インフルエンザ/トリインフルエンザQ&A

公開日2004.04.14 更新日2004.06.21  更新履歴   HOMEへ(メニューを表示)  メニューを隠す
記事はあくまでも参考に留めてください。
注意!情報源のほとんどは感染症情報センターのホームページです。

http://idsc.nih.go.jp/others/topics/flu/QA040401.html


(8)【トリインフルエンザ】 【インフルエンザ総目次へ】

01)高病原性鳥インフルエンザとは、どのような病気ですか?        2002.10.01記
02)どの動物が高病原性鳥インフルエンザにかかりますか?         
03)高病原性鳥インフルエンザは、これまでにどの国で発生していますか?  
04)2004年3月末現在の発生状況は?                   
05)鳥のあいだでの感染経路はわかっていますか?
06)鳥のあいだでの流行の制圧方法にはどのようなものがありますか?
07)ペットや学校で飼っている鳥は安全ですか?
08)野鳥は安全ですか?
09)ペットや野鳥が死んでいる時にはどのように対応すればよいですか?
10)鳥からヒトに感染しますか?
11)どのような場合に鳥からヒトに感染しますか?
12)ヒトからヒトへ感染しますか?
13)ヒトではどのような症状がでますか?
14)ヒトの鳥インフルエンザの診断はどのようにして行いますか?
15)ヒトの鳥インフルエンザの治療法はありますか?
16)ワクチン接種などの、ヒトのトリ・インフルエンザウイルス感染の予防法はありますか?
17)ヒトのインフルエンザワクチンは鳥インフルエンザに効きますか?
18) 2003-2004年のヒトでの鳥インフルエンザの発生状況はどのようになっていますか?
19)ヒトでの鳥インフルエンザがインフルエンザのパンデミック(世界的流行)を引き起こす危険性をもつのはなぜですか?
20)鶏肉や卵を食べても安全ですか?
21)鳥インフルエンザが発生している国への旅行、あるいは日本国内での流行地域への旅行は安全ですか?
22)鳥インフルエンザの集団発生農場において、鶏の殺処分に従事する者の感染制御はどのようにすべきですか?
23)国内は安全ですか?
24)鳥インフルエンザが発生している国からの鶏肉などの輸入禁止措置がとられるのはなぜですか?
   また、加熱処理製品の輸入についてはどのような対応がとられていますか?


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Q1:高病原性鳥インフルエンザとは、どのような病気ですか?

A:鳥類のインフルエンザは、ヒトのインフルエンザウイルスとは別のA型インフルエンザウイルスの感染症です。このうち感染した鳥が死亡したり、全身症状を発症したりと、特に強い病原性を示すものを「高病原性鳥インフルエンザ」と呼びます。

 鳥類のインフルエンザは「鳥インフルエンザ」と呼ばれる、ヒトのインフルエンザウイルスとは別のA型インフルエンザウイルスの感染症です。このうち感染した鳥が死亡したり、全身症状を発症したりと、特に強い病原性を示すものを「高病原性鳥インフルエンザ」と呼びます。1878年にイタリアで初めて確認され、鶏、七面鳥、うずら等が感染すると、全身症状をおこし、神経症状(首曲がり、元気消失等)、呼吸器症状、消化器症状(下痢、食欲減退等)等が現れ、鳥類が大量に死亡することもまれではありません。
 発生頻度はそれほど高くありませんが、動物保健と畜産の分野で国際的に大きな影響を与えることから、OIE(国際獣疫事務所)においてA表に分類され、加盟各国には報告義務と問い合わせへの対応が課せられています。
 一方、時に毛並みが乱れたり、産卵数が減ったりするような軽い症状にとどまる感染を引き起こすものは、「低病原性鳥インフルエンザ」と呼びます。低病原性のものは、例年のように集団発生が報告されていますが、高病原性の様な被害は報告されていません。しかし、1983年にペンシルバニア州(米国)で発生したH5N2型トリ・インフルエンザウイルスは、はじめは低病原性であったものが、鶏間に伝播している間に高病原性に変異したという事例もあります。
 最近になり、まれにですが、ヒトもトリ・インフルエンザウイルスに感染することが報告されました。しかし、鳥類において高病原性であっても、ヒトでは必ずしも重症になるとは限らず、幅広い症状が見られています。



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Q2:どの動物が高病原性鳥インフルエンザにかかりますか?

