公開日 2004.04.24  更新日 2004.04.24  更新履歴  HOMEへ(メニューを表示)  メニューを隠す

循環器内科とは

循環器科とは

 循環器科はおもに心臓病や血管の病気の専門科です。代表的な専門医制度として、日本循環器学会認定の循環器専門医があります。高血圧、糖尿病、喫煙習慣、高脂血症などの循環器疾患のリスクの大きい人は、定期的に循環器科の診察と指導を受けると無難です。

おもな対象疾患は
 おもな対象疾患は、「虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞など)」、「心臓弁膜症」、「不整脈」、「拡張型心筋症や肥大型心筋症」、「感染性心内膜炎」、「心筋炎」、「心膜炎」、「いろいろな基礎疾患による心不全」などの心臓疾患や、「高血圧症」、「大動脈瘤」、「静脈血栓症」、「心臓由来の動脈塞栓(脳塞栓症)」、「肺梗塞」などです。これらを診断し、他の疾患と鑑別し、治療や再発予防を行います。
 動脈硬化の合併症としておこる病気が多いので、動脈硬化を促進する「糖尿病」、「高脂血症」や心臓内にできた血の塊(血栓)が流れて、脳動脈がつまり起こる「脳梗塞(脳塞栓)」なども関連疾患として、同時に診察・治療する機会が多い。 
循環器疾患と生活習慣病の関係

 循環器疾患は、喫煙、食事、運動、飲酒、肥満などの生活習慣との関連が深いので、薬物による治療だけでなく、生活習慣改善の指導がとても大事です。糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満、高尿酸血症などは、循環器系疾患を合併することが多いので、循環器疾患、とくに狭心症・心筋梗塞に注意ください。

「循環器内科」と「循環器外科」はどう使い分けるのか

  循環器科は治療手段から、「循環器内科」と「循環器外科」に分かれます。現状は、循環器の疾患が疑われたら、まず循環器内科で総合診断を行います。 診断の結果、薬物療法中心の治療やカテーテルを使った侵襲の小さな手術までなら循環器内科で治療します。開胸手術や動脈瘤・静脈瘤の手術のように侵襲の大きな手術は循環器外科にで行うことが一般的です。

循環器内科の最近の進歩

 【手術に関して】
 20年前なら循環器内科で診断し、外科で手術したのですが、病変までカテーテルという管を血管内に挿入して行う手術が発達し、内科での手術が増えています。

 【薬物療法に関して】
 
薬の治療効果をヒトで調べる調査を「治験(臨床治療試験?)」と呼んでいます。以前は、少数の医療機関に限定されて、対象数が少ない、有効性の判定に医師や患者の主観が入りやすいなど、問題の多い調査でした。近年は、多くの医療機関が協力して、多数のヒトを対象とし、できるだけ主観が入らないような「大規模研究」でないと、「薬物が有効であるという証拠(エビデンス)」として認めらなくなりました。そのため、従来はよいと考えられていた治療の評価が変わることも少なくありません。これは循環器科だけの傾向ではありません。

例)いままでわかったいろいろなエビデンス
  思いつくままに列挙すると

●不整脈の薬を心筋梗塞患者が服用すると、不整脈の総数を減るが、死亡に至るような重症不整脈を増加させるため、突然死はむしろ2倍に増加する。
● ニトロ製剤の長期有効性は認められない。
●心臓の動きを弱くする薬のβ遮断薬が、心臓の動きの悪い拡張型心筋症の治療にたいへんよいことが少なくない。
●強心剤(心臓筋肉の動きを強くする薬)で、心不全の長期生存率を改善する薬は今のところない。

●高脂血症は狭心症や心筋梗塞の重要な危険因子である。HDLコレステロール(善玉)は強い抗動脈硬化作用がある。
●アスピリンやパナルジンは、心房細動患者の脳梗塞予防効果は弱く、リスクの高いヒトには不十分である。
●少量のアスピリンと約40倍の価格のチクロピジン(商品名パナルジン)の心筋梗塞予防効果は同じ。
●ACE阻害剤とARB剤は、降圧効果、臓器保護作用(心臓、腎臓、血管)ともほぼ同等の効果がある(価格は後者が約2倍)。

●カルシウム拮抗薬は心不全を悪化させやすい。
●抗アルドステロン剤(アルダクトンAなど)は心不全の予後を改善する。
●心房細動の心拍数のコントロールは、従来ジギタリスが主役だった。
  今日では、β遮断薬や一部のカルシウム拮抗薬が高く評価されるようになった。
●心房細動の治療で、正常の心拍(洞調律)にする治療と心拍数のみ正常に近づける治療では、経過に差がない。

●虚血性心疾患の予後改善にニコランジル(シグマート)の有効性が証明された。(IONAスタディー)
●生命予後だけをみると、古くからの降圧剤である降圧利尿剤と最近の降圧剤(カルシウム拮抗剤、ACE阻害剤)の効果に差がない(価格は大きく異なる)。
 以下多数・・・・・・・・・・・・

循環器科の看板、専門医の肩書き
循環器科に限らず、医師免許をもってさえいれば、「循環器科」を標榜することができます。つまり、看板だけでは循環器治療のレベルを証明できない。では、循環器専門医の肩書きはどうか。ある程度年輩の医師なら、循環器学会に入っていれば、経過処置として循環器専門医になれました。必ずしも難しい専門医の試験を受け、実技を磨いたわけではありません。しかし、若い医師は指定された研修病院で一定期間以上研修し、循環器疾患の試験を受けていますので、一定のレベルに達していると言えます。しかし、循環器科といっても最近は細分化していますので、すべての循環器疾患を熟知しているわけではありません。
患者さんにわかる私流の循環器科医の評価

これはあくまでも私流の評価です。以下の項目が5つ以上あったら、循環器疾患の診療レベルが高いとは言えません。
●標榜診療科目が多い医師
●胸部レントゲン写真をみて、心臓肥大があるから心臓が悪いといって、どんな心臓病かそれ以上の説明がない医師
●禁煙指導に熱心でない医師または自ら喫煙する医師
●食事療法とくに、減塩食の説明が具体的でない医師、運動療法の具体的説明がない医師
●高血圧患者に家庭血圧測定を勧めない医師
●総コレステロールが270mg/dlならすべての患者に高脂血症治療薬を使う医師
●無症状なのにニトロ製剤(貼り薬や内服薬)を使い続ける医師
●心房細動患者の脳梗塞予防に、アスピリン(バイアスピリン、バファリン81)や抗血小板薬(パナルジンなど)ばかりで、ワーファリンをほとんど使わない医師
●胸痛と安静時の心電図異常だけで、狭心症のと診断し、心カテ検査ができるような基幹病院に紹介しない医師
●多くの患者に何年間も同じ内容の処方をする医師
●高血圧患者の足のむくみに注意しない医師
●心不全や腎機能障害患者に鎮痛剤の長期服用よくないと指導しない医師