公開 2002.12.25 更新2011.01.08
記事は参考に留め,治療方針は診療医師と相談してください.
甲状腺機能低下症(橋本氏病)の簡単な解説
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甲状腺機能低下症(橋本氏病)の詳しい解説はこちら
 

 甲状腺機能低下症とは甲状腺ホルモンが不足しておこる病気です.ほとんどの甲状腺機能低下症は,甲状腺を攻撃・破壊する異常物質(抗甲状腺抗体)ができたためにおこります.このような原因によりおこる甲状腺機能低下症を慢性甲状腺炎(別名「橋本氏病」)と呼んでいます.橋本氏病は女性に多く,女性は男性の約10倍と言われています.遺伝する傾向もあります.

 甲状腺機能低下症の症状は徐々にくるので,医師も患者さんも病気と気づかず,歳のせいと思い込んで,治療により簡単に元気になれる機会を見逃しているのが現状です.
 
全身症状としては,元気がない,疲れやすい,脱力感,寒がり,体重増加,食欲低下,便秘などがあります.
  精神症状としては記憶力・集中力の低下,動作緩慢があり,痴呆ではないけれども痴呆と間違われることも少なくありません.
  皮膚は 発汗が低下し,乾燥.顔つきは,はれぼったく,口唇や舌は大きくなります.髪は白髪が増え,抜けやすくなります.眉は外側1/3が薄くなります.下肢のむくみ(押してもへこみが残らないことが多い)もおこりやすくなります.甲状腺(首の前にある)はあまり大きくなりません.
そのほか,声が低い,しわがれ声,月経過多,筋力低下,こむら返りなどの症状がおこりやすくなります.
  また,検診などの血液検査の異常で偶然この病気が見つかることもあります.総コレステロールの上昇,中性脂肪の上昇,CPKの上昇,胸部 レントゲンでの心拡大(俗にいう心肥大),脈拍が遅い,虚血心と間違われる心電図異常などが,診断のきっかけになることがあります.
  ただし、上記の症状は甲状腺機能低下症に特徴的というわけではなく,他の病気や加齢とともに増える症状です

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 甲状腺機能低下症では,元気がなくなるだけでなく,動脈硬化などの老化が早まります.しかも,軽症や中等症では見落とされやすい病気です.単なる「加齢現象」,「高コレステロール症」,「更年期障害」,「脂肪肝」,「老人性痴呆症」,と間違われて治療されていることが少なくありません.「甲状腺機能低下症の可能性はないか」と日頃から疑うことが大事です.疑いさえもてば,あとは簡単な血液検査で確認できます.甲状腺機能低下症が多い高齢者では,少しでも疑われたら,一度「血液中のTSH」というホルモン量を検査したほうがよいでしょう.米国では,基本的な検診検査項目のなかにTSH測定が組み込まれています.

治療

 橋本氏病では甲状腺機能がまだ正常な人は,定期的にホルモン量を検査するだけで薬はいりません.しかし,甲状腺機能低下症になっている人はホルモンの不足を補うために,甲状腺ホルモン製剤(チラージンS)を内服します. 最初は少量から開始して,適切な量まで徐々に増量します.内服は生涯服続ける必要がありますが,この薬は正常な人の甲状腺ホルモンと全く同じものですので,飲み過ぎなければ副作用はまずありません.