A:38度以上の急な高熱と悪寒、頭痛、上気道炎症状、全身倦怠感等の強い全身症状が出現します。

 鳥インフルエンザは鶏などの他にも、色々な種類のトリに感染することが知られていますが、家畜の豚やその他のほ乳類への感染はあまり見られませんでした。家きん類(肉や卵などを利用する目的や愛がん用に飼育されている鳥類)の中には、特に感染しやすい種類(鶏、アヒル、七面鳥など)があることが知られています。
 2004年の集団発生では、タイで飼いネコが、トリ・インフルエンザウイルスに感染したと報告されました。

表1:動物に感染するA型インフルエンザウイルスの亜型
カモ(水きん類) H1〜H15 N1〜N9 腸管に感染
無症状
ウイルスは糞便中に排泄
ニワトリ(家きん) H1〜H7,H9,H10 N1,N2,N4,N7 通常は低病原性で軽症
H5,H7亜型の中には、高病原性で、致死性が100%に近いウイルスがある
H1N1,H3N2,H3N3, H4N6 1999年に鳥由来のH4N6が分離された
2003年に鳥由来のH1N1,H3N3,H4N6の分離が報告
H3N8,H7N7 1971年と1993 ? 94年(鳥由来と見られている)に流行
ミンク H10N4 1984年スウェーデンで、重症呼吸器症状
アザラシ H3N3,H4N5,H4N6, H7N7  
クジラ H1N1,H13N9  

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Q3:高病原性鳥インフルエンザは、これまでにどの国で発生していますか?

A:世界各地で発生しています。

 最近では香港(H5N1型:1997年,2003年)、米国(H5N2型:1983年,2003年)、オランダ(H7N7型:2003年)、ドイツ(H7N7型:2003年)、韓国(H5N1型:2003年)、ベトナム(H5N1型:2004年)等世界各地で発生しています。日本では、1925年以来発生はありませんでした。

 
表2:WHO、OIEの「Terrestrial Animal Health CodeのList A」の疾患としての報告、およびUSDAの報告の一部から、亜型が分かっている主なものの一覧
A型インフルエンザの亜型 発生国・地域    
H2N2 米国(ペンシルバニア州) 家きん(鶏)
2004年
H5亜型 ラオス 家きん(鶏)
2004年
H5N1 英国(スコットランド) 家きん(鶏)
1959年
英国(スコットランド) 家きん(七面鳥)
1995年
中国(香港) 家きん(鶏)・ヒト
1997年
中国(香港) 家きん(鶏)
2001年
中国(香港) 家きん(鶏)・ヒト
2002-2003年
米国(ミシガン州・低病原性) 家きん(七面鳥)
2002年
韓国 家きん(鶏・アヒル・カササギ)
2003-2004年
ベトナム 家きん(鶏・アヒル・ガチョウ)・ヒト
2004年
日本 家きん(鶏・チャボ・カラス)
2004年
タイ 家きん(鶏・アヒル・ガチョウ・七面鳥・ダチョウ・ウズラ・クジャク)・ヒト以外のほ乳類(ネコ)・ヒト
2004年
カンボジア 家きん(鶏・ガチョウ)
2004年
中国(香港) ハヤブサ(野生)
2004年
中国(本土) 家きん(鶏・アヒル)・ヒト以外のほ乳類
1983-1985年
インドネシア 家きん(鶏・アヒル・ウズラ)・野生鶏
2004年
H5N2 米国(ペンシルバニア州) 家きん(鶏・七面鳥)
1983-1985年
メキシコ 家きん(鶏)
1994-1995年
イタリア 家きん(鶏)
1997年
米国(メイン州・カリフォルニア州・ニューヨーク州・低病原性) 家きん(アヒル・七面鳥)
2002年
中国(台湾・低病原性) 家きん(鶏)
2004年
米国(テキサス州) 家きん(鶏)
2004年
H5N8 アイルランド 家きん(七面鳥)
1983年
H5N9 カナダ(オンタリオ州) 家きん(七面鳥)
1966年
H7亜型 パキスタン 家きん(鶏)
2004年
H7N1 イタリア 家きん(七面鳥)
1999-2000年
オランダ 家きん(アヒル)
2004年
H7N2 米国(コネチカット州・ロードアイランド州・低病原性) 家きん(鶏)
2003年
米国(ニュージャージー州・低病原性) 家きん(鶏)
2004年
米国(メリーランド州・低病原性) 家きん(鶏)
2004年
米国(デラウエア州・低病原性) 家きん(鶏)
2004年
H7N3 英国(イングランド) 家きん(七面鳥)
1963年
オーストラリア(ビクトリア州) 家きん(鶏)
1992年
オーストラリア(クイーンズランド州) 家きん(鶏)
1994年
パキスタン 家きん(鶏)
1994年
チリ 家きん(鶏)
2002年
カナダ(ブリティッシュコロンビア州) 家きん(鶏)
2004年
H7N4 オーストラリア(ニューサウスウエールズ州) 家きん(鶏)
1997年



