■■冬季の急性嘔吐・下痢症(感染性胃腸炎) ■■

公開日2002.12.01 更新日 2007.12.10 更新履歴  HOMEへ(メニューを表示)  メニューを隠す
感染性胃腸炎(グラフ)2004.11.10リンク確認 
毎年11月から3月にかけて流行します。家庭内感染に注意しましょう。
類似記事:ノロウイルスによる嘔吐下痢症

参考資料
日経メディカル2000年12月号  小児の下痢 :浅香山病院小児科 中 篤子
日経ヘルス1998年7月号     下痢の水分補給:武蔵野赤十字病院消化器内科部長 泉 並木
日経メディカル1997年12月号  下痢と食事指導
今日の小児科治療指針(CD-ROM)vol12.2002年版 急性乳児下痢症

●診療メモ●
 毎年11月頃から急増する下痢の大部分はウイルス性の胃腸炎によるものです。特に小児はロタウイルスによるものが半数を占めています。それ以外の下痢の原因として、腸管アデノウイルス、細菌ではカンピロバクターやサルモネラ、病原性大腸菌などがあります。また、抗生物質など薬剤性下痢も少なくありません。一般的にウイルス性下痢症の便は、水様でサラサラとした感じを示し、ロタウイルスの場合は灰白色です。
 一方、細菌性胃腸炎はウイルス性胃腸炎とは異なり、しばしば血便があります。細菌の特定には便の培養が必要となりますが、カンピロバクターなら水様性または粘血便、サルモネラなら黒緑色(海苔のつくだ煮様)の粘血便といった具合に、ある程度予測がつくことがあります。なお、最近の食事内容や海外渡航歴(コレラに注意)、ペットの飼育の有無などが、下痢の原因の手がかりになることがあります。

●治療法メモ●

たいていは「下痢止め」、「抗菌薬」は使わない。
  基本的に感染性の下痢は自然治癒の傾向が強いので、細菌性でも大抵の場合は抗菌薬を必要としません。ただし、ロタウイルスでは二次性乳糖吸収不全を併発することが多いので、長引く場合には、乳糖のないミルクの利用も考慮します。この点は小児科医に相談ください。

下痢は無理矢理止めない方がよい
 
下痢は病原菌を早く排出するために必要な生体防御反応です。むやみに止めるとよくありません。
下痢どめは病原体を体内にとどめてしまい、かえって症状を長引かせたり、悪化させてしまうことがあります。特に小児の場合は使わないほうが賢明でしょう。

水分を積極的に摂り、食べながら治す
 下痢の患者に対しては、脱水症対策と食事療法が治療の基本となります。下痢は体の維持に不可欠な水分やナトリウム、カルシウム、カリウムなどの電解質をも体外へ出してしまいます。電解質は心臓や神経、筋肉の正常な働きを保つのに重要です。ですから、下痢の時は失われた水だけでなく電解質も補うことが大切です。
 スポーツドリンクは水分と電解質の両方を含み、下痢の治療に打ってつけの飲料です。ただし、糖分がやや多いことや吸収を早めるので1/2に薄めた方がよいでしょう。下痢の回数が多ければ1日絶食しても、水分さえ取っていれば大丈夫ですが、この場合は小児科医と相談しながら経過をみましょう。
 小児で下痢が強い場合は、離乳食をとっているならばやめさせて、水分だけでまず様子をみます。半日くらいたつと少し元気になる子供が多いので、このあたりから直ちに食物を与えるようにします。最初はおかゆと梅干しなど、デンプン質を中心に水分や塩分を補給するのが最も無難な方法です。ただし、吐き気や嘔吐が持続的にある場合は絶食とし、輸液を行います。
 
飲み物の選び方
・水やお茶より、スポーツ飲料がよい。
・スポーツドリンクは常温に近いものを、少量ずつ頻回に飲む。
・スポーツドリンクはそのままより1/2に薄めた方が吸収がよくなり、嘔吐も起こりにくい。
   特に、乳幼児の場合はスポーツ飲料や100%天然果汁は糖分が多すぎるので、1/2ほどにさ湯で薄める。
・母乳やミルク類、みかんなど柑橘(かんきつ)系のジュースは嘔吐を誘発しやすいので避ける。
・嘔吐が強いときには、代わりに湯冷ましや、野菜スープ、みそ汁の上澄みなどを飲ませる。

食べ物の選び方
・基本的には、まず炭水化物、次に蛋白質、脂肪の少ない食物という順に与え、通常食に戻していく。
・固形物は食べられないという場合は、野菜スープやみそ汁から始めるとよい。
・果実については柑橘系は避け、リンゴやバナナ、白桃などを勧めます。
・リンゴはすりおろしたり、電子レンジで加熱すると食べやすくなります。

休養
・お腹を冷やさない、便が正常に戻るまで子供にはなるべく家でゆっくりさせる。

感染予防
・下痢の患者がいたら、家族に感染は広がる。“よく手を洗う”ことが重要。
・トイレでは、お尻を拭いた方の手で取っ手を握らない。
・水道の蛇口はもう一方の手でひねり、お尻を拭いた手を流水で20秒以上洗ってから、石鹸で両手を洗う。
・風呂は最後に入る。
・衣類を別に洗濯する。
・母親が下痢で汚れた洗濯物を触ったり、調理器具を介して離乳食にうつる例も多い。
・生の2枚貝(カキ),生煮えの牡蠣フライは食べない。
 下痢便とともに下水道に流れ出たウイルスが2枚貝の体内に貯まる。
「生食用カキ」と「加熱用カキ」の違い
生食用カキは、水揚げ後、紫外線による殺菌をされたもの。保健所が定める指定海域で取れた牡蠣である。比較的沖合いで養殖されている。菌やプランクトンの少ないが、栄養分は少ないので、小粒である。
加熱用カキは、水揚げされたままの牡蠣で、指定海域以外で取れたもの。川の河口などで菌やプランクトンが多い場所で養殖されている。生育が良く栄養も多く大粒である。加熱用のカキは絶対生で食べないこと。加熱して食べる分には「加熱用」の方が美味しい。