■■診療所の基本理念と診療の実際■■

公開日2002.10.1 更新日2004.01.15  更新履歴  HOMEへ(メニューを表示)  メニューを隠す

 

1)診療における基本理念 

 診療技術提供と情報提供(患者教育)の2本柱が基本です. 
患者さんにとって理想的な外来診療を考えた結果,優れた『診断技術』と『治療技術』と並んで,
『役立つ十分な知識・情報』を『わかりやすく伝達する』ことを最重要項目の一つにしました.


犯罪防止のため低画質画像です。

2)実際,どんな診療を実行しているのか
●生活習慣病:高血圧,糖尿病,高脂血症,骨粗鬆症

  医師がすぐれた医学知識を持っていても,患者さんや家族の知識が不足すれば「よい医療」を実現することはできません.特に生活習慣病の場合には患者さんの日々の生活の中でのライフスタイル改善の実行こそが中心であり,医師は指導するコーチにすぎないと考えています.
  そのため,当院ではいろんな情報提供をパソコンや独自のプリントを使って説明し,理解していただくように日々資料づくりを行っています.現在まで使用中の患者さん用プリントは300種類以上あります.それ以外にも,CD-ROM雑誌(今日の診療)などを随時印刷して,患者さんの診療に使っています.そして,「渡した資料の内容」を自作電子疑似カルテに記録しています.

  ○心臓病 ○高脂血症

 専門の循環器,特に心臓病に関しては日本よりも欧米の方が科学的検証が進んでいます.
  本院では,「実証に基づく医療」を基本に,日本のガイドラインだけでなく,海外の情報を吟味しながら,治療に取り入れるようにしています.日本での治療薬の使い方と海外の評価ではかなり異なる場合があります.薬に頼りすぎる日本医師の変な習慣に気づくことも少なくありません.

例えば,

1)少量のアスピリンを脳梗塞予防に処方する一方で,水分摂取と禁煙の効果との差異を全く説明されていない.アスピリン内服よりは,禁煙の効果の方がずっと優れているのに...

2)心臓の冠動脈拡張術やバイパス手術後に,術前と変わらぬめいっぱいの投薬を行う医師の多さ,

3)長期的な効果が認められていないニトロ製剤を虚血性心疾患に漫然と長期使用している医師の多さ,

4)性別,年齢などの冠動脈リスクの評価を行わずに,総コレステロール値だけで高脂血症治療薬を処方する医師の多さ

5)急な血圧上昇に対して、ニフェジピン(アダラート:商品名)の舌下を勧める医師がまだいる

など.見直すべき点は数多くあります.
 

 <心エコー/ドップラー検査>

  心不全潜在的に心臓機能障害の多い高齢者の患者さんでは,心エコー検査による心機能や病態生理の評価ができると適切な治療を実行することが格段に容易になります.心エコー検査は心臓の各部位の大きさ,心筋の動き,心臓弁膜の開閉や心臓内血流,弁膜の漏れ,心臓内の血圧の推測などたくさんの精度の高い情報を与えてくれます.冠動脈の狭窄・閉塞を除外して,ほとんど心エコー検査で分かると言ってもよいぐらいです.

 ただし,弱点もあります.

・胸部のエコー検査は肺が邪魔をして,画像が見えにくい場合が少なくありません.
・ 胸部大動脈疾患の診断は困難です.
・ 大きさが2mm以下の小病変は画質が良好な部分でないとほとんど診断出来ません.
・ 心臓のエコー検査は検者の技量によりかなりばらつきがでやすい検査です.

 循環器専門医の中でも技術に大きな差があります.器械の性能よりも検査する医師の技術力の方が格段に重要な検査です.
この点は聴診器に似ています.心エコー検査は超音波を使うので,「第二の聴診器」とも言われ,心臓の診断には欠かせない検査です.

  ○糖尿病

 糖尿病は継続的な管理が必要です.また,食事療法,運動療法の動機づけや実践,結果のフォローアップが大事です.当院での食事指導は午後の混雑しない時間帯を利用して院長自ら指導しています.必要なら栄養士の指導も受けてもらいます.医師と栄養士とでは食事療法の視点に違いがあります.栄養士任せにしないようにしています.


●高齢者の全身管理

 心臓病・高血圧・糖尿病などの患者さんを診療すると,どうしても高齢者の割合が増えます.また,高齢者ではいろいろな病気が複数重なるのが特徴です.これに対してはできるだけ勉強しています.

 皮膚科(乾皮症,白癬菌症など),泌尿器科(前立腺肥大,PSAによる前立腺癌検診),眼科(積極的に専門医と連携),歯科(歯槽膿漏の予防指導),整形外科(腰痛対策,家庭での筋肉トレーニング,骨粗鬆症対策,膝痛へのサプリメント使用),精神科(初期うつ病:簡易テスト施行)などの病気の指導を幅広い文献や各々の専門医に教えを受けながら,患者さんにわかりやすい指導を行うようにしています.

診療中に説明した後,患者さん用プリントで家庭で復習していただきます.寝たきりの人も増えており,往診(在宅診療)も行っています. 「高齢者はいろいろな病気になりやすい」ので,疾病予防にも注意しています.具体的には海外の現状や研究を参考にして,インフルエンザワクチン,肺炎球菌ワクチン接種などを積極的に勧めています.「薬の副作用」,「その人が特に注意すべき事」などを出来るだけ具体的に説明し,自作プリントを渡しています.「骨粗鬆症対策(女性)」,「腰痛対策」,「便秘対策」,「乾皮症対策」,「不眠症対策」などは多くの高齢者に説明しています.