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Q4:2004年3月末現在の発生状況は?

A:以下の通り

 2003年12月に韓国の農場での発生が報告されたことに始まり、高病原性鳥インフルエンザH5N1型感染が、日本を含めアジア各国で確認されています。2004年度(3月30日時点)で、家きんの鳥インフルエンザ感染例の報告をした国は、ベトナム、タイ、カンボジア、ラオス、インドネシア、中国、台湾、韓国、日本、米国(以上H5亜型)、パキスタン、オランダ、カナダ、米国(以上H7亜型)ですが、病原性の程度も異なったウイルス型の集団発生も混在して起こっており、これら各国のすべての例が高病原性のトリ・インフルエンザウイルスと確認されたわけではありません。特に、中国(本土)、ベトナム、タイでの被害は大きく、特に中国では900万羽以上が死亡あるいは殺処分されたと報告されています。
これまでに、今年の様に多くの国で同時に集団発生がみられた例は無く、特にその多くが、すでに種を超えて感染を始めた高病原性のH5N1型であることが懸念されています。

 


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Q5:鳥のあいだでの感染経路はわかっていますか?(WHO, 農水、カナダ)

A:基本的に飛沫や汚染された排泄物の吸引や、えさや水などを介してその他の腸管や呼吸器に感染し、ごく限られた状況でのみ空気感染が疑われることが知られています。

 基本的に飛沫や汚染された排泄物の吸引や、えさ、水などを介してその他の腸管や呼吸器に感染し、ごく限られた状況でのみ空気感染が疑われることが知られています。
 ひとつの農場内では、感染した鳥の排泄物や分泌物、ウイルスで汚染された粉塵、土壌などや、直接の飛沫などの吸入や摂取により、鳥から鳥へと簡単に広がって行きます。感染した鳥の移動に加え、ネズミなどの動物の体の表面に付着して*注1、また、ウイルスが付着した用具、乗り物、飼料、鳥かごや衣類(特に履き物)等を介して、農場や地域を越えて感染が広がる可能性もあります。
 農場の外からトリ・インフルエンザウイルスが持ち込まれる場合には、幾つかのルートが考えられます。
 従来水きん(水鳥)、とくに野生のカモは、トリ・インフルエンザウイルスに感染しても無症状あるいは軽症で経過し、低病原性のウイルスを運ぶ自然宿主であると考えられていました。放し飼いで、野生の鳥とも水源を共有するような状況では、トリ・インフルエンザウイルスに感染した野生の鳥類の排泄物により水が汚染されるなどして、感染が広がる可能性もあると報告されています。しかし、これらの無症状の水きんから、高病原性のウイルスが分離されたと言う報告は現在のところありません。今回のアジアの流行では、野生のトリも死亡しており、従来の感染伝播の経路をそのまま当てはめて考えることは難しくなってきています。また、Q1に記載したように、低病原性から高病原性へ変化したウイルスの報告もあり、トリや他の家畜での感染の状況にも注意が必要です。
 アジアの国々で多く見られる、生きた動物を取り扱う市場の衛生環境はしばしば悪く、感染を拡大する可能性が指摘されています。生きた動物の輸出入や、渡り鳥、海鳥などにより国境を越え、遠くまでウイルスが運ばれるとされていますが、調査が難しく、現時点では感染経路として特定するだけの十分な情報がありません。
この他に、愛玩用や家きん等の生きた輸入鳥類、鳥インフルエンザ発生地域からの汚染した輸入肉や卵、海外発生地から帰国したヒトが持ち込む場合などが考えられます。
*注1 機械的媒介動物と呼ばれ、動物自身は病原体に感染せず、次に感染する生物のところまで物理的に病原体を運ぶ動物や昆虫類のこと。現時点では鳥インフルエンザにおいて、ハエなどがこの役割を果たしていることを示唆する情報は少ししかありません。


