マイコプラズマ呼吸器感染症
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マイコプラズマ感染症(おもに呼吸器感染)の解説です。
、 マイコプラズマ肺炎の流行状況 2004.11.10リンク確認
マイコプラズマは最も小さな細菌に分類されますが、ウイルスと細菌の中間に位置する小さな病原体です。以前は4〜5年周期性に流行することが多かったが、最近は周期性がなくなってきている。初期は風邪と区別がつかない。通常、咳きなど気管支炎症状を示すことが多いが、比較的若い人に多い肺炎の起炎菌として有名です。70歳以下の肺炎の起炎菌の第一位をマイコプラズマが占めています。
初期症状は普通の風邪と変わりないことが多く、咽頭痛、全身倦怠、筋肉痛、発熱が最も多い。その後に、自制できないほどの頑固な咳が続くことが多いのが特徴です。咳は寝る前にひどくなりますが、この疾患の特徴ということではありません。また多彩な症状を合併することが多いのも特徴です。
また、家族や職場内で伝染しやすいので、次々に発症することが少なくありません。
●診断メモ●
【1】小児・若年成人が中心で、年齢は5〜10歳と15〜30歳が多く、乳幼児や高齢者は比較的少ないと言われています。毎年9月から12月にかけて増加する傾向があります。感染から発症までの潜伏期間は2〜3週間で、種々の程度の熱発で発症します。肺炎になると発熱は85〜90%以上に発現します。熱は一日のうちでも上がったり下がったりしますが、丸一日発熱がなくならなければ熱がなくなったとはいえません。また解熱剤は病気を早く治すのには全く役立ちません。咳は夜間・早朝に強く、2〜3週間も続きます、頑固な空咳が特徴です。咽頭痛・関節痛を生じることも多い。
【2】職場内・家族内感染の傾向が強いので、流行期に同内で頑固で長引く咳をみた場合には本症を疑います。
●検査●
【1】白血球数:9割強が1万以下、半数弱が7,500以下です。一般に白血球数が多くないことは重要であり、明確な白血球増多をみた場合には細菌感染との重複感染を考慮すべきです。また白血球数はCRPの割にはあまり上昇しないのも特徴です。
【2】赤沈亢進とCRP陽性:その程度は炎症の程度による。GOT/GPTが上昇する。GPTが70IU/L以上はマイコプラズマによる肺炎の可能性が高い。
【3】胸部レントゲン像:典型的マイコプラズマ肺炎ではすりガラス様陰影を呈します。
さらに、胸水貯留や肺門リンパ腺腫大をみることもあります。
●合併症・続発症の診断●
【1】本症の合併症・続発症は多彩です。
呼吸器系では、細菌やウイルスとの重複感染、胸膜炎、末梢気道障害(びまん性肺粒状影を呈し、呼吸困難が強い)などです。髄膜炎・脳炎・手足のしびれ麻痺(神経系)、リンパ節腫大・溶血性貧血(血液系)、肝障害(消化器系)、発疹(皮膚)、心筋炎・心外膜炎(循環器系)、中耳炎(その他)などがみられます。
●治療法メモ●
【1】本症の疑いあれば、マクロライド(抗菌薬の病巣部移行を考慮すればアジスロマイシンやクラリスロマイシンなど)、確診に至ってない重症例にはマクロライドとニューキノロンの併用もあります。
【2】よく使うセファム系やペニシリン系の抗生剤は無効ですので注意が必要です。
【3】経過は一般に良好ですが、診断が難しく治療が遅れることがよくあります。
●予防●
患者の鼻やのどからの分泌物に触れたり、飛沫を吸い込だりすることによる感染がありますので、手洗い(石鹸で菌の感染力がなくなる)やうがいも有効です。
また、患者との濃厚な接触を避けることも大事です。
発病前1週間〜発病後10日程度が、感染力がある期間といわれています。
登校登園については急性期が過ぎて症状が改善し、全身状態の良いものは登校可能です。
症状がおさまっても病原体が排出され続けることがあるため、治療薬は自己判断でやめたりせず、医師の処方に従って服用することをおすすめします。
●経過と予後●
ほとんどは経過良好ですが、小児では神経系の合併症を起こすと重症化しやすいとのことです。
呼吸器以外に発疹、神経炎、心筋炎などの合併症が見られる場合があります。
小児は成人よりも合併症を起こしやすいので注意が必要です。
参考資料 今日の診療Vol.12 (C)2002 IGAKU-SHOINなど