■■ 冠動脈短期(10年)リスク計算■■
公開日2002. 10.03 更新日2004.9.15   メニューを表示する  メニューを隠す

このホームページの医学的情報が個々の人の治療に当てはまるかどうかは、実際に診療してみないとわかりません。記事はあくまでも参考に留め、治療方針は診療医師と相談して決めてください。たいかなる結果に関しても当院は責任を負いません。


1)冠動脈10年リスク計算機
これは米国コレステロール教育委員会へのリンクです。当院のオンライン計算機よりも妥当な数値がでます。
 すでに冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞など)、糖尿病の人、 あきらかな粥状動脈硬化症の所見のある人は対象外です。
【入力方法 】
Age    :年齢             例 52歳→ 52
Gender  :性別             例 女→ Female、男→ Male
Total Cholesterol:総コレステロール  例 TC 280mg/dl → 280
HDL Cholesterol:HDLコレステロール  例 HDL-C 40mg/dl → 40
Smoker :喫煙習慣            例 なし→No、あり→ Yes
Systolic Blood Pressure:収縮期血圧  例 血圧152/78mmHg→ 152
Currently on any medication to treat high blood pressure
  :現在降圧剤を服用してますか      例 なし → No、あり → Yes

  Calculate 10-Year Risk:10年リスク計算の実行

 本人の検査値とともに
 ・同年齢正常値:同年齢、喫煙なし、高血圧治療なし、糖尿病なし、血圧=125、総Chol=180,HDL=55
 ・同年齢理想値:喫煙なし、高血圧治療なし、糖尿病なし、血圧=110、総Chol = 150 , HDL=65

と入力した場合も参考にしてください。同年齢間の数値の比較なら、人種差をあまり気にする必要がなくなります。
それでは、実際入力してみましょう。

---- それでは今からデータ入力と計算を実行します------

【結果の見方】

Risk Score*   ●○% ( ●○が冠動脈10年リスクです。)
Greater than 30% ( 30%以上 )
Less than 1%    ( 1%未満 )

結果の解釈については、解釈上色々問題がありますので、できるだけATPIII(米国コレステロール教育プラグラム第3次報告)に詳しい医師に相談下さい。

2)冠動脈10年リスクをスコア表から手計算する。 GO!

 (フラミング・リスクスコア計算表から求める)


【解説】 フラミンガムリスクスコア表
2001年5月発表の米国コレステロール教育プログラムの一環としてのオンライン『冠動脈短期リスク計算機』です。
今後10年間で重症冠動脈疾患(心筋梗塞+冠動脈死で、狭心症は含みません)になる危険率を示してくれます。

ただし、米国白人の研究資料に基づく推定値です。日本人はこれよりもずっと少ないと考えられます。その数値は過去の日本の資料では欧米のおよそ1/4ですが、正確な日本の資料はありません。ただ、日本でも食事内容の欧米化が進行中です。今後10年の推定値となると欧米の1/3-1/2になるかもしれません。

また、今後10年間と短期の危険率であり、50歳代、40歳代なら20年間、30年間、または一生の冠動脈リスクも考えるべき性格のものです。数値がそれほど高くないと勝手に思いこまないようにしましょう。最終的には、ATPIIIをよく理解した医師と相談することを勧めます。
 また、この計算機よりも詳細な計算式を使った計算がエクセルシートとしてNCEPから公開されており、これを日本語版として解説機能を追加したものを当診療所で作成し、公開しています。こちらも参考ください。日常の診療に十分使えるソフトになっています。
この計算機の基となるポイントスコア表はATP III Executive SummaryPDF document, 296 Kとして26-27ページにあります。

●利用時に不可欠なATPIII勧告内容に関する最低限の知識
・ 米国コレステロール教育プログラム第3次報告(ATPIII )2001年発表資料です。
・米国の同一集団の長期観察Framinghan heart studyがもとになっています。
・ 現在、冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症)がない人、それ以外のアテローム動脈硬化症(末梢血管障害、腹部大動脈瘤、症状のある頸動脈疾患)がない人糖尿病のない人が対象です。これらはすべて、それだけで10年リスク20%以上の高い危険群です。
・ 10年リスク推定値の結果でいう『冠動脈疾患』の範囲には狭心症が含まれておりません。心筋梗塞、冠動脈死(原文"hard" coronary heart disease outcomes (myocardial infarction and coronary death) in adults who do not have heart disease or diabetes. )とされています。
・ 喫煙、総コレステロールのリスクスコアには年齢別のスコア化を採用して、よりきめ細やかな評価をおこなっている。
・総コレステロール、HDLコレステロールは少なくとも2回の平均値
・ 喫煙者の定義は過去1ヶ月間に喫煙したもの。
・収縮期血圧は、治療のあるなしに関わらず、10年リスク評価時の測定値
※10年リスク計算では総コレステロールを使っているが、これは悪玉コレステロールであるLDLコレステロールを直接測定できるようになったのが近年であり、過去の膨大なデータを生かすために、総コレステロールを使っただけである。治療の目標値はあくまでもLDLコレステロールできめるべきだと述べている。

参考資料
K Kazuhiko et al.:Assessment of acute myocardial infarction in Jpan by the Japanease coronary intevention study(JCIS)group Cir J 2004;68:515-519
Background
 Until now, Iarge-scale nationwide surveys of acute myocardial infarction (AMI), such as those performed in Europe and America, have not been performed in Japan. Therefore, in 2000 the Japanese Coronary Intervention Study (JCIS) group conducted a nationwide survey on the incidence of AMI in Japan.
Methods and Results
 Questionnaires were collected from 8,268 facilities throughout Japan. The total annual number of patients with AMI was 66,459 (52.4 patients/105 population), and the AMI incidence rate in Japan was approximately 25% of that In the United States. Most facilities with AMI patients treated less than 50 AMI patients annually, and that number was 45.0% of total AMI patients. The incidence of AMI patients was highest in Kochi, Kumamoto, and Wakayama prefectures, and lowest in Yamanashi, Saitama and Shiga prefectures. The ratio of the highest incidence to the lowest incidence was 2.0. A significant correlation was observed between the mean age of the prefectural population, as a coronary risk factor, and the incidence of AMI.
Conclusions
 The incidence of AMI in Japan is approximately 25% that in the United States and it varies considerably among the prefectures, one of the causes being the difference in the mean age. This provides important information for assessing the guidelines for Japanese patients with AMI. (Circ J 2004; 68: 5 1 5 -519)
  Key Words: Acute myocardial infarction; Annual incidence; Japan