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Q6:鳥のあいだでの流行の制圧方法にはどのようなものがありますか?(WHO, カナダ)

A:最も一般的な対策は、曝露を受けたニワトリ、アヒルや家畜をすべて殺処分することです。

 最も一般的で従来取られてきた対策は、曝露を受けた家きん類(ニワトリ、アヒルなど)や家畜をすべて、適切な方法で迅速に殺処分することです。このとき感染動物の排泄物や、汚染物も同様に適切な処理を行い、徹底した消毒が終了するまで、関係施設などへの立ち入りを禁止する(検疫)ことが必要となります。
 地域や、国際間での感染の可能性がある生きた動物の移動や、汚染の可能性がある未加工の肉製品および飼料などに転用される原料などの移送制限も、鳥のあいだでの感染の拡大を止めるための重要な対策です。
また日本では、高病原性鳥インフルエンザは家畜伝染病予防法上、家畜伝染病(法定伝染病)として位置づけられており、発生した場合には、鳥の間での感染拡大を防ぐために発生の届出、隔離、殺処分、焼却又は埋却、消毒等のまん延防止措置の実施が義務づけられています。
 国や地域の状況によって、最適なあるいは必要な対策が異なります。対策についての詳細は、OIEやFAO等の国際機関,各都道府県や厚生労働省の担当部局からのお知らせを参照してください。


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Q7:ペットや学校で飼っている鳥は安全ですか?

A:国内で鳥インフルエンザが発生したために、ペットとしてのニワトリや小鳥が直ちに危険になるということはありません。

 これまでの科学的知見によれば、多くの種類の鳥類に感染しますが、国内で鳥インフルエンザが発生したために、これまでペットとして家庭などで飼育していたニワトリや小鳥が直ちに危険になるということはありません。
 しかし、ヒトへ感染するかどうかは別として、鳥や動物はヒトとは異なるウイルスも、ヒトと共通のウイルスも持っていることが知られています。鳥類に限らず動物を飼う場合は、動物に触った後は手を洗いうがいをすること、糞尿は速やかに処理して、動物のまわりを清潔に保つことなどを心がけることが重要です。また、動物の健康状態に異常があった場合には獣医さんに相談し、飼い主が身体に不調を感じた場合は早めに医療機関を受診することも大切です。


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Q8:野鳥は安全ですか?

A:ペットと同様に、国内で発生しても、直ちに危険になるということはありません。

 
野鳥、特に水きん類を含む渡り鳥は、低病原性のウイルスを運ぶ自然宿主であると考えられてきました。しかし、これらの鳥が高病原性のウイルスを伝播したという報告はほとんどありません。したがって、ペットとして家庭などで飼育している鳥と同様に、国内で発生しても、直ちに危険になるということはありません。
 鳥インフルエンザは、感染した鳥の排泄物などやそれによる汚染物への接触で感染して行くため、適切な衛生的手法の実践(バイオセキュリティ)が感染防止に非常に重要になります。家きんの飼育環境を衛生的に保つことや、野鳥との接触後には手洗いなどを行いウイルスの持ち込みの可能性を減らすことなどがこれにあたります。

 


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Q9:ペットや野鳥が死んでいる時にはどのように対応すればよいですか?

