トピックス(役立つ医学情報-No.33)】
公開日2008.10.11 更新日2008.10.30  HOMEへ(メニューを表示)  メニューを隠す  
 このページは、当院が興味を惹かれた医学情報を患者さん、又は医療関係者向けに紹介します。内容は一般向けではないものも多いのですが、一般の方でも読みやすいように、なるべく専門用語は使わずに平易な言葉で表現するようにしました。冗長な文章になることを避けるために、「である調」にしました。情報源は、医事新報、日経メディカル、medical practice、一般新聞などです。明らかに製薬会社の利益を優先した情報誌や内容は避けるようにしました。情報は必ずしも最新のものとは限りません。また、記事の内容を保証するものでもありません。あくまでも参考に留めてください。
126)【リウマチ】関節リウマチ患者の心血管疾患リスクは2型糖尿病並みに高い。     2008.10.30記
125)【膝関節症】変形性膝関節症には太極拳が有効。     2008.10.30記    
124)【胃癌】ピロリ菌を除菌すれば胃癌が1/3に減る。    2008.10.11記   
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       【慢性関節リウマチ】

 (126)関節リウマチ患者の心血管疾患リスクは2型糖尿病並みに高い。

まとめ:2008年リウマチ学会で「 関節リウマチ患者の心血管疾患リスクは2型糖尿病並みに高い」と報告された。
  米国リウマチ学会で、「関節リウマチ(RA)患者の心血管疾患リスクは、糖尿病患者並みに高いことが前向き研究で示された」と報告された。心血管疾患の相対危険度は、約2倍となっていた。循環器専門医である私も、慢性関節リウマチが冠動脈危険因子であるということは、あまり意識していなかったので、「あの話は本当なんだ」とうなづいた。 その一方で、糖尿病患者の心血管相対リスクも約2倍となっていた。糖尿病患者はハイリスクとよく言われるので、思っているより低い数字であった。糖尿病の診断基準や重症度、イベント発症の設定にもよるのだろう。
以下、日経メディカルオンラインより一部引用
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第72回米国リウマチ学会
関節リウマチ患者の心血管疾患リスクは2型糖尿病並み

 関節リウマチ(RA)患者の心血管疾患リスクは健常者より有意に高く、糖尿病患者並みであることが示された。オランダ・アムステルダムVU大学医療センターのMichael T. Nurmohamed氏らが、2つのコホートにおける3年間の心血管疾患発症を観察した研究に基づく成果で、米サンフランシスコで開催中の米国リウマチ学会(ACR2008)の一般口演で10月26日に発表した。
 こうした比較の多くは横断研究で行われており、コホートの前向き観察研究による比較は少ないという。研究グループでは、RA患者の心血管リスクなどについての観察研究である「CARRE研究」と、健常人を登録し、耐糖能と心疾患リスクなどを調べたHOORN研究の対象者について、3年間の心血管疾患発症リスクを比較した。
 CARRE研究は現在も継続中で、発症後12年以上のRA患者が対象。2001年に始まった研究で、5年以上のフォローアップを行うこととしている。HOORN研究はオランダの50〜75歳の一般人口が対象で、1989年から実施された。
 両群の対象者のうち、少数の非白人を除外、同意が得られ、3年間の追跡を完了した健常群1852人とRA群312人について、心血管発症リスクを比較した。
 結果は、追跡期間中、RA群の心血管疾患発症率が9.0%だったのに対し、健常群では4.3%。100人・年当たりの心血管イベント数では、RA群が3.3(95%CI:1.98-4.30)、健常群が1.51(95%CI:1.18-1.84)だった。
 性、年齢と心血管リスク因子(血圧、降圧薬服用、総コレステロール、HDLコレステロール、スタチン服用、喫煙、糖尿病、アスピリン服用)で調整した健常群に対するRA群の相対危険度は、2.00(95%CI:1.25-3.07)で有意に高かった(p=0.003)。
 次に、RA群の心血管リスクを2型糖尿病(DM)群と比較した。最初の比較で対象としたHOORN研究の健常者1852人のうち、空腹時血糖異常(IFG)者205人を除き、非DM健常群1492人とDM群155人に分けた。RA群については、IFGとDMの罹患者49人を除く263人を非DM-RA群とした。
 非DM健常群に対する非DM-RA群とDM群の性・年齢調整後の相対リスクを比較したところ、DM群は2.02(95%CI:1.11-3.66、p=0.021)、非DM-RA群は2.22(95%CI:1.33-3.71、p=0.002)と健常群に対していずれも有意に高く、ほぼ同等のリスク上昇がみられることが分かった。
 一方、心血管リスクで調整した相対リスクを求めたところ、DM群は1.4(95%CI:0.8-2.6)、非DM−RA群は1.9(95%CI:1.1-3.5)で、DM群については有意なリスク増加はみられなかった。
 これらの結果からNurmohamed氏らは、関節リウマチは、既存の心血管リスクとは独立した心血管疾患の発症リスクになっており、リスク上昇は2型糖尿病に匹敵することが示唆されたと結論づけていた。

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参考&引用
  日経メディカルオンライン(2008年10月28日) http://medical.nikkeibp.co.jp
2008.10.30記   2008.10.30修正


