【レクチャールームNO.2】-後編-

  公開日2004.12.02 更新日2004.12.08  TOPへ 左メニューを隠す 前編へ
このサイトは参考となった講演会の内容を紹介しています。

 糖尿病の運動療法
 - レジスタンス・トレーニング療法に注目して(前編と後編)- 
2004年8月糖尿病「山口DM草の根会」での講演
「山口DM草の根会」は綜合病院山口赤十字病院の村上嘉一先生の指導のもとに同病院の糖尿病チームが地域の糖尿病診療の底上げを目的に、院外の「糖尿病に興味のある医師およびコ・メディカルスタッフ」を対象に行っている勉強会です。同病院は現在「糖尿病診療において病院と診療所の併診」に取り組んでいます。

講師:綜合病院山口赤十字病院理学療法士 林理恵


引き続きレジスタンス・トレーニング療法について、お話しします。

【19-1】下半身(左右を替えて行う) - レベル1 -
片膝をたて、もう一方の足を持ち上げる。このとき、膝が曲がらないようにする。
床から30度程度挙げたら、3秒間とめて、ゆっくりおろす。
【19-2】下半身 - レベル2 -
【19-3】下半身 - レベル3 -
脚を肩幅まで開いて、後ろの椅子に腰をおろすつもりで膝を曲げる。実際には腰を下ろさずに、また膝を伸ばす。

座った状態から、脚を肩幅くらいに位置して、ゆっくり立ち上げる。まっすぐ立ち上がったら、ゆっくり座る。

【20】肩の痛み

肩の痛みの場合はその程度によって運動強度を選びます。
  深刻な痛みの方はレベル1、肩こり程度の方はレベル2の運動を選びます。強い痛みのある方は、まず医師に相談することをお勧めします。痛みがある場合、まず振り子運動からはじめ、インナーマッスルの筋力を強化するとよいでしょう。

【20】肩の痛み - レベル1 -

【振り子運動】

 痛みの強い人は、振り子運動にとどめておきましょう。これは腕を振るのではなくて、体を揺らすことを利用して筋肉をリラックスさせた状態で自然に肩関節を動かすことが大切です。

注:深刻な痛みの方は、まず医師に相談することをお勧めします。

【20】肩の痛み - レベル2 -
痛みがなければ肩の腱板(インナーマッスル)と呼ばれる筋肉の強化をします。インナーマッスルには棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋があり、体と肩をしっかりと固定する大切な役割があります。
腋を締めて、前腕と開く。この時、手首が返って手のひらが天井に向かわないように注意する。 腋を締めて、前腕と開く。  
【21】肩こり等 - レベル2 -
【21】肩こり等- 筋肉疲労と血行不良を吹き飛ばせ!
伸ばされて気持ちがよいと感じる程度引き延ばす。5秒間とめてゆっくり戻す。

伸ばされて気持ちがよいと感じる程度引き延ばす。5秒間とめてゆっくり戻す。
肩こり程度の軽い痛みには首肩周りの循環を良くすることがポイントです。
図のようなストレッチを含めた体操後レジスタンス・トレーニングをおこなって下さい。
【21】肩こり等 
【21】肩こり等 

【21】肩こり等 
【21】肩こり等 
肘を伸ばしたまま、90度まで腕をあげる。5秒間止めて、ゆっくりおろす。

軽く肘を曲げて、腋を開いておく。その状態から、90度まであげる。5秒間止めて、ゆっくりおろす。
【21】肩こり等 
天井に向けて、腕をあげる。肘はしっかり伸ばす。反対も同様に行う。

 

【22】腰痛 
【22】腰痛 

腰痛がある方は、おなかと背中(体幹)を鍛えてください。
ただし、急性の腰痛症に対しては運動するよりも安静にしておいたほうがよいので、痛みがなくなるまで運動は控えましょう。
おなかと背中の筋肉の鍛え方は糖尿病の運動を参照にして下さい。

【22】腰痛 - 腹斜筋 -
【22】腰痛 - 腹斜筋 -

最近ではこれらの体幹筋の中でも深部の筋肉が注目されています。それが内腹斜筋と腹横筋、多裂筋です。この筋肉は椎骨間をそれぞれ結んでおり、脊柱をしっかりと固定しています。
運動では腰のひねりを取り入れます。
 一方の肩と反対側の肩甲骨が浮くように斜めに起きあがる。

 

