参考資料
フィリピンからの帰国後に狂犬病を発症した患者(輸入感染症例)について
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/11/h1116-2.html
・海外へ渡航される方へ(海外渡航者のための感染症情報)
http://www.forth.go.jp/
・狂犬病に関するQ&A(厚生労働省):(平成18年11月22日)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/04.html
狂犬病は狂犬病ウイルスの感染によって引き起こされる病気である。感染した動物に咬まれ、唾液中に排出されるウイルスが傷口より体内に侵入することが主な感染経路である。ワクチン接種による感染予防と感染早期のワクチン以外に有効な治療方法がなく、発症すると100%死亡する。
世界保健機構(WHO)の推計によると、世界では年間におおよそ5万5千人が狂犬病で亡くなっている。また、このうち3万人以上はアジア地域での死亡者と言われている。
狂犬病の特徴
(1)発症すると有効な治療法がなく、100%死亡。ただし、人では感染後(咬まれた後)にワクチンを連続して接種することにより発症を防ぐことができる。
(2)大半では潜伏期が1〜3ヶ月と長い。
(3)狂犬病はすべての哺乳類に感染する。人も例外ではない。地域によって感染源動物が異なる。
(4)発病する前に狂犬病ウイルス感染の有無を知る手段がない。
狂犬病は日本など一部の国々を除いて、全世界に分布する。つまり、海外ではほとんどの国で感染する可能性ある。平成18年11月16日現在、厚生労働省が狂犬病の発生していない地域として指定しているのは以下の地域である。
日本、台湾、オーストラリア、グアム、ニュージーランド、フィジー、ハワイ諸島、アイスランド、アイルランド、英国、スウェーデン、ノルウェー
日本国内では、人は昭和29年(1954年)を最後に発生がない。また、動物では昭和32年(1957年)を最後に発生がない。現在、日本は狂犬病の発生のない国である。なお、輸入感染事例としては、狂犬病流行国で犬に咬まれ帰国後に発症した事例が、昭和45年(1970年)に1例、平成18年(2006年)に2例ある。
2006年11月にフィリピンで犬にかまれ、帰国後狂犬病を発症して亡くなる事例があった。狂犬病の輸入感染事例は1970年ぶりである。
主な感染源動物は以下のとおり。中でも、犬が人に対する主な感染動物である。
(1)アジア及びアフリカ イヌ、ネコ
(2)西欧諸国及び北米 キツネ、アライグマ、スカンク、コウモリ、ネコ、イヌ
(3)中南米 イヌ、コウモリ、ネコ、マングース
通常、狂犬病が人から人に感染することはない。臓器移植による感染が認められているが、輸血により感染したという報告はない。
狂犬病は感染してから発症するまでの期間(潜伏期)は、一般に1ヶ月から3ヶ月である。長い場合には感染してから1年から2年後に発症した事例もある。また、発症前に感染の有無を診断することができない。
狂犬病に感染した犬の症状には、「狂騒型」と「麻痺型」と言われるタイプがある。
狂騒型では、極度に興奮し攻撃的な行動を示す。
麻痺型では後半身から前半身に麻痺が拡がり、食物や水が飲み込めなくなる。
狂犬病に感染した人の症状は、
強い不安感、一時的な錯乱、水を見ると首(頚部)の筋肉がけいれんする(恐水症)、冷たい風でも同様にけいれんする(恐風症)、高熱、麻痺、運動失調、全身けいれんが起こる。その後、呼吸障害等の症状を示し、死亡する。
日本国内の場合、犬に咬まれても狂犬病の感染の心配はない。
狂犬病に感染した疑いがある場合には、できるだけ早期に、連続した狂犬病のワクチン接種を開始する必要がある。
(1)海外、特に東南アジア等の流行国で狂犬病が疑われるイヌ、ネコおよび野生動物にかまれた場合
