トピックス(役立つ医学情報-No.40)】
公開日2015.04.10 更新日2015.06.22 HOMEへ(メニューを表示)  メニューを隠す  
  このページは、当院が興味をもった医学情報を紹介しています。内容のレベルは医療従事者向けで、一般向けでない場合も多いのですが、できるだけわかりやすく解説するようにしました。冗長な表現を避け、「である調」にしました。情報源は、医事新報、日経メディカル、新聞、ネット配信記事などです。明らかに製薬会社の利益を優先した内容は避けました。情報は必ずしも最新のものとは限りません。また、記事の内容を保証するものではありません。あくまでも参考に留めてください。

147)「血管年齢」検査は、個人の動脈硬化評価法としてほとんど役に立たない 2015.4.10記
146)経口血糖降下薬メトホルミン(ビグアナイド系)が近年見直された 2015.4.10記
145)予防接種は同時接種しても構わない 2015.4.10記
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       【循環器】
 (147)「血管年齢」検査は、個人の動脈硬化評価法としてほとんど役に立たない 

まとめ:動脈硬化の進行は動脈の部位によって、リスク因子の重みが異なるため、全身の動脈硬化を単一の指標で評価することはほとんど意味がない。

「全身の動脈硬化」を評価する、「血管年齢」を推定する検査は一般によく知られている。代表的な検査として「脈波伝達速度」を測定する検査がある。しかし、これらの検査は「心臓・血管の専門家からの評価は極めて低い」ということは知られていない。脈波伝達速度の検査は心臓から拍出された血液による血管壁の振動が、大動脈の起始部から腕または足の末端動脈まで伝わるまでの時間を調べる。大動脈や動脈の振動の伝達速度が血管が硬いほど短くなる原理を利用する。一見、有益な動脈硬化の評価法のようだが、血管の硬さは、血管壁の厚さ、弾性だけでなく、血管の収縮程度や血圧の高さに強く影響される。そのため、計測のたびに結果が大きく変動する。血管年齢10-20歳は誤差の範囲内となり、個々の評価法としては有用ではない。
 さらに、重要な問題点として、個人にとって大切なことは、動脈全体の平均的な評価ではなく、重要部位の局所の異常があるかどうか、また近い将来発症しやすいかどうかです。血管の全総長は約10万Kmありますが、その内数カ所に閉塞や破裂の危険性がある場合、数が問題になるのではなく、重要部位の閉塞や破裂リスクが問題となります。野球で言ったら、平均打率ではなく、重要な試合の重要な場面での打率が問題となります。
  また、現時点では、閉塞や狭窄がなくても、重要部位の動脈壁が弱くなって、近い将来に破裂や閉塞の危険性が高い場合も問題です。全体の評価より、局所評価や現時点ではなく、近い将来のリスク評価が大切なのです。
 脈波伝達速度の検査に強く影響する因子は年齢と血圧です。それなら、この検査を受けなくても、血圧と病歴を聞き取るだけで、より正確なリスク評価ができます。2つ以外の重要因子を含めてリスク評価すれば、遙かに正確にリスク評価できます。
  具体的には動脈硬化による心筋梗塞、脳卒中のリスク評価でもっとも信頼できるのは、動脈硬化の危険因子のチェックによるリスク評価です。主要危険因子には、年齢、性別、高血圧の有無、血圧値、喫煙習慣、脂質異常、糖尿病、腎臓機能、などがあります。有名な悪玉コレステロール値と善玉コレステロール値は心筋梗塞リスク評価には重要ですが、脳卒中リスクには重要ではなく、通常危険因子として取り上げられていません。心筋梗塞リスク評価では、善玉コレステロール値は悪玉コレステロール値よりもずっと重要です。

2015.04.10記  2015.06.22修正


       【糖尿病】
 (146)経口血糖降下メトホルミン(ビグアナイド系)のが近年見直された

まとめ: ビグアナイド系の血糖降下剤メトホルミンが、近年大きく見直された。 

 一般名メトホルミン(商品名グリコラン、メルビン、メトグルコなど)は、古くから使われているビグアナイド系経口血糖降下薬である。主に肝臓での糖新生の抑制により血糖降下作用を有する。インスリン分泌を促進することないため、体重増加を来すことがない、低血糖を起こしにくい、膵β細胞を疲弊させないなどの長所がある。ビグアナイド系類薬による乳酸アシドーシスによる死亡が問題となり、一時ほとんど使用されなくなった。
 しかし、メトホルミンは1990年代に行われた大規模臨床試験によって、高く評価された。副作用も少なかったため、第一選択薬の一つとなった。メトホルミンの効果は用量依存的で、1日750mgの低容量では効果は不十分であることが多い。従来のメトホルミン製剤は、健康保険では750mg/日までしか処方できない。新しく承認された「メトグルコ錠250mg」は1日用量750-1500mgで、最高2250mgまで増量が可能である。
  注意点は腎機能障害のある患者、肝機能障害のある患者や高齢者では、定期的に腎機能、肝機能を確認する必要がある。
 通常、500mg/日より開始し、1日2-3回に分割して経口投与する。本剤で維持量1500mg/日まで増量すると1.1%のHbAlcの低下が期待できる。投与初期、増量時に下痢)が発現しやすいため、徐々に増量する。

2015.04.10記  2015.04.10修正


       【予防接種】
 (145)予防接種は同時接種しても構わない 

まとめ: 複数のワクチン同時接種は原則的に問題ないが、実施方法には注意する。

 「ほとんどの小児用ワクチンの同時接種は禁忌はない」と米国小児科学会は発表している。ただし、指示された場合を除き、混合してはいけない。また、接種部位は少なくとも1インチ(2.5cm)以上間隔をあけるとしている。日本では、「2種類以上の同時接種は、医師が特に必要と認めた場合に行うことができる」としている。認可ワクチンは同時接種可能と解釈されている。実際、海外渡航前には、ポリオ、BCG、DPT、B型肝炎、日本脳炎、MR、水痘、ムンプスワクチンなど、2-4種類のワクチンの同時接種が行われている。
 健康被害が起こった場合は、任意接種ワクチンでは医薬品医療機器総合機構の医薬品救済制度が適用される。定期接種と任意接種の組み合わせ、または定期接種同士の場合、どちらのワクチンによるか区別できない健康被害は予防接種法で申請する。
  定期接種ワクチンを含む同時接種を頻繁に行う場合には市町村の了解を得ておくほうが無難だとしている。 
接種時には、●複数ワクチンを同一シリンジ内で混合しない、●接種部位を変え、局所的な副反応出現に備えて接種部位をカルテに記載しておく。 
 引用資料 日本医事新報2010年8月7日号、福岡市立西部療育センター長 宮崎千羽

2015.04.10記  2015.04.10修正