【23】膝痛 - 大腿筋 -
【23】膝痛 - 大腿筋 -

膝の痛みのある方は、大腿四頭筋に注目してください。
この筋肉が弱くなると膝関節に負担がかかり、痛みが出やすくなります。これも痛みの程度で3段階に分けました。
  痛くて痛くてどうしようもない方はレベル1から始めてください。3段階の選び方としては、運動しても膝に痛みがおこらないことを基準に選びます。

【23】  大腿筋 - レベル1 -

(左)
膝下の枕を5秒間押さえつけて、力を抜く。そのとき足先は天井を向くようにする。反対も同様に行う。

(右)
片方の膝を立てて、もう一方の脚をあげる。この時あげた方の膝は、伸ばしておく。5秒間止めて、ゆっくりおろす。反対も同様に行う。

(下)
うつぶせで、須磨先をついて、膝を床から浮かす。5秒間止めて、力も抜く。反対も同様に行う。

 

【23】  大腿筋 - レベル2 -
【23】  大腿筋 - レベル3 -
座って、太股がベッドから離れないようにしながら、膝を伸ばす。足くびは天井の方に向くようにする。

両脚を肩幅まで開いて、後ろの椅子に腰を下ろすつもりで、膝を曲げる。実際には腰を下ろさないで、再び膝を伸ばして真っ直ぐに立つ。

 

【24】 運動強度の決め方

強度の決め方です。
有酸素運動では最大酸素摂取量と脈拍数や自覚的運動強度を使います。レジスタンス・トレーニングでも脈拍数や自覚的運動強度を参考にして構いません。

 

【24】運動強度の決め方
代表的なものとして、「自覚症状による評価方法」と「心拍数による評価方法 」があります。

【24】 運動強度の決め方 - 回数RMと%RM -

ただ重りが必要な場合にはRM法がよいでしょう。RM法とはある重量に対してそれを何回繰り返すことができるかその回数を示すものです。1RMとは適切なフォームで1回挙げることのできる重さで、その重さがその筋肉に対しての100%RMです。10RMとは、10回繰り返せるが11回は繰り返せない重さとなります。その場合の負荷は最大筋力の75%RMに相当します。

【24】 運動強度と回数の関係・決め方 - 回数RMと%RM -

糖尿病の方の場合40〜60%RMがよいでしょう。合併症がない場合、若い方でもっと筋力をつけたい場合は70〜90%RMまで行なっても構いませんが、この場合は脂質代謝の改善効果がやや劣ります。体力に自信のない方は、筋持久力をつけるという意味で25〜50%くらいでも構いません。40%以下になると糖代謝の期待は低下しますが、筋持久力がつきますので、有酸素運動での耐久性の向上などが期待できます。


【24】 繰り返し回数の決め方

運動の繰り返し回数の決め方です。

トレーニングの繰り返し回数設定

この%RMにより運動強度を決めたら、次は繰り返し回数を設定します。繰り返し回数は%RMとの関係で決めます。軽いおもりでは多めの回数、重いおもりに対しては少めの回数がバランスのよい回数設定と言えるでしょう。
  糖尿病の方は10〜12回3セット、筋力をつけたい人は3〜8回1〜2セット、筋持久力をつけたい人は14〜18回3セットをお勧めします。個人個人の体力の違いに合わせて、実際にこの重さ・回数を増減して下さい。レジスタンス・トレーニング後の気分不良や吐気、翌々日までの体動困難な痛みなどが出る場合は強度設定を再確認したほうがよいでしょう。


1週間の運動の頻度の決め方です。

トレーニングの頻度

最後に頻度ですが、レジスタンス・トレーニングでは筋肉に小さな損傷が出ます。それが回復するのに約2から4日かかるといわれています。そこから計算するとレジスタンス・トレーニングは週に2〜3回で調度よいと思われます。ただ、おなかや背中の大きな筋肉は損傷を受けにくいので腹筋や背筋は毎日行なってもよいという報告もあります。

 

トレーニングの効果を上げる3原則

更に効果をあげたい時に覚えておいて頂きたい原則が3つあります。1つ目は過負荷の原則、日常生活以上の力をトレーニングでださないと効果はあがりません。%RMを実践すれば問題ありません。
  2つ目は漸増負荷の原則です。有酸素運動でも同じですが、運動すればするほど、体力も筋力もあがります。個人の状態にあわせて強度・負荷を高めていくことが大切です。
  最後に可逆性の原則です。やめると効果が消失して、元に戻ります。
 継続は力なり。まずは続けることが大切です。