       【変形性膝関節症】

 (125)太極拳は変形性膝関節症に有効

まとめ:変形性膝関節症にも運動療法が有効とされている。膝関節に負担が少なく、かつ下肢の筋肉を鍛えることが大切である。
 以前から、太極拳みたいなゆっくりとした動きは膝周りの筋肉を鍛えるにはよいだろうと思っていた。中高年になると膝痛の患者さんが多い。私自身も急激な運動で両膝を痛めたことがある。現在、整形外科での治療にも有力な治療法、悪化予防法があまりない。個人的には膝に負担の少ない下肢の運動と健康補助食品のグルコサミンが有力と思っている。太極拳は推薦できる運動療法の一つだろうと思っていた。

以下、日経メディカルオンラインより一部引用
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太極拳は変形性膝関節症の治療に有効
 中国の伝統的な運動として知られる太極拳は、変形性膝関節症の治療に有効であることが示唆された。太極拳に取り組むグループと通常のストレッチを行うグループに分けて、効果を検討したところ、太極拳群で痛みや身体機能などに有意な効果を認めた。タフツ・メディカルセンター(米、ボストン)のChenchen Wang氏(写真)らが10月26日、サンフランシスコで開催されている米国リウマチ学会(ACR2008)で発表した。
 太極拳には筋肉の機能やバランス、柔軟性を強化するだけでなく、痛みやうつ状態、不安などを和らげる効果が期待できるとし、変形性膝関節症の治療に適しているとの仮説をたて、比較試験に取り組んだ。
 対象は、年齢>55歳、BMI≦40kg/m2で、ほぼ毎日膝の痛みを認め、脛骨大腿骨変形性関節症でK/Lグレード≧2の条件に該当する40人。対象者は、太極拳グループとストレッチとウェルネス教育に取り組むグループに無作為に割り付けた。
 その上で、60分間の運動治療を週2回、12週間実施した。主要評価項目は、12週目でのWOMAC疼痛スコアの変化とした。
 これらの評価を24週目と48週目でも実施し、反応の永続性を調べた。
 太極拳の参加者は、痛み、身体機能、うつ、自己効力感、健康状態に有意な改善を示した。
 また、12週目以降も永続的な効果が見られた。
 これらの結果から、「太極拳は重度の変形性膝関節症の患者の痛みと身体障害の治療に効果があることが示唆された」と結論付けた。
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参考&引用

  日経メディカルオンライン(2008年10月28日)
2008.10.30記   2008.10.30修正
  


       【ピロリ菌】

 (124)【胃癌】ピロリ菌を除菌すれば胃癌が1/3に減る。

まとめ:欧米に比べて日本に多い胃癌が、ピロリ菌の除菌で大幅に減ったとの報告が医学雑誌「LANCET」に発表された。
 
世界でも日本は胃癌発生が多いことが知られている。ピロリ菌は日本人の成人の70%にも感染が確認されており。欧米に比べて高率である。ピロリ菌によって胃癌が増加するとの学説があったが、確立していなかった。ピロリ菌が胃癌の大きな原因ならば、除菌で胃癌が減るはずであるとの推測が今回証明された。権威のある医学雑誌「LANCET」にピロリ菌除菌で胃癌が1/3に減ったと発表された。
 北海道大学遺伝子病制御研究所分子腫瘍分野の畠山昌則教授によると、ヒトの癌の約30%は感染性因子が原因と推定されている。胃癌は、その大部分がピロリ菌の持続感染を基盤に発症すると推定している。ピロリ菌はCagAタンパク質産生能の有無により2群に大別され、日本で見られるピロリ菌株は、ほぼすべて、欧米諸国のピロリ菌の70-60%がヒト胃癌を起こしやすい種類(CagAタンパク質+)であると言っている。
 
 以下、日本医事新報No.4404(2008年9月20日)より引用
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ピロリ菌の除菌で胃癌が3分の1に「LANCET」に掲載
浅香正博 北大教授ら
 早期胃癌で内視鏡的粘膜切除術(EMR)後の患者を対象に、ヘリコバクター・ピロリ菌を除菌した群と除菌しなかった群に分けて比較した結果、除菌群は非除菌群に比べ胃癌の発生が約3分の1に有意に減少したとの試験結果を浅香正博北大教授が11日、都内で発表した。これまで、ピロリ菌感染と胃癌の関わりは明らかになっていたが、除菌による胃癌の予防効果が確認されたのは世界初。論文は8月2日号の英医学誌「LANCET」に掲載された。
ピロリ菌除菌の保険適用拡大を
 この試験は全国のピロリ菌研究者によって組織されたJAPANGAST Study Group(代表=浅香氏)が実施した多施設共同無作為化比較試験。EMR後のピロリ菌陽性患者505例を除菌群255例、非除菌群250例に分け、3年間経過観察した。会見で浅香氏は「胃癌は生活習慣病ではなくピロリ菌による感染症である」と強調するとともに、「政府は"胃癌予防戦略会議"を立ち上げ、ピロリ菌除菌の保険適用拡大などの検討を開始すべき」と訴えた。
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参考&引用
  日本医事新報No.4404(2008年9月20日
2008.10.11記   2008.10.11修正