【レクチャールームNO.6の3】-高コレステロール血症-

  公開日2005.06.16 更新日2005.06.16  TOPへ 左メニューを隠す  前へ 次へ
このサイトは参考となった講演会の内容を紹介しています。

 コレステロールの新しい常識 
- (第3回)- 
本解説は2005年6月14日のNHK番組「とくもり情報ランチ」(山口県内)で放送された内容のもととなった原稿です。放送でのパネルおよび解説の内容は簡略化したものです。できるだけ専門語を使わないようにしました。

お断り:このサイトの講義対象は一般の方や患者さんです。専門用語を排除するように努めました。
 なお、ここでの内容は個々の患者さんには適当でない場合もあります。あくまでも一般論として参考にとどめてください。


【1】「女性と高コレステロール血症」 講師:まえだ循環器内科 前田敏明 

 

コレステロールに関する情報は、誤解されている部分が大変多くみられます。今回は「コレステロールの新しい常識」についての第3回目です。「女性と高コレステロール血症」について話していただきます。


【2】「なぜ女性を特別扱いするのでしょうか?」

●コレステロール値や心筋梗塞の危険度に大きな男女差があるからです。
●これは米国の高コレステロール血症治療ガイドラインで紹介された方法で、高血圧、糖尿病、喫煙などの危険因子のない場合に心筋梗塞になる危険度を計算してグラフにしたものです。縦軸は10年間に心筋梗塞になる割合です。ただし、日本人の心筋梗塞の頻度は、この約1/4から1/5です。
●上の4本の青い線が男性、下の4本の赤い線が女性です。4つの線は上から下へ総コレステロール値がそれぞれ※ 280、260、240、220です。善玉コレステロール値はすべて50mg/dlです。
●総コレステロール280の女性は、すべての年齢で220の男性よりも心筋梗塞の危険度がかなり低いことがわかります。また、糖尿病、高血圧、喫煙、その他の危険因子がない女性に限ってい言えば、総コレステロール280と220の危険度の差はとても小さいことがわかります。

【3】「日本人の場合も米国人と同じでしょうか?」
●日本人の調査でも女性は男性よりもずっと心筋梗塞が少ないことがわかっています。これは高脂血症の治療を受けている全国の5万人の日本人を6年間経過を追って狭心症や心筋梗塞になる割合を調べた結果です。55歳未満では男性の1/6、65-75でも1/2と女性は男性よりもかなり心筋梗塞が少ないことが分かりました。
●高コレステロール血症がある場合に、これを治療するかどうかを判断するときには、「性別と年齢」を同時に考慮することが重要となります。


【4】「総コレステロール値は男女で違うのでしょうか?」
●女性は閉経後から総コレステロールが増加します。55-60歳の女性の総コレステロール平均値は220です。これは高脂血症の診断基準値と同じです。つまり、220を基準とすると半分の女性が高脂血症になってしまいます。
●ではコレステロール値のみが異常とされた女性がどれだけ心筋梗塞になるかというと、220より少し総コレステロールが多いだけでは10年間に200-400人に1人くらいです。
●つまり、100人中50人が高脂血症と言われながら、実際に心筋梗塞になるのは10年間に1人以下なのです。基準値220にこだわりすぎてはいけません。

【5】「善玉コレステロール値は男女で違うのでしょうか?」



●動脈硬化予防効果がある善玉コレステロールはどの年齢でも男性よりも女性の方が多いのですが、加齢とともにその差が減少します。善玉が多い分だけ、女性では総コレステロールが高くなり、同じ総コレステロール値なら悪玉値は低くなります。


【6】「最後に本日のまとめをお願いします。」

●1)女性は閉経後に総コレステロールが増加するが、男性よりも善玉の割合が多い。
●2)女性の心筋梗塞発症の危険度は、55歳未満で男性の1/6、65-70歳で男性の1/2と男性よりかなり低い。
●3)高コレステロール血症の治療では男女差を考慮して行う必要があります。



   続編へ