【新聞・雑誌記事】 公開日2016.05.06 更新日2017.01.08 HOMEへ メニューを隠す 前へ 次へ 掲載記事一覧へ
今から30年以上前、私が医師に成り立ての頃は、まだ心筋梗塞は少なく、リウマチ性弁膜症が心臓病の代表でした。その当時は今後は食事の欧米化で、血液中のコレステロールが増加して、日本人も欧米並みに心筋梗塞が激増するだろうとの予測が一般的でした。実際、心筋梗塞は急増し、現在の心臓病といえば心筋梗塞(冠動脈疾患)が最も重要な心臓病となりました。しかし、血液中のコレステロール値は欧米に追いついて、さらに超したようですが、心筋梗塞の発症率は未だに欧米の1/3〜1/4程度です。血液中のコレステロール上昇は心筋梗塞の危険因子の最大需要因子ではないからです。ハワイの日系人の心筋梗塞発症率は欧米人と同じと聞いていますので、人種差のせいではないようです。個人的には魚食が一番の原因ではないかと思っていますが、解明されていません。 |
テレビで『肺炎球菌ワクチン』の宣伝があります。多くの患者さんが政府の広報と勘違いしていますが、企業の広告です。肺炎球菌ワクチンには多くの問題がありますが、広告なので、販売促進に都合の悪い情報は伝えていません。このワクチンは安全性は高いのですが、肺炎予防効果は低いと言われています。65歳未満での予防効果はない、このワクチン単独での肺炎予防効果はない、インフルエンザワクチンとの併用で、肺炎減少効果に上乗せ効果があった、肺炎の1/3を占める肺炎球菌にしか効果がない、肺炎球菌感染を100%予防する効果はない、血清抗体価からみた効果の予想では、5年以上であきらかな低下が見られる。あくまでも私的感覚的な予想ですが、『細菌性肺炎の1/3に有効で、有効菌の感染を30%減少できるとしたら、計算上は細菌性肺炎の約10%が予防できる』となります。 |
心房細動の診療に関して、最近気になるある傾向があります。未熟な医師による心房細動の治療が増えているようです。心房細動の治療は、心疾患の治療と脳塞栓の予防の2本立てです。心疾患の治療のためには、心臓疾患の正確な診断が必要です。これには循環器を専門とする医師の診察、検査(とくに心エコー検査)が必要です。未熟な聴診と心電図、胸部レントゲンだけでは不十分です。ところが、十分な心疾患の評価を省略して、かなりいい加減な処方でお茶を濁すような治療が開業医では普通にあります。 |
最も一般的な説明では、脂質異常症では、(●1)高LDLコレステロール血症、(●2)高中性脂肪血症、(●3)低HDLコレステロール血症が問題とされています。それでは1)2)3)の重要度の順番はどうなるのでしょうかご存じでしょうか。欧米や日本での信頼できる資料では、いずれも(●2)>(●1)>>(●3)となっています。しかし、実際の患者さんや一般医師の認識は違うようです。学術的には重要度の順位は明らかにもかかわらず、HDLコレステロールが目立たなくなってきたのです。これは製薬会社にとって『高LDLコレステロール血症を強調したほうが、薬の売り上げが伸びる』ため、HDLコレステロールを意図的に目立たなくしたためだと私は考えています。学会も協力しています。 |
高血圧治療中の患者さんの足の浮腫は、かなりの頻度で見られます。しかし、その90%くらいは気付かずに放置されています。一番の原因は、「医師が診察時に足の浮腫を注意して見ていない」ためです。これは国内外でずいぶん違うようです。海外の副作用頻度をみるとアムロジピン服用での浮腫発症率は10%くらいですが、国内の報告書では1%くらいです。人種差がこれほどあるとは思えません。海外での服薬量が多いせいとも思えません。なぜなら、私が診ているアムロジピン5mg /日以上服用患者の足の浮腫発生率は10%を超えるからです(女性が多い)。 |