01)ウエストナイル熱(脳炎)とはどんな病気? 20003.2.17記 2003.9.7追記
02)ウエストナイルウイルスについて?
03)症状は?
04)診断は? 2003.2.17記
05)治療と予防は? 2003.9.7追記
06)世界の流行状況は?
07)ウエストナイルウイルスの日本上陸について?
参考資料
・ウエストナイル熱・脳炎に関するQ&A(厚生労働省):(平成14年10月23日)
http://www.mhlw.go.jp/topics/2002/10/tp1023-1b.html
・米国疾病対策予防センター(CDC):英文
http://www.cdc.gov/ncidod/dvbid/westnile/q&a.htm
・感染症発生動向調査週報(IDWR)の感染症の話
http://idsc.nih.go.jp/kansen/index.html
・ウエストナイル熱:Medical tribune 2003.2.13号記事
ウエストナイル熱(脳炎)はウエストナイルウイルスによっておこる疾病です。ウエストナイル熱はインフルエンザ様で比較的軽症の病気です。ほとんどの患者さんは無症状(不顕感染)か、数日から一週間以内で回復する軽症の急性熱性疾患(ウエストナイル熱)で終わります。しかし、一部は重篤な脳炎になります。これがウエストナイル脳炎です。
とくに、重症者は高齢者に多い。
ウエストナイル脳炎には対症療法しかなく、よい治療はありません。ウエストナイルウイルスは蚊と鳥の間で感染を繰り返し、イエカ、ヤブカなどのおもにシマダラ蚊を媒介して人間に感染します。通常ヒトからヒトへの感染はありません。しかし、輸血、臓器移植、母乳を介しての感染を疑わせる報告があります。従来ウエストナイル熱はアフリカ、ヨーロッパ、西アジアでの患者発生報告がありましたが、アメリカ大陸での患者発生はありませんでした。
1999年米国ニューヨーク市周辺での流行が報告されました。しかも従来と異なり、感染鳥の発病や死亡率、ウマとヒトにおける流行、重篤な脳炎患者の発生が顕著で注目されています。2002年9月時点で、米国における検査陽性報告数は954名、死亡数は43名です。本ウイルスが日本国内に侵入すると、蚊や鳥を介して広範囲に拡がる可能性があります。ウエストナイル脳炎の死亡率は5〜14%です。
【追加情報】2003.2.13号 Medical tribuneより
米国におけるウエストナイル熱の確認患者数 2003.9.7日修正 | ||
年度 | 確認感染者数 | 死亡数 |
1999年 | 62人 | 7人 |
2000年 | 21人 | 2人 |
2001年 | 66人 | 9人 |
2002年 | 4156人 | 284人 |
2002年8月20日まで | 715人 | 14人 |
20003.2.17記
Medical ASAHI 2003.9月号より 長谷川榮一(もと京都府立医科大学教授)著資料より 2003.9.7追記
1937年アフリカのウガンダWest Nile地方の熱発患者から分離されたことから「ウエストナイルウイルス」の名称がついています。黄熱やデング熱、日本脳炎ウイルスとおなじフラビウイルス科フラビウイルスに属します。 ウイルスはアフリカ、北米など広い地域に分布し、鳥と蚊の間で感染環が維持され、蚊を媒介としてヒト、ウマなどへの感染が確認されています。 発熱2日前から発熱4日後までは、血中にウイルスが認められることがありますが、直接の感染源となることはないと考えられています。
2003.2.17記(参考資料 2003.2.13号 Medical tribune)
ウイルスに感染してから症状がでるまでの期間(潜伏期間)は3〜15日(普通2〜6日)です。 感染した人の約80%は無症状に終わります(不顕性感染)。残りの20%がウエストナイル熱になると考えられており、39度以上の突然の発熱で発症し、3〜6日間続きます。
初期症状としては頭痛、筋肉痛、全身痛、倦怠感、食欲不振があります。発熱は2峰性を示すことがあります。発熱の中期から後期にかけて約半数に発疹が胸部、背中、上肢に認められ、リンパ節腫が生じます。ほとんどは通常1週間以内で回復し、その後倦怠感が残ることも多いのですが、その後の経過は良好です。