A:流行状況や臨床症状から、インフルエンザと考えてよい症例は、迅速診断キットは不要です。

 
家きんと異なり法律はありませんが、3月10日に農林水産省は、高病原性鳥インフルエンザ防疫マニュアルの一部を以下のように改正しました。
 「都道府県畜産主務課(県畜産主務課)は、野外で飼養される家きん(愛玩鳥を含む。以下「家きん等」という)の飼養者及び関係団体等に対し・・・・・中略・・・・・・家きん等の健康観察、感染原因となり得るものについて消毒を徹底事前に導入元の衛生状況を把握死亡家きん等の羽数の多少にかかわらず、何らかの異常が認められた場合には、常に本病の発生を疑い、直ちに家畜保健衛生所に届出を行うこと」  
したがって、鳥が死んだからといって直ちに鳥インフルエンザを疑う必要はありませんが、原因が分からないまま、次々に鳥が死んでしまったなどの異常を発見した時には、死亡した愛玩鳥を含む家きんの羽数の多少にかかわらず、素手でさわったり、そのまま土に埋めたりせずに、直ちに家畜保健衛生所、獣医師または保健所へ連絡してください。また、学校の場合は教育委員会にも報告してください。
 野鳥が死んでいるのを見つけた場合には、鳥インフルエンザ以外にも様々な細菌や寄生虫の感染や、衰弱死など多くの死亡原因が考えられますので、死亡した鳥を素手で触らないなどの感染予防をきちんとして対処してください。死んでいる鳥を発見し、鳥インフルエンザなどの感染が疑われるなどの不安がある場合には、市町村、獣医師、家畜衛生保健所または保健所に、また、多くの野鳥が集団で死んでいる場合には、毒物などを食べて死亡したことも疑われますし、高病原性の感染症の可能性も否定できませんので、警察、家畜衛生保健所または保健所にご連絡下さい。

 


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Q10:鳥からヒトに感染しますか?

A:鳥からヒトへの感染はめったに起こりませんが、今までに数件の感染事例(143〜144人)が報告されています。

 1997年香港においてH5N1トリ・インフルエンザウイルスに18名が感染し、6名が死亡しました。2003年2月、同じく香港においてH5N1トリ・インフルエンザウイルス感染が2名で確認され、うち1名は死亡しました。2003年2-5月オランダでH7N7型が流行した際に、防疫に従事したヒト86人とその家族3人からウイルスが検出され、78人が結膜炎を、2人がインフルエンザ様症状を、5人がその両方の症状を示しました。獣医師1名が死亡し、その肺からトリ・インフルエンザウイルスH7N7が分離されました。2004年1月から2月にかけて、アジアの広い範囲でトリ・インフルエンザウイルスH5N1型が流行し、ベトナムで22 名、タイで12名(2004年3月31日現在)の発症者が報告され、それぞれ15名と8名が死亡しています。


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Q11:どのような場合に鳥からヒトに感染しますか?

A:密接な感染鳥への接触が感染の原因と考えられています。

 
これまでのところ、香港では店頭での生きた鶏の小売りが、ベトナムやタイでは家庭の裏庭で鶏が飼われているなど日常的な鳥との接触が、オランダでは病鳥の防疫業務に携わったことなど、日常的あるいは密接な感染鳥への接触が感染の原因と考えられています。
 一般的には、ヒトがトリ・インフルエンザウイルスの感染を受けるのは、病鳥と近距離で接触した場合、またはそれらの内臓や排泄物に接触するなどした場合が多いと考えられます。鶏肉や鶏卵からの感染の報告はありません。


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Q12:ヒトからヒトへ感染しますか?

A:流行状況や臨床症状から、インフルエンザと考えてよい症例は、迅速診断キットは不要です。
 ヒトからヒトへの感染は非常に限定的とされており、2003年のオランダの事例で見られたと報告されています。2004年のベトナムでも、家族内での感染伝播の可能性が疑われると報告されていますが、確実な科学的証拠はありません。


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Q13:ヒトではどのような症状がでますか?

