前立腺癌とPSAの簡単な解説

 公開日 2002.01.25  更新履歴   HOMEへ(メニューを表示)  メニューを隠す
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参考資料

前立腺癌集団検診資料(大阪府守口市) 松田公志:関西医科大学教授・泌尿器科
前立腺癌Q&A  宇佐見道之:大阪府成人病センター, 武田薬品小冊子
前立腺癌 内藤誠二:九州大学教授・泌尿器科, 今日の診療CD-ROM vol .12 ,2002
PSAと前立腺癌 福井 巌:癌研究会付属病院泌尿器科, 日本医事新報 1999.7.3
PSA値測定の頻度( E.David Crawford 2002年米国泌尿器学会演題 )

 前立腺癌とは

 前立腺癌は加齢とともに増えます.隠れた癌を入れると,80歳代では70%ぐらいに前立腺癌があるとされています.しかし,進行が非常に遅く,癌の発生から臨床的に問題になるまで40年もかかるため,実際に問題なるのはその約10%ぐらいです.臨床的に日本での前立腺癌の発症率は,10万人当たり20人ぐらいと思われます.発生年齢のほとんどが50歳以上です.高脂肪食,特に動物性脂肪で前立腺癌は増えると言われており,日本では食事の欧米化のため増加しています.前立腺癌は他の癌に比べて薬が効きやすい特徴があります.

 症状は

 早期の前立腺癌では無症状です.進行すると前立腺肥大症と同じように頻尿や排尿困難,血尿,あるいは転移による骨の痛みとかがみられます.

 前立腺癌の早期発見のためには

 少し前まで,前立腺癌の早期発見には直腸診が最も重要といわれていました.最近では「早期発見には血液中のPSA測定がよい」ということになってきました. 最終的な診断方法は,針または経尿道的に前立腺の組織の一部をとる「生検」検査です.PSA値は前立腺肥大や前立腺炎でもある程度高くなり,年齢とともに上昇します.

前立腺癌ではPSA値の上昇が特に大きいため,前立腺癌探し(スクリーニング)にPSAが利用されています.PSA値が4.1を越えると前立腺癌の可能性が高くなります.数値が高いほど前立腺癌の可能性は高くなります.前立腺癌は血液検査で早期発見が可能な数少ない癌なのです.
  PSA値が4.1〜10.0の範囲は灰色領域(グレーゾーン)と呼ばれ,前立腺癌がない人の方が多いのも事実です.PSA値が1.0未満は5年ごと,1.0〜2.0は2年ごとのスクリーニングでよいとの報告があります.PSA検査が勧められる年齢は50歳以上です.50歳過ぎたら,一度PSA値を測定してはいかがでしょうか.


PSA値と前立腺癌の発見率(松田公志,関西医科大学泌尿器科)一部改変
PSA値(ng/ml) 前立腺癌の可能性   前立腺癌の発見率
4.0以下 可能性は低い    
4.1〜10.0 灰色領域 4.1〜10.0 20%
10.1以上 疑わしい 10.0〜20.0 30%
  20.0以上 75%
PSA値は,40歳代では2.5ng/ml以下,70歳代では6.5ng/ml以下というように年齢で修正した値を用いるべきだという意見もあります.

 

PSA値と前立腺癌発見率
 
(関西医科大学泌尿器科1995年5月〜1999年11月)