しかし、感染者の約1%(おもに高齢者)では、重篤な脳炎になり、激しい頭痛、方向感覚の欠如、麻痺、意識障害、痙攣など生じます。この場合は3〜15%が死亡すると言われています。まれな合併症として、心筋炎や膵炎も報告されています。他のフラビウイルスに比較して、極めて多彩な病原性と臨床症状を生じるのが特徴です。
ウエストナイル脳炎は発症の季節、海外旅行の地域の流行の有無、臨床症状から疑いをもちます。 臨床症状からだけでは、他のウイルス性脳炎との鑑別がなかなかできません。
血清学的な診断では、特異的な免疫抗体(特異的IgM、IgG)を検出しても、日本脳炎と極めて類似しているため、日本脳炎と鑑別するこはできない。 ウエストナイル脳炎の確定診断のためには、発症早期に血清や髄液を培養しウイルスを分離するか、ウイルス遺伝子を確認します。 しかし、この方法ができる施設は限られています。
現実的には、疑わしい場合は日本脳炎ウイルス抗原を用いたHI試験を行い、日本脳炎血清型群に属するウイルスであることを確認した後に、特異的検査法が可能な国立感染症研究所、地方衛生研究所、長崎大学熱帯医学研究所などに相談することが勧められています。
参考資料 Medical tribune 2003.2.13号
2003.2.17記
現在有効な治療方法はありません。対処療法のみです。ワクチンは未だ開発段階です。 対策としては、ウイルス汚染地域での蚊との接触を避けるくらいしかありません。
具体的には
・露出している皮膚への蚊除け剤の使用
・戸外へでるときは、できる限り長袖、長ズボンを身につける
・網戸の使用など
また蚊は、バケツ、古タイヤなど、ちょっとした水溜りにも卵を産むので、蚊の発生を減らすために、これらの水を空にするようにしましょう。 ウイルスの日本国内上陸はまだ報告されていませんが、ニューヨークよりも日本の方が、ウエストナイルウイルスが分布する気候に近く、媒介するイエカやヤブカは日本にも生息しています。
日本上陸も時間の問題とされています。 本ウイルスが日本に侵入すると、蚊や鳥を介して広範囲に拡がる可能性があり、今後警戒を必要とします。
2003.01.14記
■期待される西ナイル・ワクチン
米国の国立衛生研究所(NIH) と陸軍が共同開発中で、すでにサルに対する予防効果が証明されています。2003年末にも人に対する臨床試験が実施される予定です。Medical
ASAHI 2003.9月号より 長谷川榮一(もと京都府立医科大学教授)著
2003.09.07追記
アフリカ、ヨーロッパ、中東、中央アジア、西アジアなど広い地域に分布しています。
最近のウエストナイル脳炎の流行は、アルジェリア(1994)、ルーマニア(1996〜1997)、チェコスロバキア(1997)、コンゴ共和国(1998)、ロシア(1999)、アメリカ(1999〜2001)、イスラエル(2000)などで発生しています。
米国の調査によれば、北米のウエストナイルウイルスは東海岸から中部諸州に拡大し、カリブ海諸国にも拡がっています。 ウマでの流行はモロッコ(1996)、イタリア(1998)、アメリカ(1999
〜2001)、フランス(2000)などで発生しています。
ウエストナイルウイルスは媒介蚊の航空機内への侵入等により、日本国内にも持ち込まれる可能性があります。 また、海外渡航先で感染した方が、帰国後に発病する可能性もあります。 政府は航空機の客室内や空・海港地区で採取した蚊のウイルス保有調査を実施しています。 未だウイルスを保有する蚊は発見されていません。 なお、動物に関しては、野生のカラスを対象に、ウイルス保有調査を実施しています。 人での流行に先立って、数千羽の鳥、とくにカラスやスズメの大量死が突然発生していたことが判明しています。 人間での流行の前兆としてのカラスの調査や監視が有用だと言われています。
参考 Medical tribune 2003.2.13号より
2003.2.17記