A:ヒトのインフルエンザと同様のものから、多臓器不全に至る重症なものまで様々あります。

 1997年の香港のH5N1型の事例では発熱、咳などのヒトの一般的なインフルエンザと同様のものから、多臓器不全に至る重症なものまで様々な症状が見られました。死亡の主な原因は肺炎でした。2004年のベトナム、タイでの症例でも同様の傾向が見られました。一方、2003年のオランダのH7亜型の事例では結膜炎が主な症状でしたが、一部の発症者では呼吸器の症状も見られました。
 なお、「高病原性鳥インフルエンザ」という呼称についてですが、これはトリに対して特に病原性が高いインフルエンザの呼び方であり、ヒトに対する病原性から決められた呼び方ではありません。
 ある人が、一般的なインフルエンザの症状があり、しかも鳥インフルエンザが疑われる(あるいは確実な)鳥と接触していた場合は、医療機関へ相談されることをお勧めします


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Q14:ヒトの鳥インフルエンザの診断はどのようにして行いますか?

A:ヒトに使う迅速診断キットで、トリ・インフルエンザウイルスへの感染を検出することは可能です。

 
トリ・インフルエンザウイルスは、ヒトのソ連型(H1N1)や香港型(H3N2)とは異なりますが、いずれもA型インフルエンザウイルスに属します。そのため、ヒトのA型インフルエンザウイルスの診断に使う迅速診断キットで、トリ・インフルエンザウイルスへの感染を検出することは可能ですが、ヒトのインフルエンザでも見られているように、検査検体の採取状況などにより検出感度が変化します。また逆に、A型インフルエンザウイルス感染と診断されただけでは、インフルエンザなのか、鳥インフルエンザなのかの区別はつきません。H1、H5など感染したウイルスの亜型の同定は、血液中の抗体反応、分離ウイルスの抗原解析、遺伝子検査などのさらに詳しい解析を行う必要があります。


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Q15:ヒトの鳥インフルエンザの治療法はありますか?

A:ヒトのA型インフルエンザの治療に用いられている抗インフルエンザウイルス薬が、鳥インフルエンザにも効果がある。

 
ヒトのA型インフルエンザの治療に用いられている抗インフルエンザウイルス薬が、鳥インフルエンザに効果があるといわれています。しかし、鳥インフルエンザの治療に使用した経験が限られているため、その効果の程度は未だよく分かっていません。
 またベトナムで流行していたH5N1型は、M2タンパク阻害剤の耐性遺伝子を持っていることが報告されていますが、実際の治療の場でどのような意味があるのかについては十分な知見がまだありません。


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Q16:ワクチン接種などの、ヒトのトリ・インフルエンザウイルス感染の予防法はありますか?

A:鳥インフルエンザそのものに有効な、ヒトのワクチンはありません。

 
現在のところ鳥インフルエンザそのものに有効な、ヒトのワクチンはありません。現在も世界中で研究、開発が行われています。2004年現在では集団発生が起こっている時期に、病鳥との不要な接触を避けることが唯一の予防法と言えます。もしも鳥インフルエンザの流行が起こっている地域などに出かけなければならない時には、感染を避け、付着したかもしれないウイルスを他の地域の鳥に拡げないために、集団発生が見られている鶏舎などへの出入りは用事のない限り避けて下さい。どうしても鶏舎に出入りしなければならないときには、万が一の感染を避けるために、手袋、医療用マスク、ガウン、ゴーグルなどの着用、手洗いの励行などの、基本的な感染予防対策が必要です。
 また、日常生活の中でトリインフルエンザに対する特別な予防を行う必要は有りませんが、平常から動物との接触後に手洗い、うがいなどの個人衛生を実施しておくことも大切です


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Q17:ヒトのインフルエンザワクチンは鳥インフルエンザに効きますか?

A:型が違うので、鳥インフルエンザに対しては効果がありません。

 現在使用されているヒトのインフルエンザワクチンは、ヒトの間で流行しているA/ソ連型(H1N1)、A/香港型(H3N2)、およびB型に対して効果のあるものであって、H5亜型やH7亜型などの鳥インフルエンザに対しては効果がありません。


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Q18: 2003-2004年のヒトでの鳥インフルエンザの発生状況はどのようになっていますか?

