独り言】 
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このページは、医療・医学分野に限らず私が思ったことを記したサイトです。
あくまでもその時の個人的な意見です。また、後に考えが変化することもあります。


日本は科学的根拠のない安全対策で、形だけの安心を買い、無駄な巨費を投じている。  
  日本国民はリスクに敏感だが、その対策は的を得ていないものが多い。島国で特殊な言語を使うため、他の先進国がどのようにしているかの情報が広がりにくいためかもしれない。一国のみ違う行動を取ることが
多い。医療に関しても、科学的根拠のない感情的な判断や対策が多すぎる。国民は、マスコミの評価を鵜呑みにする。効果が確認できなくても、周囲と同じ行動だと安心する。そのため、マスコミで取り上げたことに過剰に反応し、マスコミで取り上げなくなると忘れる。マスコミだけでなく、政治や役人にも同様な傾向がある。これでは本当のリスク管理になっていない。
  民主主義の良さは間違った政策でも、時間を掛けて自動的に修正されるということになっている。正解がわからない政治、社会ルールでは妥当かもしれない。しかし、科学、医学に関しては、「多数決が正解に近い」わけではない。少数派が正解であることは少なくない。
  みんなが同じことをやっているときでも「ほんとうにそうなのだろうか」、「海外ではどうしているのか」、「間違っていると仮定すると、どこが間違っている可能性があるのか、なぜ間違いをみんなが信じているのか」など考えるべきである。大事なヒントが隠れていることがしばしばある。私はしばしばこれを繰り返している。

 【新型インフルエンザワクチン】
  ほとんどの輸入ワクチンが国の不良在庫となる見通しであるという。厚労省は「最悪の事態に備えた」というが、見通しの甘さや税金の無駄使いを減らすという意識の低さが目立つ。新型インフルエンザの発生からまもなく弱毒株であるとの発表が米国からあった。その後も強毒化の報告はなかった。新型インフルエンザによる累積死亡数が日々ニュースで報告されたが、大流行があった9〜10月でも死亡数は1日0-2人程度で、2009年の累積総死亡数は100人を少し越えた程度である。日本人の志望者数は約2700人/日、喫煙による超過死亡率は約300人/日、交通事故は約15人/日程度である。
  新型インフルエンザワクチンの4,300万回分が国内産だというから、接種費用は国内産分3,600円(1回分)×43,000万=1,548億円、輸入ワクチン購入契約分は約9,900万回分(約1,126億円)をという。大変、大雑把ではあるが、実際の死亡数が200人であったとしよう。また、ワクチンで重症化と死亡者の合計数が1/3になるとしよう。この仮定では、400人が死亡または重症化から助かった推定できるかもしれない(かなりワクチンの効果を高く見積もったつもりです)。そうすると、一人を助けるのにかかった費用は、1,548億円/400人=3.87億円/人。無駄になった輸入ワクチンを加えて計算すると、(1,548億円+1,126億円)/400人=6.68億円/人となる。一人の生命や重症化を助けるのに4-7億円の経費がかかっている。あまりにも効率の悪い対策である。
 重症化予防だけでなく、軽症〜中等症例の軽症化効果も期待できるので、この計算はワクチンの効果を過小評価していると言われる方もいるかも知れない。しかし、医学的にはインフルエンザワクチン接種はインフルエンザ発症予防効果はあまりなく、重症化予防効果が最大の目的とされている。また、新型インフルエンザは、発熱時でも全身症状は軽症で、翌日には解熱する例が極めて多い印象である。
  人の命はお金に換えれないという方もいるかも知れないが、そういった方は社会資本を効率よく使う、平たく言えば税金を効率よく使うという観念が欠如している。一人1,000万円もあれば、失業し、自殺する人を社会復帰させることができるだろう。本来、トリインフルエンザのように致死率が高い強毒株を想定した対策だったために、尚更無駄な経費がかかってしまったのだろう。次回からは、機敏な対応の変更が望まれる。

 【狂牛病全頭検査】
 日本人は、狂牛病にならないようにするために、「全頭検査をやればBSE牛が全部見つかる」と思い込んいる節がある.全頭検査なら安心という「偽の安心」を買わされている.その値段は、これまでに100億円になっているという.もし、検査を一切しなかったとして、今後10年間に一体何人が狂牛病になるだろうか、恐らく、0-2人くらいではないかと思われる。何人が狂牛病になり、どれだけの経費を使えば、何人が救えるかを推定して、効果対費用を考慮して、対策にあたるべきである。現在の検査はより危険性の高い場合に限って行うべきであろう。

 【喫煙による超過死亡数】
 日本での 喫煙による超過死亡数は、推定12万人/年である。巨費を投じないときの狂牛病発症が仮に10人未満/10年としよう。新型インフルエンザによる死亡予想を多めに200人/年。交通事故死亡数は6,000人/年弱、喫煙による死亡数(超過死亡)120,000人/年としよう。その比は、狂牛病死亡数(1):新型インフルエンザ死亡数(200):交通事故死亡数(6,000):喫煙による超過死亡数(120,000)となり、だれがみても喫煙対策が最も重要であることは明白である。しかも、喫煙を減らす対策には税収が減る以外に、それほど巨額の資金を必要としない。諸外国のように、テレビや新聞で、喫煙の害を正しく伝えるだけでよい。日本が最も取り組むべき、健康対策はダントツで喫煙対策だとWHO(世界保健機関)も言っている。喫煙で病気になるのは高齢になってから、と思っている人がいるが、心筋梗塞の発症率は40歳代や50歳代のほうが70歳代よりも高い。 
  疾病リスク回避対策が本当に必要なのは、今回の新型(豚)インフルエンザでもなく、狂牛病でもなく、アスベストでもなく、禁煙運動であることは明白である。禁煙対策は桁違いの効果が期待できる。なお、一時騒がれた鳥インフルエンザは感染後の致死率が極めて高く、もし、これが人から人にも感染する新型インフルエンザになった場合は、事情が全く異なるので、勘違いのないように願います。

参考 

2010.02.5記 2010.04.20修正