレステロール、糖尿病など、 血清コレステロール値よりも重要な因子がたくさんあるので、LDLコレステロール値だけでは心筋梗塞の発症リスクが高いか低いかはわかりません。

なぜそんなことが言えるのか?
  それは先進国の中で最も心筋梗塞が少ない国が日本である(米国の約1/4〜1/3?)にもかかわらず、日本では高脂血症治療薬を突出して多く処方している(欧米の8倍以上?)。日本だけが、冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症など)の絶対リスク(10年間に心筋梗塞とその周辺疾患になる確率)をもとに、高リスク者を適切に選択し、高コレステロール血症の治療を行うということをしていません。
 現在日本では、「動脈硬化学会」の脂質異常症治療ガイドラインが事実上の高コレステロール血症の診断と治療の標準となっていますが、当学会は2012年?の改訂版から「絶対リスクに基づく治療ガイドライン」にしたと唱っていますが、まったくの嘘です。ガイドラインの基礎となる資料は「NIPPON DATA 80」です。心筋梗塞による心臓死の絶対リスクで、心筋梗塞発症の絶対リスクではありません。そのために、実質的には相対的な心筋梗塞リスク評価となっています。
  また、最重要因子の一つであるHDLコレステロール値が評価因子に含まれていません。このNIPPON DATA 80の調査結果をすなおに読むと高コレステロール血症の影響は男性に限定的であり、女性はほとんど影響ありません。学会や製薬会社が招いた講演者は65歳未満の女性では高コレステロール血症があっても極めて低リスクであることを2012年くらいまで完全に隠していました。現在でも血清コレステロール値が高いほど、脳卒中リスクが低くなっていることを、恣意的に隠しています。

●日本の脂質異常症の薬物療法が過剰となっている原因は?
 
その裏には学会と製薬会社の金銭的な強い産学癒着があります。日本動脈硬化学会では「冠動脈疾患の絶対リスクに基づく診療を推奨する」趣旨を発表していますが、実態はこれとかけ離れています。絶対リスク評価の研究で日本人で絶対的なものがないことをいいことに、今までの主張に都合のよい不完全なものを恣意的に参照しています。そして問題だらけのガイドラインを自画自賛しています。海外とのガイドラインの違い(血清コレステロールの基準値が20mg/dl低いこと)を指摘すると、「哲学の違い」というあきれる回答があったとありました

●日本人の心筋梗塞絶対リスクの大規模調査はないの?
 米国のフラミンガム・スタディに相当する実用的で信頼性の高い絶対的な研究はありません。日本人の心筋梗塞や狭心症発症リスクを広く、長期間扱った調査の発表は少ないのですが、そのひとつにJapan Arteriosclerosis Longitudinal Study(JALS)があります。
JALSのサイト(http://jals.gr.jp/)で、JALS急性心筋梗塞リスクスコアシート(Micro Soft Excel file)として、公開されています。なお、このツールでは狭心症、冠動脈狭窄、閉塞の冠動脈手術などが含まれていないため、冠動脈疾患リスク評価は低くなります。
 その後、ここで取り上げた「吹田スコア」が2014年3月にネット上で発表になりました。

●吹田スコアとは 
  国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)予防医学・疫学情報部研究チームは、心筋梗塞などの冠動脈疾患(心筋梗塞、冠動脈バイパス術、冠動脈形成術、24時間以内の内因性急性死)の10年間の発症危険度を予測する新しいリスクスコアを開発し、「Journal of Atherosclerosis and Thrombosis」オンライン版に平成26年3月25日付で掲載しました。
  【背景】
  日本人の心筋梗塞発症リスクは欧米人に比べて極めて低く、欧米で用いられいるフラミンガム リスクスコア(FRS)は、そのままでは日本人には使えません。一方、慢性腎臓病(CKD)は近年冠動脈疾患の リスクとして注目されているが、FRSでは検討されておらず、CKD患者にFRSを適用すると冠動脈疾患発症リスクが過少評価されることが知られています。この度、吹田研究をもとに都市部住民を対象として、CKDを含む危険因子を組み合わせて冠動脈疾患の10年間の発症危険度を予測するリスクスコアを開発し、その妥当性をFRSと比較検証しました。