A:ベトナム、タイで発生があります。22人 中15人、12人中8人が死亡しています。

 
ヒトへの感染は2004年2月末現在、ベトナム、タイでの限られた症例にとどまっています。しかし、報告された発症例での死亡率は高く、それぞれ発症が報告された22人 中15人、12人中8人が死亡しています。報告された症例は、H5N1型ウイルスの感染が確認されたごく一部の重症例であり、これらの国ではこの他に多数の人の鳥インフルエンザに関する検査が実施され結果が待たれています。


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Q19:ヒトでの鳥インフルエンザがインフルエンザのパンデミック(世界的流行)を引き起こす危険性をもつのはなぜですか?

A:トリ・インフルエンザウイルスがヒト・インフルエンザウイルスの遺伝子を獲得し、新型のA型インフルエンザウイルス出現につながるからです。
 
ヒトのインフルエンザにかかっている人が、鳥インフルエンザにかかると、その人の体内で2種類のインフルエンザウイルスのDNAが再集合(8本の遺伝子の一部が入れ替わる)を起こして、トリ・インフルエンザウイルスがヒト・インフルエンザウイルスの遺伝子を獲得する可能性が出てきます。これを遺伝子再集合と呼び、この現象が新型のA型インフルエンザウイルス出現につながる、ひとつのメカニズムであると言われています。もしもこの新たなウイルスあるいはトリ型のウイルスが突然変異をおこし、ヒトからヒトへと容易に感染する能力を獲得したとすると、インフルエンザのパンデミックが開始する条件が整うことになってしまいます。


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Q20:鶏肉や卵を食べても安全ですか?

A:食品としての鳥類(鶏肉や鶏卵)を食べたことによって、ヒトが感染した例は今まで報告がありません。
 食品としての鳥類(鶏肉や鶏卵)を食べたことによって、ヒトが感染した例は今まで報告がありません。日本では、高病原性鳥インフルエンザは家畜伝染病(法定伝染病)であり、発生した場合には鳥での感染拡大防止のため、殺処分、焼却又は埋却、消毒等のまん延防止措置が実施されますので(参照:Q4)市場に出荷される可能性は少ないはずです。また、感染鳥やその卵が万が一食品として市場に出回り、それを食べて消化管にウイルスが入ったとしても、ヒトの腸管には鳥インフルエンザのリセプター(感染するための受け皿)は無く、食品としての鶏肉、鶏卵などからの感染はないと考えられます。さらに、ウイルスは適切な加熱により死滅しますので、心配な場合は加熱調理してください。WHOは、一般的な食中毒の防止方法として、食品の中心温度を70℃に達するように加熱することを推奨しています。


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Q21:鳥インフルエンザが発生している国への旅行、あるいは日本国内での流行地域への旅行は安全ですか?

A:現段階では鳥インフルエンザウイルスの発生を理由に発生国への渡航の自粛、中止などの必要はありません。

 
 日常的あるいは密接な感染鳥への接触が感染の原因と考えられており、現段階では鳥インフルエンザウイルスの発生を理由に発生国への渡航の自粛、中止などの必要はありません。また、国内の旅行、移動も同様に、鳥インフルエンザウイルスの発生を理由にその土地への旅行や移動の自粛、中止などの必要はありません。ただし、特に必要が無い場合には、不用意または無警戒に流行地の生きた鳥類のいる施設への立ち寄り、接触などは行わない方がよいでしょう。滞在先の国内の感染の状況や、WHOが発行している「海外旅行者への助言」もご参照下さい。


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Q22:鳥インフルエンザの集団発生農場において、鶏の殺処分に従事する者の感染制御はどのようにすべきですか?