まず傷口を石鹸と水でよく洗い流し、医療機関を受診して発症予防措置が必要である。
(2)現地医療機関において発症予防措置が講じられていない場合
海外で犬に咬まれて、医療機関を受診せずに帰国した場合は、最寄りの保健所または医療機関に相談して下さい。 受傷原因動物が狂犬病に感染していないことが確認されない場合は、可能な限り早期に暴露後ワクチン接種プログラムを開始する。
(1)むやみに動物に近づかない。
動物に近寄ったり、医療機関のないような地域に行く場合には、事前に狂犬病の予防接種を受けることも検討する。
(2)渡航先で動物に咬まれた場合は、現地医療機関を受診し、傷の手当てと狂犬病ワクチンの接種を受ける。帰国時に検疫所(相談室)に相談する。
犬などに咬まれて感染した可能性がある場合に、発症を予防するため接種するワクチン(暴露後ワクチン)がある。、出来るだけ早く接種を開始する必要がある。
(3)なお、暴露前のワクチン接種を行っている場合であっても、犬などに咬まれて感染した可能性がある場合には暴露後のワクチン接種が必要である。
(1)暴露前の予防接種
狂犬病の流行地域に渡航する場合に、動物との接触が避けられない、又は、近くに医療機関がないような地域に滞在するような方は、渡航前に予防接種を受けることを勧める。
十分な免疫力を得るためには、4週間間隔で2回の皮下注射と、6〜12ヶ月後の追加注射が必要となる。
(2)暴露後のワクチン接種
●ワクチンの種類;組織培養不活化狂犬病ワクチン
●ワクチン接種プログラム
初回接種日を0として0、3、7、14、30、90日の6回接種
暴露後ワクチンは、初回のワクチン接種日を0日として、3日、7日、14日、30日及び90日の計6回皮下に接種する。
●現地医療機関において発症予防措置が講じられている場合
現地において受けた発症予防措置の内容を十分聴取の上、暴露後ワクチン接種プログラムが完了していない場合には、国内ワクチンを用い引き続き措置すること。
(3)そのた注意事項
暴露前のワクチン接種を行っている場合でも、犬などに咬まれて感染した可能性がある場合には暴露後のワクチン接種が必要。
事前予防接種の履歴が明らかな場合には、暴露後免疫は、接種初日(0日)と3日後の2回接種をすることになる。
発症を確実に防ぐために、ワクチンプログラムを必ず完了させることが必要。
国内の医療機関でも、狂犬病のワクチンを接種してもらうことが出来るので、医療機関に相談してください。なお、接種可能な医療機関については、検疫所のホームページ(http://www.forth.go.jp)でご紹介している。
(1)病室内での患者の診察については、標準予防策(手袋、マスク等の装着)で十分である。
(2)患者の入院については、その症状等も考慮し、個室への入院が望ましい。
(3)面会の制限は特に必要としないが、患者の唾液等の体液にはウイルスが排出されることから、直接の濃厚接触を避ける。
(4)患者が発症する1週間前以降に患者の体液等に濃厚接触し、狂犬病ワクチン未接種の者については、暴露後ワクチン接種プログラムについて、十分説明の上実施する必要がある。
(5)ウイルスはアルコールなど通常の消毒により活性がなくなる。
(6)致死性の経過をとることから、患者やその家族等への十分な精神的ケアが必要である。
「狂犬病予防法」(昭和25年法律第247号)に基づき、狂犬病の侵入予防のために、犬、猫、アライグマ、キツネ及びスカンクの輸出入検疫がある。また、万が一国内に狂犬病が侵入した場合に備えて飼い犬の登録と、飼い犬に対する狂犬病の予防注射が義務づけられている。
日本国内には狂犬病の発生はないが、近隣諸国では狂犬病がまん延しており、日本への本病の侵入リスクは皆無ではない。犬を飼っている方は、社会に対する責務として、犬の登録と年1回の狂犬病の予防注射を必ず行ってください。