【調査対象と方法】
  心筋梗塞および脳卒中の既往のない5,866人の対象者(男性2,788 人、女性3,078 人, 平均年齢: 54.5 歳)を平均11.8年追跡して213例の冠動脈疾患を観察しました。実際の臨床上に使いやすいよう各リスクに割り当てられた点数を足し合わせることで、 10年間の冠動脈疾患発症確率を簡単に予測できるようにしました(吹田スコア:表1表2)。

suitascore1 suitascore2
 

【結果】
  FRSは発症確率を過大評価する傾向にありました(最大で約14%)。一方、吹田スコアは実際の発症確率とほぼ同様に冠動脈疾患の発症を予測できました。また、リスクスコアにCKDを含むことでより正確な予想 が可能となることが明らかになりました。

【セキュリティ対策】
 
このツールはMicrosoft Excelで作っているので、マクロウイルスなど悪意のある改造が可能です。ウイルス対策のために、マクロプログラムは含まれていません。そのため自動印刷ボタンなどはありません。印刷設定を変更したい場合は、シート保護を解除(パスワードなし)して、変更してください。変更後は、再度シート保護を行うと不注意によるプログラム変更ミスを防げます。参考までに計算のためのシートは非表示にしていません。吹田スコアの解説シートを付属しています。ブック保護解除もパスワード不要で可能です。つまり、悪意のある改ざんが簡単にできますので、当サイト以外で入手したものはご注意ください。

【使い方】
  「名前」欄と黄色で示した「8つの主要冠動脈危険因子」欄を入力してください。
自動的にスコアの総得点から10年間リスク値、グラフを表示します。米国FDAは急性心筋梗塞や心臓突然死などの重症冠動脈疾患の10年間発症リスクが、10%未満を低リスク群、20%以上を高リスク群としています。これを参考に、評価基準も提示しましたが、広く認められた一般的な評価というわけではありません。
 印刷する場合は手動で、「入力」シートから「印刷」シートに変更し、通常の印刷を行ってください。初期設定ではA4横1ページに収まるようにしています。印刷シートや計算シートはかならず保護した状態で使って下さい。プログラムが変更されると、間違った結果がでる可能性があります。
 血液検査でLDLコレステロール値がなく、総コレステロール値、HDLコレステロール値、中性脂肪値しかない場合のために、LDLコレステロール値を下記の計算で求めることができるようにしています。適時お使い下さい。 
     LDLコレステロール値=総コレステロール値- HDLコレステロール値 - 1/5X中性脂肪値 
     Friedewaldの推算法、ただし、TG値400mg/dL未満の場合のみ適応可

【最後に】
  当院は、高コレステロール血症の治療が不要と主張しているのではありません。
日本国内で高コレステロール治療薬の乱用を危惧しています。すでに狭心症や心筋梗塞になった人、家族性高コレステロール血症の人には、積極的なコレステロール低下薬(スタチン)を使うことをお勧めしています。しかし、LDLコレステロール値が220mg/dlあるから、または、総コレステロール値が300mg/dlあるからというだけでは、女性の心筋梗塞発症リスクは極めて低いことが、いろいろな研究やリスク評価ツールからわかっています。当然、薬物療法も食事療法も不要ですと説明しています。また、高コレステロール血症で脳卒中は増えていませんし、脳卒中の予防にスタチンが効くという大規模調査結果はありません。冠動脈疾患リスクを評価を行わずに、LDLコレステロール値だけをみて、スタチンを処方するという治療法は2013年?の米国の高コレステロール治療ガイドラインでもはっきりと否定されています(そういったWEBニュースがありました)。  高脂血症治療薬を安易に処方する医師は避けることをお勧めします。


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作成者:前田敏明(まえだ循環器内科) 2016年09月02日修正