A:以下に述べます。

 ニワトリの殺処分と死体処理、検査などにあたっては、感染が疑われるニワトリの体液、排泄物等による汚染に注意し、作業に従事する者はそれらの体液等に直接触れたり、吸い込んだりしないように、ガウンを着用し、手袋をつけ、ゴーグル、医療用マスク等で防御すべきです。また作業終了後は、石鹸、流水による手洗いが必須です。作業前に練習と確認を十分に行い、確実に実施できるようにして下さい。
 作業に従事した者およびその家族については、健康状態に留意し、発熱などインフルエンザ様症状の出現などの体調に異常があった場合は、その旨を医療機関に伝えた上で直ちに診療を受けて下さい。
 ウイルス遺伝子の再集合を起こさないように、通常のインフルエンザの予防接種を受けることの推奨や、抗インフルエンザウイルス薬(リン酸オセルタミビル)のスタンバイ治療に関しては、WHOにより、高病原性鳥インフルエンザに感染した可能性のある動物の殺処理に携わる人員の防御および健康状態の監視に関する暫定的勧告が、また、抗インフルエンザウイルス薬の予防投与についてはCDCにより、鳥インフルエンザ集団発生の制御と根絶に従事する人を防御するための暫定ガイドライン(2004年2月17日)が発表されていますので、そちらをご参照下さい。
なお2004年3月31日現在、日本では抗インフルエンザウイルス薬の予防投与は承認されていません。
参照:
WHO
高病原性鳥インフルエンザに感染した可能性のある動物の殺処理に携わる人員の防御に対するWHOの暫定的勧告 (原文)
感染した可能性のある動物の殺処理に携わる人員の健康状態の監視に関するWHOの暫定的勧告 (原文) 
CDC
Interim Guidance for Protection of Persons Involved in U.S. Avian Influenza Outbreak Disease Control and Eradication Activities
When to Use Antiviral Drugs for the Flu
Antiviral Agents for Influenza: Background Information for Clinicians


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Q23:国内は安全ですか?

A:日本では2004年に3事例の発生が報告されています。

 日本では2004年に3事例の発生が報告されていますが、いずれも鳥類での発生が確認されたもので、ヒトへの感染は報告されていません。
1) 2004年1月
  山口県の採卵養鶏場(35,000羽飼養)でH5N1亜型の高病原性鳥インフルエンザが発生し、農林水産省の「防疫マニュアル」に沿って、殺処分、埋却処理、農場の消毒等が行われました。このような感染拡大防止の対策を実施後、半径30kmの移動制限区域内のすべての養鶏場を対象に実施した清浄性確認検査(ウイルス検査と抗体検査)で、すべてが清浄(ウイルスに感染しているとする科学的根拠なし)と確認され、2004年2月19日に移動制限措置が解除されました。また、消費者の不安解消のため、鶏卵の自主回収が政府から要請され、養鶏従事者および関係者の健康状態の確認や、感染防御の徹底の指導などが行われました。

2)2004年2月14日
  大分県で飼育されていたチャボ13羽が突然死亡し、家畜保健衛生所での検査でH5N1亜型の高病原性のトリ・インフルエンザウイルスが検出され、防疫マニュアルに沿って措置がとられました。なお、2004年3月11日に移動制限措置が解除されました。飼育していたチャボとアヒルに接触した方の健康状態の確認や、感染防御のための指導が行われました。

3)2004年2月下旬
  京都府の農場で鶏の大量死があり、H5N1亜型の高病原性鳥インフルエンザであることが判明しました。この農場から生きたまま兵庫県に出荷された鶏からも、H5N1亜型の高病原性のトリ・インフルエンザウイルスが検出され、両農場などに対して防疫マニュアルに沿って措置が取られました。3月30日現在で、発端の農場の半径30km以内で死亡あるいは衰弱していたカラス8羽からも、H5N1亜型のトリ・インフルエンザウイルスが分離されました。遺伝子解析から、前述の京都の発端となった農場からのウイルスにほぼ一致することが分かりました。現在縮小はしましたが移動制限区域を設置し、経過観察中です。


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Q24:鳥インフルエンザが発生している国からの鶏肉などの輸入禁止措置がとられるのはなぜですか?
また、加熱処理製品の輸入についてはどのような対応がとられていますか?

A:鶏肉や臓器なども高病原性鳥インフルエンザウイルスが付着している可能性があるからです。

 生きた鳥のみならず、鶏肉や臓器なども高病原性鳥インフルエンザウイルスが付着している可能性があるからです。OIE(国際獣疫事務局)もそのように対応することを推奨しています。なお、加熱処理品については、完全にウイルスが不活化されていれば安全ですので、安全性を確保して輸入を認めるため、ウイルス不活化の確認のためのルールが必要とされています。